ウィニングパットは“バント” 藤田寛之が「選手人生の下り坂」でシニア日本一

藤田寛之が初めてナショナルオープンのタイトルを手にした(提供:日本ゴルフ協会)

◇国内シニアメジャー◇日本シニアオープンゴルフ選手権 最終日(17日)◇能登CC日本海・はまなすコース(石川)◇6993yd(パー72)◇晴れ(観衆1253人)

「勝ちたいと思っていた日本タイトルを勝てて、初優勝の新人のコメントみたいですけど、これから込み上げてくるのかな、と思う」――。シニア3勝目、そして初の国内シニアメジャーのタイトルをつかんだ藤田寛之は喜びをかみ締めた。

首位の宮本勝昌と1打差で迎えた最終日は、「優勝のタイトルというのも正直難しいかなあ、という内容だった」と苦しい18ホールだった。前半6番(パー5)と9番(パー3)で伸ばして通算10アンダーの単独首位で折り返したが、15番でボギー。3組前を回る山添昌良に並ばれた。

歯を食いしばって戦うのは慣れている。「16から18番でバーディを獲れれば、プレーオフか優勝があるかなという気持ちでやっていた」と粘り強くプレーを続けた。9アンダーでホールアウトした山添、プラヤド・マークセン(タイ)とともに首位タイで迎えた最終18番(パー5)。ティショットを左に曲げたが、「相当キックが良くて、ラフ(の深さ)もそこそこ。前も空いているという状況だったんで、最終的には運も味方したのかな」。2打目をアイアンで低く打ち出してフェアウェイに戻し、3打目でピン奥1.2mにつけた。

「強さは“バント”くらいだった」という下りスライスのウィニングパットを沈め、控えめにガッツポーズ。「これまでの日本タイトルとしては(3連覇した)『日本シリーズ』があるけど、このナショナルオープンを最高峰の目標としてやってきて、毎年いろいろなアプローチをしてきても全然結果が出なかったので良かった」と声を弾ませる。

20代、30代、40代と年齢を重ねるごとに勝ち星を増やしてレギュラーツアー18勝を積み上げ、そしてシニアの舞台で日本最高峰のタイトルを手にした。それでもなお、「選手人生の下り坂の中で、応援サポートしてくれている皆さんにうれしいニュースをプロゴルファーとしても届けたい。最高のタイトルを手に入れて、恩返しが少しできたと思う」と謙虚に語る54歳の姿があった。

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン