「初恋は叶わない」と言われるけれど…再会したふたりが結婚できたワケ

飯豊まりえさん主演のドラマ『何曜日に生まれたの』(朝日放送テレビ、毎週日曜よる10時放送)は高校時代の初恋の人に再会した女性と、初恋の人を巡る同級生たちの複雑な人間関係が次第に浮き彫りにされるという、ミステリアスな物語。

「初恋のその後」というテーマは多くの人にとって気になるものですね。では「その後」に結婚というゴールインはあるのでしょうか。

初恋を実らせる方法について、考察してみます。

「初恋が実らない」と言われているのはなぜ?

昔から「初恋は実ることがない」と言われてきました。それは本当でしょうか。そこで初恋に関する格言(著名人)を挙げてみましょう。

初恋に関する格言

  • 「初恋の魅力は『恋がいつかは終わる』ということを知らない点にある」(ベンジャミン・ディズレーリ:19世紀イギリス首相、小説家)
  • 「男は女の最初の恋人になりたがるが、女は男の最後の恋人になりたがる」(オスカー・ワイルド:小説家)
  • 「人が心から恋をするのはただ一度だけである。それが初恋だ。それから後の数々の恋は、初恋ほど無意識なものでない」(ラ・ブリュイエール:17世紀のモラリスト、作家)
  • 「初恋に勝って人生に失敗するというのは良くある例で、初恋は破れるほうがいいと言う説もある」(三島由紀夫:作家)
  • 一生涯ひとりの異性を愛することは、一本のロウソクが生涯燃えることと同じである」(レフ・トルストイ:作家)

大人になると、ベンジャミン・ディズレーリの名言のように、「恋はいつか終わる」ということが分かってきます。それでも恋をしたくなるのは、生きている証を感じていたいという本能のようなものかもしれませんね。

また複数の恋を経験すると、「恋は3年で終わる」ことも分かってきます。そこで結婚して家族になりたいと思うようになり(個人差もありますが)、恋を経て結婚によって愛情を育んでいくことになります。

そのため最初の恋である「初恋」は、一生心の中に刻み込まれる思い出で、風化されることのない記憶となるでしょう。時には美化されることもあります。

辛くなった時に、心の中から思い出を取り出して癒されるのは、いつまでも輝いている宝物のような存在だからです。

初恋とその後の恋愛の違いとは?

筆者は2万人以上のワーキングウーマンの恋愛や婚活、結婚を取材していますが、「恋の相手は初恋の人と同じタイプ」とか、「初恋の人とそっくりな男性と結婚した」ということを一度も聞いたことがありません。

初恋というのは、この世界のことを何も知らないときに「好き」という感情が湧き出るため、無垢な頃の自分を象徴するものです。

成長していくうちに“社会”を知り、社会の中で自分の居場所を探しているうちに、価値観や美意識、考え方、生活のリズムがぴったりの人に惹かれ、恋をして、中には結婚に至ったりします。

一方、初恋は、価値観や美意識や考え方やリズムといった、カップルが一緒に生きていくために必要な要素とまるで無関係だから、初恋から結婚に至るのが少ないのです。

でも心の中で、初恋で味わった無垢で甘酸っぱい感覚を懐かしいと感じているなら、ひょっとしたら無意識のうちに、初恋の感覚を求めているのかもしれません。

初恋の人に再会して結婚できた理由とは?

このように「初恋は実りにくい」ものですが、実際にゴールインしたカップルがいます。ただしこのカップルは、結婚するまでに紆余曲折がありました。一体何が起こったのでしょう。

アーティストのユウジさん(53歳・仮名)は48年越しの初恋を実らせた経緯を次のように語ります。

「僕が6歳のときの初恋がユリさんです。2歳年下のユリさんは資産家の娘で、僕の家は貧乏でした。

近所の子どもたちと一緒に遊んだりするうちに仲良くなりましたが、ユリさんは私立の小学校に通い、僕は地元の公立小学校とそれぞれ分かれてしまったんです」

淡い思い出の初恋の相手と再会したのは、それから20年後。バイトをしながらアーティストとして少しずつ頭角を現した頃に、出版社の編集アシスタントをしていたユリさんと再会したのです。

ほどなく交際に発展し、結婚の約束をしたのですが、ユリさんの両親に大反対されて、別れることになったとか。

「それからすぐにユリさんは親のすすめで見合いをして、結婚したと風の便りでわかりました」

その後ユウジさんは仕事に没頭し、自分の才能だけで生活できるようになると、魅力的な女性と交際するようになります。しかし結婚には至らなかったそうです。

「40代後半になって、自分が結婚に縁がないだろうとわかると、後輩の育成にも尽力したいと思うようになりました。そして50歳の時に、後輩の個展でユリさんと偶然に再会したんです」

ユリさんは子育てが終わって、第二の人生を模索していた頃でした。親がすすめて結婚した夫との関係は冷え切っていて、ユウジさんとの結婚を大反対したユリさんの両親が共に亡くなっていたそうです。

「僕の初恋は、ユリさんの子どもたちの応援で実りました。円満離婚したユリさんと僕の家で同棲してから、結婚しましたよ」

45年越しの初恋は、離れている間に成長した二人が再会した時に「好き」という感情を持ち合わせていたのはもちろんのこと、価値観や美意識などをすり合わせていこうとする気持ちも一緒だったから、実ったといえるでしょう。

初恋を実らせる方法とは?

前述したように初恋の人と再会して結婚するというケースとは真逆に、「初恋の人と再会すべきではなかった」という人もいます。

再会否定派の理由は「初恋の時の彼と大人のなったときの彼が、あまりにも違い過ぎていた」からで、がっかりしてしまった理由は、今の彼に昔の彼を重ねて見てしまい、そのギャップを感じているのですね。

初恋を実らせるためには、相手が初恋の人であっても、新しい恋がスタートするのだと捉えるべきでしょう。

例えば同窓会に出席して、初恋の人を見つけてしまったとします。その時、初恋の人も自分も成長しているし、それぞれの環境から培ってきた価値観や考え方を持っていることをしっかりと自覚しておくべきでしょう。

同窓会で再会すると、すぐにあの頃にワープしてしまい、懐かしさが心を潤してくれますが、恋に発展するかどうかはお互いに離れ離れになっていた時間と距離を乗り越えられるかどうかが決め手です。

初恋は多くの人にとって宝物ではないでしょうか。

ゆえに、再会しても当時のイメージに引っ張られてしまうこともしばしば。それが成就しない大きな原因になります。

お互いにすり合わせながら、離れていた期間の相手の成長を認めて価値観を共有できるなら、恋愛や結婚に発展してゴールインの可能性を持っているといえるでしょう。

(mimot.(ミモット)/ 夏目 かをる)

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