過激で映像化困難? 桜井玲香と中田圭祐が、演じる上で意識したこと――「灰色の乙女」インタビュー

桜井玲香さんと中田圭祐さんがダブル主演を務めるドラマイズム「灰色の乙女」が、MBS・TBSにて絶賛放送中。電子コミック配信サービス「コミックシーモア」で2019年より連載をスタートし、累計670万ダウンロードを突破。「怖過ぎる」「展開が気になって読んじゃう」と話題になった、新田チハルさんによる人気漫画を実写ドラマ化したものです。

広告会社に勤める鏡蔦子(桜井)は、20年間ずっと片思いしている維井莇(中田)に対し、ストーカー行為をしていました。ある日、いつものように莇の後をつけていた蔦子は、彼が車にひき逃げされる現場に遭遇してしまいます。莇が記憶喪失になったことを知った蔦子は、長年の思いをかなえようと、自分たちは恋人同士だとうそをつきます。その後も次々とうそを重ね、行動がエスカレートしていくという、うそから始まる“ストーカー”の蔦子と蔦子にひかれていく莇の、純愛と狂気のラブサスペンスです。

TVガイドWebでは、記憶喪失になった莇へうそを重ねるストーカー・鏡蔦子を演じる桜井玲香さんと、自分の恋人だと名乗る蔦子に少しずつひかれ始めるパン職人・維井莇を演じる中田圭祐さんに、役への思いや見どころなどを伺いました。

――原作や台本を最初に読んだ時の感想はいかがでしたか。

桜井 「少し過激なダークサスペンスに、少女漫画らしいピュアなラブストーリーも織り交ぜてあり、いろいろな要素が楽しめる作品だという印象を受けました」

中田 「読んでいたらいつの間にか次々とページをめくっていました。最初は蔦子さんが怖いと思いましたが、読み進めるにつれ、彼女の真っすぐな気持ちも少しずつ理解できるようになりました。あと、ダーク蔦子のシーンをどうやって実写にしていくのか、楽しみの一つですね」

――演じた役柄について教えてください。

桜井 「私が演じている鏡蔦子は真面目で真っすぐな性格ですが、それが災いして、片思いをしている莇くんのストーカーになってしまいます。とてもいい子なのですが、少しズレていて恋に不器用な女の子です」

中田 「僕が演じる維井莇は、小学生の時ぐらいから蔦子さんにストーカーをされているのに全く気づくことはなく過ごしていた子です。そんなある日、ひき逃げに遭ってしまい、倒れていたところをストーカーをしていた蔦子さんに発見され、一命を取り留めることができました。その時に記憶をなくし、お見舞いに来た蔦子さんに『実は私はあなたの彼女だった』と告げられ、記憶を取り戻しながら日々を過ごしていくキャラクターです」

――桜井さんから見た莇というキャラクターの印象はいかがでしたか。

桜井 「莇くんは、周りの人に愛されて明るく何不自由なく育ってきたという印象です。1話目で莇くんの母親が出てくるのですが、ちょっとした会話から“仲のいい親子なんだな”というのが見てとれました」

――中田さんは蔦子のどこが怖いと思いましたか。

中田 「家に勝手に入ってきて、大好きな莇くんの空気を取ったりなど、実在していたら怖いなと思いました(笑)」

桜井 「海外の人気アーティストさんが来日した時に『同じ空気を吸っている!』と多くのファンはそう感じると思うので、その気持ちで演じてみました」

――演じたキャラクターの好きなところはどこでしょうか。

桜井 「状況が変化をしても人をいちずに思うことって簡単なようでとても難しいことだと思うので、愛が深い人だなと感じました。そういう真っすぐなところが蔦子のすてきなところだと思います」

中田 「少し天然で、おちゃめなところが好きです。全くすれておらず純粋で、そして仕事熱心で、お手本のような好青年なのにかわいらしさもあります」

――ご自身と演じるキャラクターが共通する部分はございますか。

桜井 「私も蔦子と同じで前に出るタイプではなく、割と影から応援するタイプなところが似ています。その部分は理解できたので、その部分は素直に演じることができました」

中田 「最初は気にも留めていなかったことが、実は……と、伝えられた後に意識してしまうところは似ているのかもしれません。その点は莇というキャラクターが作りやすかったです」

――演じる上で意識した点や、芝居について監督とお話したことがあれば教えてください。

桜井 「蔦子のピュアな部分と黒い部分の二面性をいかに分かりやすく表現するかを、監督と一緒にアイデアを出し合いました。ストーカーということで結構きついセリフも多いけれど、決して意地悪ではなく、心が純粋で優しい女性ですので、“どこまで攻めてどこで引くか”を常に考えてお芝居に臨みました」

中田 「記憶を失っている中で“どこまで恐怖を抱えているのか”などを事前に監督と話し合わせていただき、恐怖に重きを置いてしまうと物語が成立しないため、前に進む中の一つとして怖いものがあるということをベースにし、不安と拒絶と前向き具合のバランスを意識しながら演じました」

――原作をどのくらい意識されて撮影に臨まれましたか。

桜井 「蔦子はずっと片思いをしている人と対面しているので、感情の起伏が激しく、急に泣き出したり怒ったりするポイントが独特です。その辺の感情作りをする上で漫画を参考にしました。原作よりもドラマの方が大人向けに描かれていると感じたので、そのさじ加減をうまく演じながら、ドラマならではの空気感を大事に演じました」

中田 「ふとした時の表情など、莇を演じる上でさまざまな表情を引き出したい時に漫画を参考にしました。ドラマだからこそ出せる表現方法を織り交ぜつつ、莇を作り上げました」

――印象的だったシーンがあれば教えてください。

中田 「ダーク蔦子のシーンが一番驚きました。メークや衣装もとても怖めに作られていたので(笑)」

桜井 「蔦子の中にいるダークさを視覚的にも分かりやすくしていますので、最初はびっくりしますよね」

――まだ撮影を終えられていないとのことですが、これから楽しみにしているシーンはございますか。

中田 「後半は莇の記憶の関係で蔦子さんに対するツッコミも鋭くなり、ミステリーが徐々に強くなっていきます。そこで2人が本音でぶつかり合うようなシーンがあり、そこを演じるのが楽しみです」

桜井 「撮影の休憩中に“蔦子みたいな愛し方は有りか無しか”を話題にしていても『怖いので無し』という声が多いです(笑)。蔦子と莇くんがどうなっていくかという重要なシーンがこれから出てきます。ラストに向けて、蔦子の愛が“有りの恋愛”というのをいかに感じていただけるかを作り上げるのが難しいと思いつつ、そこが一番の楽しみです」

――桜井さんは“有り派”ですか。

桜井 「私は“無し派”です(笑)。原作を読んだ時に、すごいキャラクターだと思いました。だからこそ、いかにリアルでナチュラルに蔦子側の気持ちに打ち込めるかが課題でした」

――共演をしてみて、お互いの印象を教えてください。

桜井 「中田さんはずっと笑ってくださって、とても明るい方だなと思いました。今はまだ莇くんが入院して病院のベッドにいるシーンが多めなので、これからまたさまざまなシーンを演じていくにつれて、新たな印象が加わっていくかもしれません」

中田 「桜井さんは器用で度胸のある方だと思っています。主演としてドシッと芝居場にいてくださるので、僕は安心して演じることができています。あとは、いつも忙しいはずなのに一切疲れも見せず、現場で明るく頑張ってくださっているので、きちんとお休みできているか心配になります(笑)」

――本作では莇がパン職人ということで、それにちなんでお二人の好きなパンを教えてください。

桜井 「私はカレーパンが好きです(笑)」

中田 「あ、いいですね。僕もカレーパンが好きです。あとはソーセージに固めのパンが巻かれているパンが一番好きです」

桜井 「ウインナーフランスパンですね。おいしいですよね! ドラマでもこれからどんなパンが出てくるのか楽しみの一つになっています」

――最後に本作の見どころをお願いいたします。

桜井 「“映像化困難?”のような原作のキャッチコピー的なものがある通り、過激な表現がたくさんある作品です。そこを見せられるよう、リアリティーを持たせてしっかりと表現できた映像作品になっていると思うので、原作をベースにどんな映像が作られたのかをぜひ期待してご鑑賞いただけるとうれしいです」

中田 「非現実的な要素もあるかとは思いますが、登場人物全員にいろいろな思いがあり、“映像化困難?”と言われたところを実写だったらどう成立できるかを、スタッフみんなが一丸となって取り組んでいます。原作ファンの方もドラマから入る方も、皆さまの期待に応えられるよう頑張って作り上げていますので、ぜひお楽しみいただけるとうれしいです」

――ありがとうございました。お二人が作り上げた蔦子と莇の掛け合いがこれからどうなっていくのか楽しみです!

【プロフィール】

桜井玲香(さくらい れいか)
1994年5月16日生まれ。神奈川県出身。おうし座。A型。乃木坂46の初代キャプテンを務め、2019年に卒業。現在は舞台やミュージカルなどに出演し、女優として精力的に活躍中。主な代表作に主演映画「シノノメ色の週末」(21年)、単独主演ミュージカル「DOROTHY(ドロシー)~オズの魔法使い~」、「お笑いインスパイアドラマ ラフな生活のススメ」(NHK総合)などがある。24年5月に上演のミュージカル「この世界の片隅に」への出演を控えるなど、役者への幅を広げている。


中田圭祐(なかた けいすけ)
1995年11月27日生まれ。神奈川県出身。いて座。O型。「MEN’S NON-NO」の専属モデルとして活動する中、俳優としても多岐にわたって活躍している。主な出演作に「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」(日本テレビ系)、「明日、私は誰かのカノジョ」(TBSほか)、「今野敏サスペンス 憐情 警視庁強行犯係 樋口顕」(テレビ東京系)、「僕らのミクロな終末」(ABCテレビ)、映画「耳をすませば」(2022年)などがある。23年10月6日公開の映画「さよならモノトーン」では主演を務める。

【番組情報】

ドラマイズム「灰色の乙女」
TBS 火曜 深夜1:28~1:58
MBS 火曜 深夜0:59~1:29
※TBS放送後にTVer、MBS動画イズムにて1週間見逃し配信!

取材・文/山本恵代(TBS・MBS担当) 撮影/蓮尾美智子

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