「いのち支える」動画コンテスト 自殺防止に相談訴え 筑波大大学院の斎藤さん優秀賞 茨城・水戸出身

絵コンテを手に持つ斎藤真衣子さん(筑波大学大学院)=つくば市天久保

筑波大学大学院の斎藤真衣子さん(22)=茨城県水戸市出身=が、学生の視点で自殺対策を提案する「いのち支える動画コンテスト2023」の優秀賞を獲得した。斎藤さんは小学校時代に経験した知人の自死と向き合い、相談に着目した作品を制作。思い悩む人々に「勇気は必要だが、できる限りSOSを出すことが大きな一歩」と話している。

コンテストは、若者の自殺者増加を受け、当事者の目線を重視した啓発を図ろうと、一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」(東京)が企画。「誰も自殺に追い込まれることのない社会へ~いまあなたが伝えたいこと~」をテーマに、「セルフケア・SOS」「ゲートキーパー」「いのち支える自殺対策」の3部門で絵コンテを募集し、計138点の応募があった。優秀賞4点は学生自身が動画化した。

斎藤さんが受賞したのは「セルフケア・SOS」部門。作品は、主人公の青年が暗い部屋でスマートフォンから相談窓口に電話をかけようとするものの、「相談って、何を言えば…」と悩む設定。そこへ飼い猫から「うまく言えなくても、いいんじゃにゃい?」と背中を押され、電話で友人に「あのさ…」と言ったところで涙を流し、最後は窓のカーテンが風でなびき、部屋に光が差し込む場面で終わる。

斎藤さんは、小学校高学年の時に知人の自死を経験。当時は受け止めることができなかったが、精神保健に関心を持ち、同大看護学類に進学。公衆衛生を学ぶ過程で知人が自死した経緯について振り返り、「周囲や家族に相談している様子がなかった」ことから、作品テーマに相談の重要性を据えた。

動画は同センターのユーチューブチャンネルで公開中。8月30日の公開開始から1週間で再生回数は千回を超えた。

斎藤さんは「自分の中の課題を言語化できていなくても、うまく言えなくてもいい」と語り、まず相談窓口へ連絡するよう訴えた。

警察庁の統計によると、2017~22年の茨城県の自殺者数は470人前後で推移。全体のうち「学生・生徒等」は17年の15人から22年には23人に増加。原因・動機別の「学校問題」でも、17年の1人から22年は12人に増加した。

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