「香も味も濃い」“カイゼン”生かして 変速機メーカーがレタスの水耕栽培 こども食堂に無償提供も【SDGs】

経済的な理由から、家庭で満足な食事を取れない「貧困状態にある子ども」に新鮮な野菜を食べてもらおうと、静岡県富士市にある企業がモノづくりのノウハウを生かして、野菜を栽培し、無償での提供を始めた取り組みです。

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お昼の休憩時間です。工場の社員食堂にさまざまなメニューがそろい、従業員たちが食事を楽しんでいます。

ここで出されているレタスなどの野菜は、この工場内で栽培されています。富士市にある自動車用変速機のメーカー「ジヤトコ」です。

<金原一隆記者>
「広大な工場の一角に野菜づくりの拠点があります。『ジヤトコ グリーン ファーム』。野菜の水耕栽培です」

ジヤトコでは水耕栽培で、グリーンリーフ、フリルレタス、チンゲンサイ、ラディッシュを育てています。

<ジヤトコ JEPS統括部 黄川寿課長補佐>
Q.大きい施設ですが、水を結構使うんじゃないですか?
「こちらは富士山麓の工業用水を弊社で殺菌処理をして、飲料水の基準を満たす水です」

土や虫がつかない衛生的な環境で、毎日約180株の野菜が出荷可能です。

ジヤトコは、JAふじ伊豆が運営するこども食堂へ野菜の無償提供を始めました。

<JAふじ伊豆女性部 こども食堂 遠藤勤子代表>
Q.ジャトコさんの野菜はどうですか?
「新鮮でいいですよね。こうやっていただいて、すぐに置ける(盛りつけできる)のは助かります」

ジヤトコでは、2023年7月、生活に困窮している家庭に野菜を無償で配布しました。それができるは、自動車メーカーならではの「徹底した品質管理」で高い生産力を実現しているからです。

水は工場で殺菌・浄化。細菌類は、カット野菜に求められる基準の1400分の1以下と衛生的です。

白いLEDのほかに、成長を促す赤色、殺菌力の紫色も組み合わせた太陽に近い光をあてて、傷みなどが少なく、大きい野菜ができるそうです。

<金原一隆記者>
「いただきます…いい音。水耕栽培は柔らかいんじゃないかなという印象があったんですが、すごくしっかりしていて、香りも味も濃いです」

社員食堂の食材として、毎日約40株を使い、50株は社員向けに割安で販売しています。野菜を買いに社長も来ました。

<ジヤトコ 佐藤朋由社長>
「もともとはCVT・AT(自動車用変速機)だけのメーカーなので、もう少しほかに手を伸ばそうと。うちのデータを解析する力とか、改善で物を作ってLEDを付けてみてどんな効果があるかとか確認するのがジヤトコの社員は得意だと思うので、そこが強みだと思って始めています」

ジヤトコの野菜作りには、自動車部品メーカーならではのノウハウが詰まっています。

<ジヤトコ JEPS統括部 黄川寿課長補佐>
「もともと本業が自動車部品作りで重いものを取り扱うので、働きやすいように工夫しています」

野菜工場は、障害がある従業員とシニアのサポートスタッフが栽培・収穫から出荷まで担当します。

障害者も働きやすい環境を作っているのが、自動車メーカーではおなじみ「カイゼン」活動。生産性を高め、従業員が無理せず働けるように生産ラインをよくする「改善道場」が水耕栽培の棚から台車まで設計し、作っています。

<ジヤトコ LEPS統括部 佐野五男プロフェッショナルスタッフ>
「みんなで創意工夫しながらよくしていく。それと同じで水耕栽培の方も。なるべく少ない人数で多くの収穫ができる様に、そういう工夫をしてきました」

ジヤトコでは、今後必要とする人たちに野菜を届けられるよう種類や生産量を増やす考えです。

<ジヤトコ JEPS統括部 黄川寿課長補佐>
「地元の富士にあるこども食堂で、子どもたちや高齢者などにジヤトコのレタスを食べてもらえればと思います」

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