燃焼温度が山火事のガス状有害物質放出量に影響、横浜市立大学などが発見

横浜市立大学大学院、米海洋大気庁(NOAA)、米航空宇宙局(NASA)の共同研究グループは、北米西部の山火事から発生する揮発性有機化合物の種類と量は、燃える植物の種類よりも燃焼温度による影響が大きいことを見出した。

森林火災で発生する揮発性有機化合物(VOC)は、その地域の環境汚染や気候変動に多大な影響を与えるとされ、大気汚染物質である対流圏オゾンや二次有機エアロゾルの生成メカニズムの解明や発生量の予測モデルの構築は、大気化学における近年の重要な課題となっている。

2016年に開始したNOAAとNASAの大規模研究プロジェクトFIREX-AQにおいて、研究グループは、VOCの瞬間的発生量は2つのVOCプロファイル(高温または低温熱分解プロファイル)の組み合わせで高精度に評価でき、燃える植物の種類に依存しないことを示した。

これらの実験室内で得られた結果が、野外での実際の山火事に適用できるかを確かめるため、2019年夏、NASA DC-8を用いた航空機観測が北米西部で行われた。8つの異なる山火事のVOCを同様に測定・解析した結果、高温・低温熱分解プロファイルの組み合わせにより、山火事由来のVOCの種類と量を70%以上の精度で表現できることを見出した。

さらに、高温・低温熱分解プロファイルの相対的寄与率は、衛星で観測される燃焼放射力(fire radiative power)に相関していた。これにより、燃える植物の種類よりも燃焼温度による影響が大きいと結論付けられた。

今回の結果により、VOC発生量を燃焼放射力の観測のみで推定することが可能となった。研究グループは、衛星観測で得られる燃焼温度の情報を元に、山火事に由来するVOC発生量を推定する新たなフレームワークを提唱している。

論文情報:

【Environmental Science & Technology】Fuel-Type Independent Parameterization of Volatile Organic Compound Emissions from Western US Wildfire

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