自治会の枠超えたつながり 10月15日「長崎・三重くんち」 漁業の町ならではのルーツ

豪快な龍踊を練習する松川さん(左手前)たち地域住民=長崎市三重町

 角力(すもう)灘を望む長崎市三重町の三重大神宮神社で10月15日、秋の祭事「三重くんち」が4年ぶりに開かれる。龍踊を奉納する総勢約40人は8月から練習に汗を流す。漁業の町ならではのルーツをひもときながら、自治会の枠を超えたつながりを武器に本番に臨む姿を追った。

 

■灯台完成を記念
 「日清戦争の祝勝目的で始まったのではないか」。ルーツを語るのは、三重地区史談会の木浦弘海会長(84)。1895年の戦争終結に合わせ、旧西彼三重村で凱旋(がいせん)祝賀会があり、浮立(ふりゅう)や龍踊を奉納した。木浦会長は「奉納目的でどこかに習いに行ったのでは」と発祥を推察する。
 1960年、小さな漁村だった三重村に能勢灯台が完成。漁師は朝も晩も安心して漁に出られるように。五つの自治会は灯台完成を記念し、龍踊、浮立を披露。龍踊はこの年を最後に途絶え、92年に復活した。
 それ以降、三重漁港周辺の五つの自治会(東上(ひがしあげ)、崎上(さきあげ)、馬場、角上(すみあげ)、角(すみ))が輪番制で龍踊か浮立を奉
納。新型コロナ禍で2020年から3年間、中止した。

■人口減に負けず
 今年の当番は角上の龍踊。人口減に伴い、どの自治会も担い手不足が深刻化。角上は約10年前から自治会内だけでなく、三重地区全体の住民を巻き込み、祭りを支える。
 10~40代の男性約20人が龍衆と玉使いを担当。角上自治会体育部長の松川宗一郎さん(30)は、若い世代が地域行事に参加しやすくなるような工夫を凝らす。「くんち以外に夏はペーロン、秋は運動会がある。そこで知り合った人への声かけを怠らない」
 龍衆と玉使いのほか、3~21歳の女性や子どもら約20人の鳴り物隊も欠かせない存在。雷雨を表す打楽器のパラパラや大ドラなどの囃子方(はやしかた)のリズムがあってこそ、龍の迫力が増す。

鳴り物隊の子どもたちが龍踊を盛り上げる=長崎市三重町

■かっこいい祭り
 京泊3丁目の県立西彼農業高3年、丸本夕夏さん(18)は三重町外に住む「よそ者」。8歳から兄弟とともに参加し、担当するのは打楽器の「キャンキャン」。「兄がペーロンに乗っているつながりで加わり、みんなで集まれる時間は楽しい。できるところまで今後も参加し続けたい」
 10年ぶりに参加する門口拳斗さん(23)は初めて龍のしっぽを持つ。三重くんちの龍は、龍衆が長崎くんちより2人少なく、しっぽ担当は龍の動きを大きく見せる重要なポジションだ。
 門口さんは慣れない動きに必死についていき、前任のしっぽ担当からアドバイスを受ける日々。「かっこいい祭りだと多くの人に知ってほしい。三重の行事自体がなくならないようにしないと」。練習は週3回。「もってこーい」の歓声が夜空に響く。奉納は10月15日午前11時から。同日午後1時半から新三重漁協「浜いそ」横広場でも披露する。

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