【今週のサンモニ】さすが「反日番組」!メディアの責任を日本国民にシレッと転嫁|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週も自分たちについては無視してジャニーズ性加害問題を報じております。

「マスメディアの沈黙」について完全沈黙

今週の『サンデーモーニング』は引き続きジャニーズ問題を報じましたが、性加害を成立させる必要条件であった「マスメディアの沈黙」という論点については完黙を貫き、それどころか、性加害の背景に日本社会の人権軽視があるとして、その責任を日本社会、つまりマスメディアの沈黙によって論点を隠蔽された日本国民に転嫁しました。

まさに厚顔無恥の極致です。

アナウンサー:ジャニー喜多川氏の性加害問題。ジャニーズ事務所は新たな経営陣で出直しを図る構えですが、所属タレントをめぐって広告の起用を見送る動きが広まっています。

金曜日、これまでPRに起用してきたジャニーズのタレントと新たな契約を結ばない方針を明らかにした愛知県の大村知事。さらに東京都も。またジャニーズ・タレントを起用している農林水産省も見合わせを表明。事務所側から「十分な説明が得られていない」としています。

今月7日の会見以降、波紋が広がり続けるジャニー喜多川氏の性加害問題。ジャニーズ事務所はあらためて水曜日、被害者の補償受付窓口の新設など対応策を打ち出しました。

ただそれでもジャニーズ離れは止まりません。街行くジャニーズファンの嘆き、その理由は経済界の厳しい対応についてです。

嵐の松本潤さんを起用している第一三共ヘルスケアは6月の時点で説明を申し入れたとして「十分な対応が取られるまで新たな契約を行わない」と発表。木村拓哉さんを起用する日本マクドナルドも今後の契約を更新しない方針を示し、「いかなる人権侵害も許容することはできない」としました。

また月曜日には起用を継続する方針を示していたモスフードサービスは、水曜日、契約を継続しないと判断を一変させたのです。

厳しい状況に置かれた所属タレントたち…(中略)ファンも気を揉む中、解決の道筋は見えていません。

この日の番組は、映像シークエンスで見事なまでに「テレビの沈黙」を沈黙すると同時に、「所属タレント」を目くらましにして姑息に【論点設定 agenda setting】しました。番組は「所属タレント」の広告起用を見送る動きを「経済界の厳しい対応」としましたが、実際に経済界が問題視しているのは「児童虐待を行ったジャニーズ事務所」との契約です。

所属タレント起用は「国際的非難の的」財界トップ・新浪氏がジャニーズ事務所批判 企業の広告見直し相次ぐ 城島茂さん起用の省庁は【news23】 | TBS NEWS DIG (1ページ)

荻上チキ氏の「ありがたいお言葉」

そしてこの映像シークエンスで触れられていないことがあります。

それはジャニーズ性加害を隠蔽した共犯関係にあるテレビ局が、ジャニーズ事務所との契約を変更するつもりがないことを宣言したことです。一般企業が人権の観点から児童虐待を行ったジャニーズ事務所との契約を次々と打ち切る中、テレビ局は「所属タレントに罪はない」を金科玉条にして、児童虐待を行ったジャニーズ事務所との契約を変わらず続けているのです。

関口宏氏:企業側も非常に悩んでいると思います。「十分な説明が欲しい」のもわかるし「問題解決するまでは」と言うもわかるけど、どこで解決できるのかは僕にはまったく想像できない。

この段階で番組は「テレビの沈黙」という論点を完全に葬ろうとしました。しかしながら、コメンテーターは、さすがに不味いと思ったのか、「テレビの沈黙」について触れてしまいます。

荻上チキ氏:まずジャニーズ事務所側の問題としては被害者の救済を主軸に置くことが必要だ。(中略)。また、今まで見えてこなかった構造的な性暴力も存在する。NHKは特番などを行ったが、民放各局で合同調査などをする仕方で、これまでにどういった問題などが起きたのかを掘り起こしていく。のみならず、芸能界全体、メディア業界全体も含めて、ジャニーズだけではなくて、様々な圧力や忖度や暴力が存在しないのか、業界の浄化のための具体的調査が必要だ。

このコメントは、テレビ局にとってアリバイ作りに資する「ありがたいお言葉」に他なりません。業界を監視するはずのBPOが業界を守るために全く機能していない中、当事者である民放各局が自分たちを合同調査したところで、不都合な事実の核心が得られないことは自明です。テレビ局に必要なのは自己点検ではなく、第三者委員会による客観的調査です。

見て見ぬフリを「した」のではなく「させられた」

渡部カンコロンゴ清花氏:企業がスタンスを明確にしていることは、苦渋の決断もありながらと思うが、それ自体は重要なことだと数週間見ていた。ただ、いざ、皆で「相手を叩いていいんだ」となった時に、皆で叩いて、むしろ今こうやって声明を発表しない方が叩かれてしまう立場になった時にそこにはじめて乗れるようになるわけだが、そこで終わるのではなくて、皆が忖度していた時、メディアも一緒にと思うが、忖度に乗っちゃった。これはダメだと判断ができなかった。

そこにどんな構造があったのか、社会全体で明らかにしていかないと同じことが繰り返されてしまう。被害者が記者会見で何回も述べていた「触れてはいけない空気」というものが何だったのか。大人の事情がそこにあるんだというのが、なんとなく放置してきたものが何だったのかということを、自分自身とか自らの所属組織だったりとか、そこについて批判したり検証したりするのは簡単ではないと思うが、今を生きる私たちはそこに向き合うことがそれぞれの立場から必要がある。

高橋純子氏:企業や自治体が人権侵害を許さないという強い態度を示していることについては評価できる。ただ、契約停止とかに一斉に雪崩を打つことに対しては一抹の懸念を持つ。海外メディアが報道するまで皆、見て見ぬフリをしてきた。その裏返しの姿だ。一部、取引を継続しながら人権侵害の解決を図るようにジャニーズ側に働きかけて行くという企業もあるのでそういう企業についても評価したい。やはり、二度とこういう問題を社会として起こさないためにはどうすればよいかということを、流されるのではなく、自分の頭でしっかり考えて行動していくと。これをメディアにいる私自身も問われていると受け止めている。

まず、数百人の未成年への性加害を許容した企業に対して、一般企業が広告契約を打ち切ることを「皆で叩く」「一斉に雪崩を打つ」と表現するのは極めて不当です。

海外メディアが報じるまで一般企業や国民は「見て見ぬフリをした」のではなく、日本のテレビや高橋純子氏が属する朝日新聞などが人権を軽視して事実を追求しなかったことで、ジャニー喜多川氏の「性加害疑惑」は都市伝説化し、結果として「見て見ぬフリをさせられた」のです。

そもそも、ジャニー喜多川氏の「性加害疑惑」に対して、犯罪に対する調査能力を持たない一般企業や国民が「性加害」を認定するのは事実上不可能です。証拠なく個人を断罪することは差別に他ならないからです。

莫大な広告料を支払って、不本意にも性加害に協力させられた一般企業や国民は、ジャニーズ事務所とテレビ局に騙された被害者であり、今回ジャニーズ事務所が性加害を認めた事実をもって、企業イメージを破壊する広告契約を打ち切るのは当然の行動です。

ちなみに、高橋純子氏が所属する朝日新聞社もジャニーズ事務所との新規契約を見合わせています。

「反日番組」の面目躍如!

また、ジャニーズ事務所に忖度していたのはテレビ局であって、一般企業でも国民でもありません。「触れてはいけない空気」の【説明責任 accountability】があるのは、一般企業が直接的に、そして国民が余儀なく間接的に支払わされてきた莫大なテレビ広告料を手にしてきたテレビ局にあります。番組コメンテーターが意味不明な歯に衣着せたコメントでテレビ局の責任を曖昧にするのは一般企業や国民にとっては本当にいい迷惑です。

さらに、取引を継続しながらジャニーズ事務所に働きかけて行くという企業を評価するのであれば、例えば、不要な修理で保険の等級が下がり、高い保険料を払わされた契約者にも取引を継続しながらビッグモーターに働きかけていくという精神も必要ということになります。高橋氏の主張はあまりにも現実離れしています。

結論として、二度とこういう問題を社会として起こさないためにどうすればよいかと言えば、ジャニーズ事務所と同じように、テレビ各社が第三者委員会を作って、隠蔽に加担してきた人物を断罪することです。公共の電波を独占して大衆操作するテレビ局の暴走を止めるには、このような【懲罰的抑止 deterrence by punishment】が必要不可欠と言えます。

関口宏氏:この話題は「風をよむ」のコーナーでもっても皆さんにご意見を伺おうと思っております。

《■「風をよむ」人権後進国?日本》

アナウンサー:いまだ波紋が拡がり続けるジャニー喜多川氏による性加害問題。経済界からも厳しい声が上がっていますが、その背景に見えるものとは。

火曜日、ジャニーズ事務所について述べたのは、経済三団体のトップ、経済同友会の新浪代表幹事。ジャニー喜多川氏による性加害問題は企業が次々と所属タレントの広告起用を見直すなど波紋が広がっています。こうした中、被害者であるジャニーズ性加害問題当事者の会は、日弁連に対し、人権救済を申し立てました。

今回この問題が大きく取り上げられるきっかけとなったのは、3月に放送されたイギリスBBCによるドキュメンタリー番組でした。その後、相次いで名乗り出た被害者に対し、7月には国連の人権理事会が聞き取り調査を行います。いわば外圧でようやく大きな注目を浴びた性加害問題。背景には人権が重視されているとは言い難い日本社会(字幕には「人権軽視の日本社会」)の現状があります。

例えば、LGBTなど性的少数者の権利については、2019年のOECDによる評価で、法整備の遅れから日本は加盟35カ国中34位。また同じく厳しい批判を浴びたのは在留外国人の収用問題です。さらに日本の遅れはこんな所にも。6月に開かれたG7の「女性活躍」担当大臣の会合では、各国トップが皆女性なのに、日本だけが男性。

いまや「人権後進国」とも呼べそうな日本の現状。なぜこうなったのでしょうか。どうしたら日本社会は変われるのでしょうか。世界から遅れを取る日本社会の人権意識。その大きな変化が今、求められています。

まさに、反日番組と呼ばれる『サンデーモーニング』の面目躍如といえるほど、日本をコテンパンに罵っています(笑)。

日本国民を犯罪者扱い

さて、ジャニーズ性加害問題で人権を軽視したのは、性加害を隠蔽したジャニーズ事務所とテレビ局であって、日本国民を主体とする日本社会ではありません。

朝から晩までワイドショーを観たりtwitterを返信したりしている意識高い系のヒマ人は別として、一般国民にはそれぞれの仕事があり、それぞれの生活があり、それぞれの固有の問題があるので、ジャニーズの人権蹂躙を四六時中気にかけている時間などありません。

一方、公共の電波を独占するテレビ局は、国民が直接的(公共放送局)あるいは間接的(民間放送局)に支払う経済的対価と引き換えに、国民の【代理人 agent】として国民に客観的な情報を提供する義務があります。

具体的には、公共放送局は国民から受信料を徴収し、民間放送局は国民がテレビを観る/観ないにかかわらず商品に余儀なく課金されている莫大な広告収入を国民から得ています。

そんなテレビ局が、自分たちがジャニーズ性加害を隠蔽した重大な人権蹂躙を棚に上げて、ジャニーズ性加害を国民の人権意識の低さのせいにするなど理不尽この上ないことです!

番組は、性的少数者や外国人収用問題やジェンダー意識を根拠に日本国民の人権の低さを問題視しますが、日本国民は、ゲイであり、二重国籍であり、男性タレントばかりを使うジャニー喜多川氏を、けっしてそのことで差別などしませんでした。

『サンデーモーニング』こそ、日本国民を不当な理由で差別して犯罪者扱いしているのです!

藪中三十二氏:人権の問題について欧米諸国と日本との違いは大きい。バーンスタインは禁錮23年で牢獄に入っている。これと随分受け止め方が違う。本来であればジャニーズ事務所は解体的な出直しを少なくともやらなければいけなかった。

高橋純子氏:人権侵害を受けた側がおかしいと声を上げることは同調圧力の中でかなり大変なことだが、それに対して連帯して行くこと、声を支えて行くこと、それに続いて声を上げることは私たちにもできる。社会を変える力は自分たち自身にあるということをもう一度思い返してその力をもう一度信じることから始めていきたい。

渡部カンコロンゴ清花氏:人権は日本では正確に理解されていないと。ああいう事件を通して立ち戻って意識して人権とは何かをもう一度学ぶ必要がある。

荻上チキ氏:広島のG7サミットで出したペーパーには立派なことが書かれているが、国連の勧告を無視している状況がある。このペーパーを完全実行して欲しい

最初のスタジオトークでは、児童虐待企業に対して一般企業が広告契約を打ち切ることを「皆で叩く」「一斉に雪崩を打つ」と非難していたコメンテーターが、「風をよむ」では国民の人権意識が低いからこんな事件が起きるというような説教で国民に絡んでいることがわかります。

ジャニーズ性加害は、ジャニーズ事務所と日本のテレビ局の人権意識の欠如によって成立したものです。そんな彼らに理不尽にコケにされている日本国民はもうテレビを観るのをやめましょう。彼らはジャニーズ性加害を日本国民のせいにしているのです!

さて『サンデーモーニング』に出演するたびに暴言を吐いてくれる朝日新聞論説兼編集委員の高橋純子氏ですが、この日もしっかりと期待に応えてくれました(笑)。

高橋純子氏:岸田総理は辛うじてアピール・ポイントとなる女性閣僚5人を起用したが、これに対して「女性ならではの感性」と言った。プププ~、ふざけんなと正直私なんかは思った。(副大臣と政務官の)54人の全員がスーツでネクタイの男性だけが並んでいるというのは非常におぞましい。

高橋氏のこの反応は、「女性ならではの感性」の存在を見事に証明してしまいました。外見的な性であるスーツとネクタイという【性表現 gender expression】を根拠として「おぞましい」と感情を吐出するのは、疑いの余地もない【性差別 sex discrimination】です。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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