「ポイ捨てタバコで魚が大量死」京都の水族館が“再起”へ 2メートル超「大型水槽」設置を目指す

ピラルクへのエサやり体験などもできる(提供:京都花園協会水族館)

水槽にポイ捨てされたタバコによって、飼育していた魚が大量死する被害に遭った京都・太秦の「京都花園教会水族館」が、野外水槽の再設置を目指してクラウドファンディングを実施している。

(参考:「ポイ捨てタバコで魚が大量死」水族館が怒りのツイートも…“犯人”の責任問うのが難しいワケ

吸い殻を見つけ、頭が真っ白に

京都花園教会水族館は、遺棄や売れ残りなどによって行き場を失った淡水魚、は虫類、両生類など約190種類を飼育する私設水族館。「どんな環境の子どもでも生き物と触れ合えるように」との思いから入館無料としているが、中には「館内に入る」ことがハードルに感じる子どももいる。

「大人ですら、“一見さん”のところに入るのは勇気がいること。子どもならなおさらです」と話す同館代表・篠澤俊一郎さんは、子どもたちがより気軽に生き物を観察できるよう、10年ほど前から屋外にも水槽を設置していた。

しかし今年6月下旬、二つあった屋外水槽のうち一つで、魚が次々に死んでいく。不審に思い水槽を調べてみると、1本のタバコの吸い殻が見つかった。

「野外展示を始めて約10年、まさかこのような被害に遭うとは思いもよらず、頭が真っ白になりました。

今から思えば、写真を撮っておくとか、吸い殻そのものを取っておくとか、物的証拠を残しておけばよかったなと思うのですが…。とにかく注意喚起しなければと、Twitter(現X)に投稿しました」(篠澤さん)

投稿は瞬く間に拡散され、5万以上のいいね、3万以上のリツイート(現リポスト)がついた。メディアからも25社ほど問い合わせがあったといい、篠澤さんは同じ被害を生まないようにとの思いで発信を続けた。

ゾウガメ、ピラルク、ピラニアなどさまざまな生き物がいる。首都圏など遠方から来館する人も多い(提供:京都花園教会水族館)

注目の一方、誹謗中傷も…

SNSとメディアでの発信によって応援の声も多く寄せられたが、同時に誹謗中傷も少なくはなかった。

「もちろん応援や励ましが圧倒的に多くて、意外にも『自分は喫煙者』だという方から『マナーが悪い人の代わりに謝ります』というメールもいただきました。

一方、電話で罵倒してくる方もいらっしゃって、精神的にも堪えました。ですが、よくよく話を聞いてみると、不満をぶつけてくる方は『喫煙者』ということで普段から肩身の狭い思いをしているのかな…と。世の中では、喫煙に対する目がどんどん厳しくなっていますので。

今回のSNSへの投稿は、喫煙者を批判するものではなく、あくまでポイ捨てへの注意喚起だったのですが、いろいろな声をいただいたことで、考えさせられることも多かったです」(篠澤さん)

横幅240cmの大型水槽を設置予定

この一件をきっかけに、篠澤さんは「生き物の命が危険にさらされる可能性がある」として、一度は野外水槽を撤去した。しかし、大型水槽を寄贈するとの申し出や、再開を望む人々の声に後押しされて、再設置を決意したという。

新たに設置予定の水槽は、横幅240cm、奥行き80cmの大型水槽。それを高さ175cmの台にのせ、水槽内の生き物を下からも観察できるようにする。

「水槽はただ設置すればよいのではなく、耐震設計や防犯対策なども必要になります。また、当館は入館無料である以上、寄付のみで運営をしていることから、今回クラウドファンディングを実施することにしました」(篠澤さん)

クラウドファンディングの目標額は150万円。8月30日に開始して約半月で達成率は41%(9月12日現在)と順調だという(実施期間は10月28日午前9時まで)。

「当館は生き物と触れ合う場であると同時に、子どもたちの“居場所”という側面もあります。

今回のクラウドファンディングも、子どもの支援団体などの協力を得て実施に至っているので、まずは『こういう取り組みがあるのか』ということだけでも構いませんので、興味を持っていただけるとうれしいです」(篠澤さん)

クラウドファンディングの詳細は京都花園教会水族館WEBサイトで要確認。

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