馬も人間同様に緊張します

馬はあまり顔の表情が変わらないので、いつでも落ち着き払っているような印象があるかもしれませんね。ですが、当然ながら馬も緊張するんです!今回の記事では、馬が緊張しやすい状況や、緊張しているときのサインなどを紹介します。

どんなときに緊張するの?

馬が出す「緊張のサイン」が分からなければ、どんなときに緊張しているのかも分かりにくいものです。まずは、馬がどんなときに緊張しているのか見てみましょう。知ればきっと「何だ、私たち人間と同じなんだね」と思う方が多いはずですよ。

慣れないものに出会ったとき

草食動物である馬は、いち早く天敵の存在を察知して俊足で逃げることで生き延びてきました。こうした野生時代からの習性で、馬は非常に警戒心が強い動物です。

安全な厩舎の中で暮らすようになった現在でも、聞き慣れない音や見慣れないもの、急激に動くものなど慣れないものに出会うと馬たちは緊張が高まった様子を見せます。

大舞台に出るとき

乗用馬が競技会に出るときのほか、競馬馬が出走するときなど「これから大きな舞台に出るんだ!」と気付いた馬は緊張した様子を見せることがあります。ただし、馬によって大舞台で緊張する理由はさまざま。

あまり競技会に出る機会が無かった馬は、来たことのない場所や、行き交う知らない馬たちに緊張していることが多いでしょう。また、緊張感ある大舞台を何度も経験しているからこそ「これから競技だ」と察して緊張するベテラン馬もいます。

ほかにも、スピーカーから流れる音声や観客の歓声など聞いたことのない音を警戒していたり、馬房や飼い桶が普段と違うことに緊張を感じる馬もいるようです。

嫌なことを思い出したとき

馬は記憶力の良い動物です。そのため、過去の嫌な思い出と関連のある音・場所・ものなどに対して緊張することがあります。なかには、人間に嫌な思い出があるため人に会うたびに緊張してしまう馬もいますね。

騎乗者が緊張しているとき

みなさんは「馬に緊張が伝わるからリラックスして」なんて言われたことはありませんか?実は、馬はとても空気が読める動物。相手の声のトーンや動き、乗っているときの扶助などから人間の緊張を感じ取るといわれています。

人間の緊張を感じ取ると、馬も「何かいつもと違うのかも」と人間の行動や扶助に注意を払おうとするため、敏感になったり神経質な様子を見せることがあります。

緊張しているときに見せる仕草

ここまでは馬が緊張しやすい状況について紹介してきました。では、緊張している馬はどのような仕草や様子を見せるのでしょうか?

耳を落ち着きなく動かす

馬は緊張すると、周囲の情報をいつも以上にたくさん確認しようとします。そのため、色々な方向の音を聞こうと落ち着きなく耳をクルクルと動かしていることが多いでしょう。

耳を伏せる

緊張にもいろいろな種類がありますが、目の前にあるものに対して驚いたり警戒した場合は両耳をぺたんと後ろに伏せることがあります。これは、相手に対して威嚇しているときにも見られる仕草です。

首を上げる

視界が広くなるように首を高く上げるのは、耳を動かすのと同じく周囲の状況を確認するための行動です。気になるものを見つめていることもあれば、何かを探すように広い範囲を見渡していることもあります。

尻尾が下がる

尻尾が股のほうに巻いている…というと怯えている犬のようなイメージですが、実は馬も強い緊張を感じると尻尾を股に挟むように巻き込みます。馬の尻尾は全体の半分くらいしか尾骨が無いので、犬と比べると少しわかりにくいかもしれませんね。

フリーズする

乗馬ではあまりここまで緊張する馬を見ることは少ないかもしれませんが、競馬などを見ていると「膠着(こうちゃく)」といってその場で固まってしまい騎手の指示も全く入らず、ゲートが開いても走り出すことのできない馬を見かけます。

ボロをする

競技会などで馬場に入ったとたん「こんなところでなぜボロを…」なんて経験は無いでしょうか?馬が大事なときに限ってボロをするのは緊張しているからかもしれません。

はっきりした理由は分かりませんが、緊張により腸が過活動になるからとも、本能的にこれからの活動に備えようとしているともいわれています。

汗をかく

いつも涼しい表情の馬たち。「えっ、馬が緊張して汗を垂らすなんて想像できない…」と驚いた方もいるかもしれませんが、実は馬は興奮や緊張を感じたときしか汗がかけないんです。

運動しているときに馬が汗をかいているのは、身体を動かして暑いからではなく運動により興奮や緊張を感じているからといわれています。

もし、競技会などで大して身体を動かしていないのに馬がやけに汗をかいていたら、緊張が高まっているサインと考えて良いでしょう。

そんなときはどうすればいい?

人間の指示に機敏に従うためには、適度な緊張が必要です。そのため、緊張=良くないものとは限りません。しかし、馬が強い緊張を感じている場合や長時間緊張している状況では、緊張が馬の急な行動や体調不良につながることもあります。

まずは緊張の原因を探り、可能であれば原因を取り除いたり馬から遠ざけてあげましょう。競技会など、状況自体を変えられない場面で緊張してしまうことが多い馬には、低めの声でゆっくりと声掛けをすることも効果的です。

また、不安が強く競技自体や競技場での行動に支障が出てしまうと予想される場合は、前もって精神安定効果のあるアミノ酸・トリプトファンを含む馬用サプリをあげてみるのも良いかもしれません。

まとめ

一見クールに見える馬ですが、実は人間が緊張するのと同じような状況でかなり緊張していることもあるんです。緊張のサインをしっかり覚えて、必要に応じて馬の緊張対策をしてあげましょう。緊張を緩和することは、良いパフォーマンスにつながるだけでなく馬のケガ予防・体調管理の面でも重要です。

© 株式会社ワールドマーケット