アンナ・カリーナが語るゴダール 「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)」本編映像

2023年9月22日より劇場公開される、2022年にスイスで91年の生涯を閉じたジャン=リュック・ゴダール監督の謎に包まれた作家人生をひもとくドキュメンタリー映画「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)」から、1961年にゴダールと結婚し、ゴダール作品のミューズとして7本のゴダール監督作に主演したアンナ・カリーナが、ゴダールとの蜜月を振り返るシーンの、本編映像が公開された。

映像では、アンナ・カリーナが出演した「小さな兵隊」「メイド・イン・USA」までの7作から、ゴダールの長編第4作で、アンナ・カリーナが全面的にフィーチャーされた「女と男のいる舗道」が引用される。さらにゴダールとアンナ・カリーナの貴重なアーカイブ映像や写真に、女優ジョゼフィーヌ・マンシーニのナレーションを織り交ぜながら、時代を熱狂させた2人の姿を切り取っている。

波乱続きのふたりの蜜月は長くは続かず1964年に離婚に至るが、その後もゴダールの名声はますます高まり、1968年の五月革命をターニングポイントとする政治の季節、1970年代の内省と再生、1980年代に入ってからのキャリアの劇的な復活と、常に独自のスタイルを開拓・探究しながら最前線を駆け抜けた。本作では、諸作の撮影風景や自撮り動画などのパーソナルな記録、出演したテレビ番組など、貴重な映像や写真が収められている。

監督・脚本・編集を務めたのは、ドキュメンタリーの編集を数多く手掛けてきたフランスの映画監督シリル・ルティ。ゴダールがこの世を去る直前となる2022年のヴェネツィア国際映画祭の「ヴェネツィア・クラシック・ドキュメンタリー部門」で上映された。

一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■山田宏一(映画評論家)
あまりにも知られた事実とともにあまりにも知られざる事実がスリリングに混じり合い、交錯して歴史の証言のように紹介される。伝説化されたゴダール、神話化されたゴダールのかげに「人間」ゴダールの弧影が垣間見える。

■平野啓一郎(小説家)
ゴダールについて語ろうとする人々の言葉は、悉く矛盾に満ちた詩となる。まるで彼自身の映画のように。政治と芸術との間で揺れ綴れたゴダールの孤独な愛と創作。映画史に巨大な影響を与えた監督の、何か微妙なところに触れたような感触の映画。

■菊地成孔(音楽家 / 文筆家)
「ゴダール死後作品」の中で、取り敢えずのジャヴ的な軽みなれど、「アンヌ=マリー・ミエヴィル映りまくり」で目が醒める思い。

■諏訪敦彦(映画監督)
孤独な詩人と言われ、愛が裏切られることを繰り返し描いたゴダールが、まるで眠りにつく子どもがそっと親にせがむように「ドアを開けたままにしておきたい。そのために映画を作っているんだ」と呟く。少し眩暈がした。そう、まだ映画に希望はある。

■堀潤之(映画研究者)
心地よいスピード感でゴダールの人生と仕事のハイライトを提示する本作からは、伝説にまみれたゴダールの愛らしくも厄介な人物像がしっかりと浮かび上がってくる。いま最良のゴダール入門!

■清原惟(映画監督・映像作家)
この映画を観てゴダールのことを、もっと知りたくなった。
伝説としてではなく、ひとりの人間としての顔が見えてきたから。
どうしようもなく真面目にばかばかしく、それが愛おしくも怖くもなる。
そんなたくさんの顔の断片によって、ひとつの英雄像が作りだされるのではなく、人間としてのゴダールの複雑さが、作品制作の軌跡と共に映しだされていた。

■シトウレイ(ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト)
狂おしいほど映画を愛して、映画の神様に苦しいまでに愛された1人の男の人生。
ゴダール作品、改めて観直したいと思います。

■宇川直宏(DOMMUNE)
SNS以降、我々は編集を伴った世界で呼吸し、フィクションとリアリティを横断しながら生きている。ゴダール的な日常の到来である!!!!!!! InstagramもYouTubeもTikTokもFacebookもXもそこに露出されたエディットした日常は、全てがゴダールの影響下にあるといっても過言ではない。そう、ゴダールの作品は極めてライフログ的であり、いま世界を取り巻いている"現実と言われているもの"の正体なのだ!!!!!!!

■真舘晴子(The Wisely Brothers / ミュージシャン)
何がどのように届くかということ。書籍の文字で会話をしたり、壁に共通のことばを書き残したり。ことばが、物語が、歴史が、愛がどのように映画を伝って届くのか。自分だけのチューブに通す、ゴダールのそんなところに救われていたんだ。

■荘子it (Dos Monos)
〈異端(マージナル)〉かつ、〈余白(マージン)〉の存在であることに撤し、ありとあらゆるものを〈結合(マージ)〉し、すべてを可能にした彼の軌跡を振り返り、改めてその覚悟の〈本気(マジ)〉さに尊敬を抱く。

■ナカムラクニオ(6次元主宰/美術家)
ゴダールは答えではなく、永遠の疑問符なんだと思う。
最高傑作「気狂いピエロ」の中で最も印象的だった
「俺は地中海に浮かぶ大きな疑問符なんだ」という
台詞が頭の中をぐるぐる駆け巡るような映画だった。

■Franz K Endo(アニメーター/映像作家)
シンプルなまとまりであるにも関わらず、ゴダールについて気軽に言及できなくなるくらい高カロリーな内容でした。映画や文化に詳しくなくとも、視覚と聴覚には静かにずっと残り続ける大きな衝撃です。

【作品情報】
ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)
2023年9月22日(金)より新宿シネマカリテ、シネスイッチ銀座、ユーロスペース、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
配給:ミモザフィルムズ
©10.7 productions/ARTE France/INA – 2022

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