「原価率の高い商品を提供して利益が出ない…」ラーメン店“閉店ラッシュ”が止まらない理由 倒産は前年度比3.5倍に

多くの人に愛され、「国民食」としての地位を確立したラーメン。人気のはずなのに、2023年に入ってからラーメン店の閉店が相次いでいます。閉店が相次ぐ裏側には、物価の高騰だけでなく、ラーメン店ならではの悩みがあるようです。

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静岡市駿河区の「十二分屋」は、こだわりの醤油で作るラーメンが看板商品です。オープンから約2年、コロナ禍を越えて経営は軌道に乗るかと思いきや、大きな壁に直面しているといいます。

<熟成醤油十二分屋静岡店 高塚光明オーナー>
「麺が主流になるので小麦の高騰、スープにもいろいろな食材を使うのですべてのものが高騰している」

逆風になったのは、物価の高騰。原料の小麦のほか、水道代・光熱費などの経費は1年前と比較して約1.5倍になりました。

<熟成醤油十二分屋静岡店 高塚光明オーナー>
「今年夏に値上げした。10月から人件費も、静岡の場合、最低賃金984円になるので40円アップする。今後ますます厳しくなる」

今年7月、ラーメン店では、長くタブー視されてきた値上げに初めて踏み切りました。

東京商工リサーチの調査によりますと、2023年8月までのラーメン店の倒産が28件に達し、2022年の同じ時期に比べ、3.5倍に急増しています。また、倒産企業の規模別データを見ると、会社規模が小さくなるにつれて、倒産した店が多くなっていることが分かります。こうした状況の背景には、ラーメン店ならではのリスクがあるといいます。

<熟成醤油十二分屋静岡店 高塚光明オーナー>
「例えば、独立開業するときに非常にハードルが低くて、意外と参入しやすいこと。そして、おいしいものを作って、提供するためにどうしても、原価率の高い商品をお客さんに提供して、最終的に利益が出ないという部分が廃業につながっていると考えられる」

ライバル店が多く、味を追求するあまりに儲けが少なくなるというリスクを抱えているというラーメン店。生き残るためのカギになるのは、多角化と差別化です。

静岡市葵区のラーメン店では、一風変わったサービスを提供しています。

<哲麺縁静岡沓谷店 齋藤千也店長>
「うちのサービスでやっているのが、ラーメンを頼んでいただいたお客さんはカレーかけ放題」

ラーメンの豚骨スープも入れた自家製のカレーをライスの料金そのままで食べ放題にしています。

<哲麺縁静岡沓谷店 齋藤千也店長>
「ほかのラーメン屋にないことを始めたかった。カレー食べ放題にすることでひとつ強みにもなるし、『お子様ラーメン』という商品がないのでお子様でも食べられる商品といえばカレーがおなじみかなと思い始めた」

カレーの食べ放題は、客層を広げるための戦略。ファミリー層を呼び込み、固定客をつかみたい考えです。

一方で、おいしさの追求は、わたしたちにとってはありがたいのも事実。ラーメン店は、おいしさの向上と安定した経営の難しいかじ取りを求められています。

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