20代まで「オタク」活動に夢中 平安女性がさいなまれた孤独感

菅原孝標女ら一家が、上総国(千葉県)から京都に出発する様子から始まる『更級日記』。JR五井駅近くには、旅姿を表した孝標女の像が立つ=千葉県市原市

 20代まで「オタク」活動に夢中でかなりの晩婚。理想の男性ではなかったが子宝に恵まれ、子どもが独立し、一息ついた51歳のときに夫が病死。孤独感にさいなまれる日々を送る。

 平安時代の日記文学『更級日記』は、菅原孝(たか)標女(すえのむすめ)の13歳から52歳までの約40年の回想記だ。手に取ったのは本紙くらし面で連載中の企画「変わるカラダと~更年期を乗り切る」で、孝標女が心身の不調で日常生活にも支障が出る「更年期障害」だった、との推察に関心を持ったから。

 確かに悲観的な思考に陥り、眠れないなどの症状が記される。『源氏物語』に夢中だった青春期を悔い、信心を怠った報いだと自分を責める様子も。過去を悔やんでほしくはなく、更年期障害であれば適切な療法を勧めたいと思った。

 閉経前後の45~55歳ごろを指す更年期は、女性ホルモンの分泌が減る影響で頭痛や発汗、いらいらなど、さまざまな症状が出る人が多い。平安時代の平均寿命は40歳程度で更年期を待たずに亡くなる女性も多かったが、倍に延びた現代は療法が開発され、特化した休暇制度を設けるなど更年期対策に力を入れる企業も増えた。

 とはいえ理解は進んだか。厚生労働省の2022年調査では更年期障害の可能性を感じる50代女性は38.3%に上るが、受診した人は11.6%にとどまる。我慢することはない。年齢に応じて変化する女性の体を、まずは自身で理解したい。

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