主要33カ国の中で最下位の日本、テレビCMの影響ではあるまいが…

山陰中央新報デジタル

 高度成長期の頃、大学受験で「四当五落」といわれた。睡眠時間を1日4時間に削って勉強すれば合格するが、5時間なら不合格になるという精神論だ。「ナポレオンは3時間しか寝なかった」と、おまけが付いたこともある。

 寝る間も惜しんで努力することが求められる時代だったのだろう。社会人になってからも、ビジネスマンに扮(ふん)した俳優・時任三郎さんが「24時間戦えますか」と歌う栄養ドリンクのテレビCMが話題になった。

 その名残が今も尾を引いているのではあるまい。経済協力開発機構(OECD)の2021年版の調査では、日本人の平均睡眠時間は主要33カ国の中で最下位の1日7時間22分。平均よりも約1時間短かった。ただ別の調査では、コロナ禍の影響なのか、睡眠時間が増加に転じたとの結果もある。

 問題とされるのは、厚生労働省の19年の調査で1日6時間未満の人が男性は37.5%、女性は40.6%もあったこと。このままでは睡眠不足が積み重なって心身に影響が及ぶ「睡眠負債」につながる。

 睡眠が不足する原因は働き過ぎや通勤時間、スマホ依存などが関係しているという。かつては1日8時間とされた必要な睡眠時間には個人差があるものの、平均的な時間なら人生の3分の1を占める。おろそかにはできない。暑くて寝苦しい夜は峠を越えた。膨らんだ国の借金のように「睡眠負債」がたまる生活は見直したい。

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