Perfumeが“見どころ”PR 神戸で開催中「大規模衣装展」 「時代背景が見える」「美術品になった気分」

Perfumeの歴代のステージ衣装が目の前で見られる展示会場=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館(撮影・長嶺麻子)

 女性3人組ユニット「Perfume(パフューム)」にとって、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開催中の特別展「Perfume COSTUME MUSEUM(コスチューム・ミュージアム)」(神戸新聞社など主催)は、初めての大規模衣装展だ。7日、内覧会に訪れたメンバーへのインタビュー「下」では、3人がそれぞれの言葉で展示の見どころを語ってくれた。「夢物語すぎて。すっごいよ」と感激。制作スタッフらとの数々の思い出も交え「時代背景が見える」という。

 -(今回の展覧会の基となった)衣装本「Perfume COSTUME BOOK 2005-2020」(文化出版局刊)の撮影時、こんな展示に結実するなんて、想像もしていなかったんですが、やっぱりここまで来れるっていうのは、皆さんと衣装の力。素直に感じていらっしゃること、本と展覧会との違い、それぞれの楽しみ方を教えてください。

 のっち「やっぱり、単純に感動しました。本だと数は見てもらうことはできるけど平面的だったものが、(衣装が)目の前にあるっていうのは、着ていた自分でも新鮮に感じましたね。(会場に入ると)最初に『Spinning World(スピニングワールド)』と『リニアモーターガール』の衣装がある。最新の曲とメジャーデビュー曲の衣装。ちょっと、なんだろう、あと10分いたら泣いてました。ああいう経験ができるっていうのは、展覧会ならではだなって、ありがたく思いました」

 かしゆか「実際に見させていただいて、関わってくれてる衣装さん、縫い子さん、スタイリストさんとかが、どれだけ衣装を愛してくれてたのかっていうのがすごく伝わりました。これだけ長い期間お世話になっていて、きっとそれぞれにたくさんのアーティストを抱えて、目まぐるしく生きてる中で、全てのデータを取ってくれていて、事務所は(再び)着るかも見るかも分からない衣装をあれだけ保管してくれていた」

 「これまで(展覧会の目玉となっているデザイン画、制作仕様書など)制作の図面とか見たことなかったですし、スタイリストさんと縫い子さんだけのやりとりの世界とかも、私たちには結果しか来なかった。どれだけ皆さんが真剣に愛情を持って、全て作ってくれてるのかっていう、時間と愛の大きさを感じました。衣装展が実際にできるってすごいことだと。昔着てたのは古いと思われて当然なのが、愛着を持って見られたり、Perfumeの中での時代背景が見える。音楽の背景も見えてくる。特別な空間で、貴重な体験だなと。すごいうれしかったです」

 あ~ちゃん「いや、本からこんなところまで来れるなんて誰が想像してたんだろうって、いうぐらい夢物語すぎて。しかもこんな県立の美術館さんでやらせていただけて。ね~、もうすっごいよ。それを(2006年からPerfumeの衣装に関わったスタイリストの内澤)研さんが想像できていただろうか。それを、あの当時縫ってくれてた縫い子さんたちは、聞いたらどんな反応してくれるんだろう。こうやって日の目を見ることができて『あ、こんなお仕事があるんだ』とか、『こんなプロフェッショナルがあるんだ』っていうことを、私たちのことを通して知ってもらえたらうれしいな」

 「最初の頃の紅白(歌合戦)さんのお衣装とか、もうほんと、渾身(こんしん)の衣装なんですよね。ビーズがめちゃくちゃ使われてて、一個一個それを縫っているビジュー(装身具)があったりだとか。そのレースも、ほんと、もう次(の紅白歌合戦に)出れるかわからないから、もう渾身(こんしん)のものを使おう。出るのが、作るのが最後かもしれないって、みんなが渾身、渾身で送り届けてくれてた。そういう執念みたいなものが見えました。なんか私たちだけじゃなかったんだな。一緒に戦ってた。毎度毎度が試験のような、この感覚は、私たちだけじゃなかったんだなって感じましたね」

 「あと、私がポニーテールになってからの髪留めがあったんですけど、コレクションみたいにみんなちっちゃいの並べてくれてて、あ、これも大事に思ってくれてたんだなって。私だけの楽しみ、私がテンションが上がるためだけに作ってくれてるところまでも、フィーチャーしていただけて、すごいうれしかったです」

 -衣装の変遷って、表現の変化であると同時に、皆さんのファッション観の変化でもあるのでしょうか。

 のっち「時代に沿っての変化はあると思いますが、どう変化しているのかは知らなかったです。(学芸員やキュレーターから)衣装の転換点を説明してもらって、『なるほど』っていうことを言われてみて、『そうなの?』って思いながら次の章のお部屋に行くんですけど、実際、たくさん衣装が並んでるの見てみたら、確かに違う。その時その時に、自分たちが変化していることには気づかなかったですけど、改めて気づかされた感じでしたね」

 あ~ちゃん「新曲があって、新しい演出があって、それに合わせて変わっていってるもんね」

 かしゆか「あと年齢もありますよね。10代から30代までの年齢の中で自分たちが見せていきたいPerfumeっていうのもあるし。昔は『あてがってもらったものを一生懸命着るぞ』みたいなところから、自分たちも本格的に参加して『よりよくダンスが見えるのはどういうことなんだろう』『振りがそろって見えるって、同じ袖が長い方がいいんだ』とか、『同じ側が同じように揺れることが振り付けがきれいに見えるんだ』とか、自分たちがどんどんその衣装を提案し、ダンスを外から見る時に『どうしたらPerfumeがもっとそろって見えるか』とか、全体の向上を考えていった結果、今の形に行き着いたっていうのはあります。長い方が色気があるみたいな。隠した美しさみたいなのを感じるようになってから、そんな衣装が日本の女性らしさみたいな部分を体現する部分でもあったのかなと思っています」

 あ~ちゃん「好みの変化もね。10代から30代だとそりゃ変わるじゃろね。(展覧会開催にあたって衣装の変化を)自分たち以外に分析してくださって(転換点は)『ここですよ』って言ってもらうの、ちょっとすごい。Perfumeのかたどっているものを分析して明らかにしてどんどん身ぐるみ剥がされていくようで(笑)ドキドキしてました。自分たちは気づかなかったところを、『こうですよね』と。自分たちのことを人から教わるのって、不思議な感覚で、面白いし、いろんな気持ちになりました」

 のっち「美術品になった気分。絵描きさんのなんとか期みたいなのに、美術館の方が勝手に分けて飾っているのを、衣装でやってもらえた感じ」

 あ~ちゃん「“ピカソ”みたいな大物の気持ち(笑)ありがたいです」

 -近年はワントーンカラーの衣装がすごくたくさん多くて、新曲の「Moon(ムーン)」も、ワントーンの中でのプリーツのドレスなんですけれど、皆さんのムードが反映されて、最近はワントーンになっているのでしょうか。

 かしゆか「確かにシングルは、色が大きく入って分かれてるものが多いですね」

 あ~ちゃん「(振り付け担当の)MIKIKO先生が赤じゃわ。とか言うことありますね。色から衣装が決まることも結構あるかも。確かに何色も使うみたいなのは、ライブくらいかな」

 かしゆか「スタイリストさんの今のモードと、スタイリストさんの強みの部分もあると思います。楽曲もらってから、MV(ミュージックビデオ)とかジャケットを撮影するイメージを話し合い、その監督さんが決まった時に、ストーリーがこうなって、衣装がこうだととかいう話からみんなで連想していることが多いので、カラーがいっぱい入ってるっていう想像が、あまり最近の世界観ではないのかもしれないですね」

 のっち「その分、『ライブで思いっきり色入ってる衣装着たい』とか、そういうこと言ったりもします」

 -スタイリストの三田真一さんも「Toshio Takeda(トシオ・タケダ)」さんも10年以上、Perfumeさんとともに歩んで、(ドレスメイカーの)櫻井利彦さんも(制作を手がける)内藤智恵さんも、ずっとご一緒されてますよね。そのスタイリストさん、制作の方たちと長い間ご一緒され、積み上げていく面白さと良さを教えてください。

 あ~ちゃん「もう、人生を共にしてるって感覚があります。だから、三田さんの良さをめっちゃ知ってるので、こういう衣装作ってほしいっていうのがあるし、私たちが想像もできないような衣装を想像するのが三田さんなんですよ。だから、今でもデザイン案を話してくれても言ってることがわかんなくて、絵もうまいのに絵を見ても構成がわからないんです。『これちょっと作ってみないとわかんないと思うんで~』って本人も言ってて。でも、グーっと完成に近づいて『すごい、こんなの見たことない』ってなるのがやっぱ三田さん」

 「Takedaさんは私たちの胸キュンポイントをめちゃくちゃ押さえてる。なんか女の子なんじゃないかなっていうくらいの色彩の感覚と、女の子が胸キュンするような、着てる人にしかわかんない『ぶちテンションが上がる』スイッチみたいなの、ほんとに持たれてるような感じがしていて。上がってくる衣装のTakedaイズムがほんとにツボなんですよね。曲線美がありますね」

 「それぞれのほんと、良さを知ってるから『その人たちのいいところを生かせる私でありたい』っていうのもありますね。『その人が作ってくれる衣装が一番似合う自分でありたい』っていうのがある」

 「お二人の人柄もめちゃくちゃ好きなので、約10年で、一緒にこうやってきた歴史の衣装もいくつもあるから、暗号のように会話も進みますし。『あん時のレーザービームをインスパイアして作ったツアーの方の衣装のオーガンジーの感じで、面でつくってよりは上から降らすかんじにつけられたらきれい!』みたいな。『Sweet Refrain(スイートリフレイン)のちょっとこう、マニッシュな感じがいいですね』とか。そういう風に暗号のように会話していくけど、ちゃんとそれが絵で出来上がってきた時にちゃんと反映されてて、それは私たちでしかできない会話っていうか、ラリーなのかなと思います」

 かしゆか「積み重ねてきたからこそ、Takedaさんも三田さんも描いてくれるデザインを想像できる部分がある。絵で想像できる部分もあるし、ずっと一緒にやってきてくれたからこそ、挑戦的な衣装にも信頼が置けます。やってみよう、着てみようと思えるのは、やっぱり積み重ねてきたから」

 「今、新しい方に一から作ってもらうのもきっと刺激的ではあると思うんですけど、結構3人とも慎重派の部分があるので、すごく時間をかけてじゃないと作れない部分が…。お二人だからこそ、この忙しい中で短いスパンの中で作って仕上げてきてくれるっていう信頼が置ける関係性ができてるのはすごく感じます」

 「あと、縫い子さんはもう3人の体を熟知してくれてるので、どこがこうなってたらこの人は踊りやすいとか、こうやってた方が動きやすいとか、それぞれの体の細部まで知ってくれてるので、踊る時にこういう動きをするよねとか、ここの体こう使うよねとか、3人のここの肩の骨の入り方はこうだよねとか、ラインを考えてくれて、作り上げてくれるのはすごく信頼が置けるし、ライブで任せられる大切な存在ですね」

 のっち「(音楽プロデューサーの)中田(ヤスタカ)さんもMIKIKO先生もそうですけど、Perfumeで携わってくれてる方は結構長い方が多くて。だからこそPerfumeっぽい、新しい、PerfumeがやってないPerfumeっぽいことが、できるのかなと思います」 (まとめ・小林伸哉)

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 展覧会を記念して、衣装本「Perfume COSTUME BOOK 2005-2020」(文化出版局刊)に、20~22年の衣装132着・48ページを加えて計893着を掲載した電子増補版「Perfume COSTUME BOOK 2005-2022 e‐book edition」が3960円で販売中だ。

 展覧会は11月26日まで。月曜休館(9月18日と10月9日は開館し、いずれも翌日休館)。一般1800円、大学生1400円、高校生以下無料など。同美術館TEL078.262.1011

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