子育て世代の子ども時代に比べると、中学受験は随分と身近なものになってきています。
小学校低学年などの早い時期から中学受験を見据えて、学習に取り組ませているというパパ・ママもいるのではないでしょうか? 自分自身がそうでなくとも、周囲でそんな話を聞くことが多いという場合もありますよね。
首都圏模試センターによれば、2023年首都圏の私立・国立中学受験者数は過去最多の52,600名、割合としても過去最高の17%を超える小学生が中学受験に挑んでいます。
学年の半分以上が中学受験する、という地域もあるようです。
今回は、そんな「中学受験する子が多い地域」のママたち、中でも中学受験をしなかった家庭のママたちに「周囲が中学受験に向けて塾通いをする中、受験をしない子はどう過ごしていた?」という疑問を投げかけてみました。
子どもたちの放課後の過ごし方から、中学受験を選択しなかった理由も見えてきます。
中学受験をしない子の放課後、過ごし方にも理由があった!
1: 受験しないのに塾通い!? その理由とは
実は中学受験を選択する子どもが多い地域では、中学受験をしない子も塾通いをしているというパターンが多いのです。
そこには、「周囲が勉強に打ち込んでいる」という環境ならではの理由がありました。
「我が家が住む地域は学年の半分以上が中学受験をする地域です。ゆえに、勉強面に関して優秀な子が多いですね。
子どもが周囲と自分を比較して『自分は勉強が苦手』と感じてしまわないように、受験用ではない個別指導の塾に通わせていました」(派遣社員/48歳)
中学受験をするしないという選択やその理由は家庭によってさまざまですが、「勉強をしない子になっても構わない」と考えている親は少ないはず。
優秀な周囲と比べて劣等感を抱き、勉強を苦手視することで勉強に取り組まなくなってしまうという事態を懸念して塾通いをさせていたという家庭は多いようです。
「子どもの性格を考慮し、受験は高校のタイミングでと考えて中学受験を見送りましたが、皆が塾通いしていて放課後一緒に過ごす友達がいなくなってしまって……。
退屈を埋めるために皆と一緒に塾通いをさせていました。同じような流れで塾通いをして、結果的に中学受験をすることにした家庭もあります」(メーカー勤務/42歳)
このママが語るように、放課後に一緒に過ごしていたメンバーが次々と塾通いを始めた結果、なんとなくウチも……という流れで中学受験をすることになる場合も意外に多いようです。
2: 習い事一筋勢は受験をしない!?
「息子は小学校低学年からピアノコンクールなどに出ていて、同じペースでピアノをするのであれば中学受験との両立は難しい状況でした。
すでに息子の生活の一部になってしまっているものを一旦取り上げてまで受験勉強させるのも忍びなくて、そのまま高学年もピアノを頑張らせて、地元の公立中学校に進学させました」(自営業/38歳)
もともと習い事に使っている時間が多い子や大会などで結果を出している子の場合は、中学受験は見送って、とりあえず今は習い事を頑張らせるという選択をする家庭も多いようです。
「本人は『野球選手になりたい、中学受験はしない』と言って野球の練習ばかりしているけれど、親の思うところとしては『まあいいんじゃない?』という感じです。
子どもの頃からこれだけ頑張れることがあるのは珍しいと思うので、それを中断させる理由もない気がして」(公務員/36歳)
このように、いわゆる“習い事大好き勢”は皆が勉強に打ち込んでいる時間、ますます習い事に時間を費やすようになる傾向があるようです。
もちろん、「プロを目指して習い事を頑張っているから中学受験は眼中にない」という家庭もあるでしょうが、筆者がリサーチした中では「とりあえず今やりたいことを」「頑張る力はついているだろうから、いざ高校受験になってもなんとかなる」という楽観的な家庭が多い印象でした。
3: 今しかない! 家族の時間を持つ
中学受験をしない家庭の親が総じて口にするのが、「高学年には、学校外の時間に遊ぶ友達がかなり少なくなってしまう」というもの。
特に、塾通いの子どもたちが夏期講習や冬季講習を入れる長期休みや、模試などのために時間を使う土日など、これまではいつも友達と一緒にいたのに途端にやることがなくなってしまったという子が多いのです。
「一人っ子の息子は小学校4年生あたりまでは、土日も長期休みも毎日、午前も午後もいつも友達と遊びまわっていて、小学校に入って以降まったくといっていいほど家族で行動することがありませんでした。
本人の希望で中学受験はしないと選択したのですが、これが結果的に家族としてはいい方向に転んだ気がします。
遊べる子が少なくなったことで、退屈した息子が私や夫と行動したがるようになり、久々に長期の家族旅行などにも行くことができました。
皆が受験をする中、受験をしないと決めた時は不安だったけれど、家族での時間をたくさん持てて我が家としては正解だったと感じます。
息子も中学生になり、またも友達優先で私たちとは行動してくれなくなったので、小学校後半は束の間の良い思い出です」(専業主婦/39歳)
このように、たくさん家族の時間を過ごすことを意識している家庭も多いようです。
記憶を思い起こすと、「自分自身も中学生くらいからは親と行動することがグッと減った」というパパ・ママは多いはず。
子どもによっては、思春期に過剰に親を拒絶したり反抗したりすることもあります。ある意味、無理強いせずに旅行に連れ出したり、親子で一緒に遊びに出かけたりできる「子ども時代の最後のチャンス」と捉えることもできるかもしれません。
4: 中学受験はしないけど受験のための勉強!?
中学受験はしないけれど、先の受験を見据えた勉強をさせているという家庭もあります。
「本当は娘に中学受験をさせようとしていたのですが、娘はとにかく本番に弱くて……。
入塾テストも頭が真っ白になってしまい思うように点数が取れず、その後も通塾が自信の喪失につながっているように感じたので思い切って中学受験は断念しました。
小学校6年生の今は、もとから通っていた英会話教室に通う日数を増やして、英検とTOEICのための勉強をしています。
中学受験をしなくても、高校や大学など、どこかのタイミングでの受験は免れませんが、その学校が指定する級や点数を持っていれば入試の際に英語の試験が免除になる高校や大学があると聞いたので、小学校のうちから地道に取らせていこうと思っています。
検定試験は、一発勝負ではなくオンラインなどでも何度でも受けられますし」(看護師/44歳)
英検などの検定で一定のラインの級や点数を取得しておけば、入試で英語が免除になる学校があります。その分、他の教科の勉強に専念できるとあって、小さなうちから検定向けの勉強をやらせているという家庭も。
検定などの勉強はのちの受験以外の部分でも、生きてきそうですね。
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家庭によって、中学受験をするかしないかの選択やその理由はさまざま。
中学受験でしは得られないものや吸収できない内容があるのと同じく、中学受験をしないがゆえに得られることもたくさんあるはずです。
受験のするしないに正解はありません。自分たちの選択を信じて、子どもとともに有意義な時間を過ごしたいものですね。
参考:首都圏模試センター
(ハピママ*/ 高橋 マミ)