「汚染魚食べろ」「人が住めない土地」「Fukushima Water」日本共産党の風評加害は組織的に行われていた|松崎いたる 日本共産党の度重なる風評加害の源泉は志位委員長による公式発言にあった!共産党が組織的に福島を貶め続ける理由は何か?『日本共産党 暗黒の百年史』の著者、松崎いたる氏による「ここが変だよ共産党」第8弾!

「汚染魚」はNGだが「汚染水」はOK

日本共産党の元福山市議・村井あけみ氏のポスト

「高島屋に行ける方は、ごくわずかの方たちです。どうぞ、もっとしっかり汚染魚を食べて、10年後の健康状態をお知らせください」

これは日本共産党の元福山市議で次期衆院選において広島6区から党公認での候補者として発表されていた村井明美氏のX(旧ツイッター)での9月7日の投稿である。

同党の小池晃書記局長は9月11日の記者会見で、「汚染魚」という表現を問題視し、村井氏の公認取り消しを発表した。

「日本近海の魚が放射性物質によって汚染されているということは、わが党の認識と見解に反する。党書記局として、ツイートを削除し、謝罪するよう本人に指示した」と小池氏は述べた。

だが同時に同党が使い続けている「汚染水」という言葉については 「汚染水、あるいはアルプス処理水という言い方を私たちはしています。汚染水という言葉を使ってはいけないかのような議論にわれわれはくみするものではありません。汚染水って言い方自体もきちんと科学的だと思います」と、これからも「汚染水」と言い続けることを宣言した。

「汚染魚」はNGだが「汚染水」はOKだというのだが、これほど矛盾した話はない。「汚染水」を泳いだ魚は汚染されないとでもいうのだろうか。魚を汚染させないような水なら、何の問題もない普通の水ではないか。

それでも共産党が「汚染水」と呼び続けるのは、海洋放出を自民党政権や東京電力の〝失点〟にして攻撃したいだけのことである。その反面「汚染魚はいない」と言うのは、漁業関係者の票が欲しいからだろう。

小池氏は「科学的だ」と強弁するが、科学とは無縁の政治的な意図をもった言辞を弄し、漁業者が一番心配している風評を広げているのが共産党だ。

暴言投稿でも明らかとなった歪んだ階級意識

村井氏の暴言投稿をさらに深掘りしてみよう。

この投稿は、ALPS処理水の海洋放出に反発した中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止したことに対し、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が「安全でおいしい日本のお魚をたくさん食べて中国に勝ちましょう」とXに投稿したことへの村井氏の反論だった。櫻井氏は7日の投稿で、櫻井氏に共感した友人の金美齢氏が『高島屋で新鮮な魚を買ってきたわよ』と話してくれたことを「嬉しいですね」と書き込んでいたが、村井氏はこのエピソードに反発したのだ。

もちろん、高島屋に汚染された魚が売られているはずもなく、その上、裕福な人しか来店しないかのような言い方は、古参の共産党員である村井氏の歪んだ階級意識が生んだひがみ根性の表れでしかない。庶民の味方アピールをしたかったのかもしれないが、高島屋にとってはとんだとばっちりで、業務妨害にもなる信用棄損である。

小池氏は村井暴言のこの部分に何も触れず、高島屋への謝罪もなかった。西武百貨店の従業員のストライキに連帯を表明した共産党だが、高島屋の営業や従業員の生活のどうでもいいのだろうか。

“謝罪”に見せかけた悪質な風評加害

村井氏は小池氏に指示された謝罪文を 8日の深夜にXとは別の自身のブログに掲載している。

「私、村井明美が櫻井よしこ氏のツイートに対して、不用意に『汚染魚』と表現し、不適切なコメントを発信したことについて、心よりお詫び申し上げ、ツイートを削除いたします」

「汚染魚」表現は「不用意」だと言うのだが、高島屋の件を含め、X投稿の意図については何も反省していない。

村井氏はブログの中で 「今回の『アルプス処理水』は、120あるといわれる放射能汚染物質をすべて除去しているものではありません。今後どのような影響が出るかわからないのに、魚を食べようといわれ、放射能の犠牲となった私の周りの同級生や同窓生、祖父や担任の先生の死がフラッシュバックし、感情的になってしまった」というのだが、広島原爆の被爆者から放射能の恐ろしさを聞いて知っているはずなのに、X投稿では櫻井氏らにむかって「 どうぞ、もっとしっかり汚染魚を食べて、10年後の健康状態をお知らせください」などと、〝病気になれ〟と呪いの言葉を投げかけており、この呪いを村井氏は取り消してはいないのだ。「ノーモア・ヒバクシャ」を願う広島の人々はどう思うだろうか。

しかも「汚染魚」は取り消したものの、魚について「今後どのような影響が出るかわからない」など言い換えており、これでは実質「汚染魚」と変わりはない。〝謝罪〟に見せかけて、日本近海の漁業に対して悪質な風評加害を続けているのだ。

除染の努力と帰還の願いを真っ向から踏みにじる

埼玉・川口市の藤島朋子市議のポスト

日本共産党の党員や党議員による風評加害は村井氏だけではない。埼玉・川口市の藤島朋子(ふじしまともこ@fujishimatomoko)市議は、9月12日のXに次のような投稿をした。

「福島原発の周辺には人が住めなくなった広大な土地があるので、そこに大型タンクを作ったり、モルタル化したり、手段はまだあるので、海洋放出なんてしなくてもまだ国内で収めておけたのです。なのにわざわざ岸田政権は国際問題になるような選択をしたのです」

東京電力が管理する福島第一原発の敷地内はすでに処理水タンクでいっぱいの状態だが、藤島市議は、原発敷地外の周辺の土地にまで拡張すればよいと主張しているのだ。

だが、原発周辺の土地を含め、福島では2020年代中にすべての帰還困難地域を解消することに向けて現在、懸命の除染作業が進められている最中だ。

藤島市議の「人が住めなくなった広大な土地」発言は、こうした福島の人々の除染の努力と帰還の願いを真っ向から踏みにじるものだ。

藤島市議に多くの非難が向けられたのは当然だ。「リベラル派」と見られているジャーナリストの江川紹子氏ですら9月12日のXで「あなたにとっては、それが『合理的』なのかもしれませんが、この地をふるさとと感じている人に、どういう意味を持つのか思わないのでしょうか。共産党の方の最大の欠点は、主義主張=頭が膨らみ過ぎて、人の心への想像力が及ばないことではないでしょうか」と、藤島市議や共産党を強く批判している。

全国から寄せられた非難や抗議の声に対して、藤島市議は9月14日のXで「博識で福島に心を寄せる人達が沢山いるのに意外なくらいに政府、東電を批判しないですし、政府、東電を批判する人を非難しますね。『体制批判は罪』『自分は普通』『自分は大丈夫』と思っておられるのでしょうか?思想は自由ですが、これから育ちゆく日本の子ども達のことを考えほしいです」と、寄せられた善意の科学的助言について「博識」と嫌味を言ったうえ、無反省な〝反論〟を書き込み、風評加害に反対する世論を逆なでした。

目的は、政治対立をあおることだけ

「子ども達のことを考えてほしい」と自分が〝子ども想い〟であるかのように装う藤島市議だが、これらの投稿に先立つ9月8日のXでは「大人がどんな嘘をついたって真実は子どもの心身の上で病気となって現れてくる」と書き込んでいる。ここでの「大人の嘘」とはALPS処理水についての政府や東電の説明のことを指しているのは明らかだ。処理水を科学的根拠もなく有毒であるかのように言うのも問題だが、「子どもの心身」を自分が主張する有毒性を証明するための“試験紙”のように扱っていることは人権侵害も甚だしい。

子どもの「病気となって現れてくる」との発言は、村井明美氏の「汚染魚を食べて、10年後の健康状態をお知らせください」という発言とまったく同趣旨で、共産党が宣伝している「放射能の危険性」なる主張は、国民の健康を守ることが目的ではなく、政治対立をあおることだけが目的だということははっきり示されている。

驚きのポエム! 福島を貶める差別表現を平気で使う

約2時間で削除された日本共産党仙台青葉地区委員会のポスト

9月16日には日本共産党仙台青葉地区委員会(@jcpSENDAIaoba)が「汚染水の海洋放出に反対します」と題したポスター風の画像をXに投稿した。画像は海辺で遊ぶ幼い二人の男児の写真に次のようなポエムが添えられている。

「初めての海/楽しかったね/でも/もう最後なの?/もう海には入っちゃダメなの?/お兄ちゃん/お魚さんはいいの?/僕も悲しいよ。/魚も海も地球も」

この画像は同日の13時38分に投稿されたが、瞬く間に非難が殺到し、数時間後には削除された。投稿主は削除理由を明らかにしていないが、「お魚さんはいいの?」の部分が、小池書記局長の「魚が放射性物質によって汚染されているということは、わが党の認識と見解に反する」とした説明と矛盾するからだと考えられる。なぜなら、同日の20時8分に同じ画像を再投稿したが、ポエム部分から魚に関する記述を削除し、「『当事者の理解なしにいかなる処分も行わない』って約束したんよ/お兄ちゃん/約束は守らないとだめだよね」と書き直しているからだ。だがこの書き直しで、およそ子どもが口にしないような政治的発言を小さな子に言わせたような形になり、「政治に子どもを利用するな」など、一層はげしい非難を浴びることになった。

それでも共産党仙台青葉地区委員会は反省せず、同日に別の画像を投稿している。画像には「ALPS処理水 海洋放出に反対します」との表題がついているが、問題なのはその英訳として「Stop Fukushima Water Release Now」との表記が添えられていることだ。

共産党は ALPS処理水を「汚染水」と言い続けているが、それと同時に福島の地名と結び付けて「汚染水=福島の水」と名付けていることになる。

「Fukushima Water」は福島を貶める差別表現である。しかし、これまでに共産党はこの投稿を削除することはなく、なぜ、この表現を用いたのかという説明すらしていない。それどころか、一部の海外報道で同様の表現が用いられていることを示す他者の投稿を引用して、正当化しようとさえしている。

そこまでして共産党は福島を「穢れの土地」にしたいのかと怒りを禁じえないが、これを過去の共産党の態度と比較してみよう。

再投稿された日本共産党仙台青葉地区委員会のポスト
9月8日のポスト

組織的な強い悪意をともなった風評加害

2020年3月12日付けの共産党機関紙「しんぶん赤旗」は、「麻生氏、また差別助長発言」の見出しをつけた記事を掲載した。自民党の麻生太郎副総裁が、新型コロナウイルスについて「『武漢ウイルス』と呼ぶべきだ」と発言したことを非難した記事だ。

同記事は「世界保健機関(WHO)は、特定の地域や民族に対する差別や経済的な悪影響を防止する観点から、感染症の病名に地名を使わない方針を定めています。『武漢ウイルス』発言は差別や風評被害を助長させる恐れがあります」と書いている。

「武漢ウイルス」は差別や風評被害を助長させると言いながら、一方では「Fukushima Water」と福島差別の用語を平然と使い続ける共産党の矛盾した態度には、組織的な強い悪意すら感じてしまう。

〝組織的〟とあえて強調したのは、これらの風評加害発言が、党員個人の考えによるものではなく、共産党が公表している党の政策や志位和夫委員長の公式発言が源泉になっているからだ。

志位委員長を8月22日、ALPS処理水の海洋放出に際して、党の公式見解として、以下の4点に要約される委員長談話を発表している。

①汚染水の海洋放出の決定は、国民・福島県民への約束を投げ捨てるもの。中止を強く求める。
②汚染水はアルプスで処理しても、放射性物質のトリチウムは除去できず、「規制基準以下」とはいえセシウム、ストロンチウムなどの放射性物質も含まれていることを政府も認めており、関係者の同意が得られないのは当然。
③原発建屋内への地下水流入を止めない限り、汚染水は増え続ける。「凍土壁」などが十分な効果をあげていないにもかかわらず、政府は有効な手立てをとっていない。広域の遮水壁の設置など汚染水増加を止める手立てを真剣に講じるべき。
④専門家から「大型タンク貯留案」「モルタル固化処分案」などが提案されている。真剣な検討と対策を行うべき。

以上の4点はいずれも科学とは無縁の一方的な政治的見解に過ぎないのだが、「科学的社会主義」を名乗る共産党の見解はすべて「科学に基づいた政策」と、党員や党議員たちは受け止めている。

①の「約束」の問題にしても、科学によって安全が担保されているのに、その事実を無視すれば、どんな「約束」も成り立つはずもない。話し合いは科学的認識を共有してこそ可能になるが、その科学の認識を妨害しているのが共産党である。

②の党見解は共産党の反科学の態度を如実に示している。「『規制基準以下』とはいえ」という言い方で、トリチウム以外の核種が含まれていることを、ことさら強調し問題視しているが、「基準値以下」なら問題ないとするのが科学的見地だ。

実際、どこの海域の海水にも多くの放射性物質が含まれている。これが高濃度で検出されれば、被ばくを警戒しなければならないが、検出することも難しい「基準値以下」なので、漁をしても海水浴をしても何ら影響されることはない。

「基準値以下」でも問題になるなら、何のための「基準」なのか、共産党員たちは考えてみるがいい。だが、この志位見解をそのまま受けいれて、「汚染魚」「Fukushima Water」など末端の党員・党議員がエスカレートさせているのである。

「大型タンク」「モルタル固化」対案になっていない机上の空論

③の原発建屋内への地下水流入防止策は、いまでも懸命に取り組まれている最中だ。だがその効果が思うように上がっていない現実がある。だからこそ、地下水をALPSで処理した上で、海洋放出する必要があるのだ。共産党の主張は、弱みをあげつらっているだけで、原発事故処理にむけては役に立たないばかりか、足を引っ張るものでしかない。

④の「大型タンク貯留案」「モルタル固化処分案」は、一時的な延命策にしかならず、海洋放出に対案にすらなっていない。しかも、どちらも実施するとすれば、広大な土地を必要とすることになる。藤島朋子川口市議の「人が住めなくなった広大な土地」発言は、この見解から導き出されたものだ。
「大型タンク」も「モルタル固化」も、今後の地下水量が見通せなければ、計画をつくることすらできない。実現可能性は乏しいのだ。それでも共産党は「これが対案だ」と言わんばかりに主張してくる。無理を通すために、③の地下水流入防止策のような無理難題を押し付けるようになる。無理が無理を生む机上の空論が共産党の主張なのだ。

科学を完全に無視! 原発でも態度を180度転換の“前科”

志位委員長は9月13日に出演したラジオ番組の中で「重大な問題は、政府が放出される放射性物質の総量を明らかにしていないことなんです」「いちばん肝心な問題は総量なのに明らかにしていない。これが大きな問題です」と述べている。これも科学を無視した発言だ。先に指摘したように放射性物質は宇宙でも地球上でも海洋でもありふれているので、その総量を問題にしたところでまったく意味がないのだ。被ばくなどの影響を防ぐために重視すべきは、濃度だが、その濃度は放出水においてはしっかり管理され基準値以下に低く抑えられている。

核物理学が専門外とはいえ、東京大学工学部物理工学科を卒業した志位氏が、濃度と総量の違いという算数レベルの科学の基本を知らないはずはない。海洋放出を政治的な材料にするための意図的な策略なのだろう。

共産党はこれまでの歴史の中でも、科学的事実を軽視あるいは無視して、自分たちの組織を守るために矛盾した政治的主張を繰り返してきた。

最近では原子力に対する態度を180度転換したことがあげられる。

2011年3月の東日本大震災と福島原発事故の発生直後の時期まで、社会党とは一線を画し、「核兵器廃絶」と「核の平和利用」が共産党の基本スタンスであった。この政策はある種の合理的な側面を含んでいた。原発事故直後の統一地方選挙でのスローガンは「安全優先の原子力行政への転換を」であった。小池晃氏が知事候補になった2011年の東京都知事選挙もこのスローガンでたたかったのである。今から振り返れば正確な提起であったと思う。しかし、浄水場で放射性セシウムが検出されるなど、放射能汚染に恐怖していた有権者には、科学的な「正確さ」は通用するものではなく、共産党は惨敗した。その直後から共産党は科学も、現実の原子力行政の実態も無視した「原発ゼロ」の政策に舵を切るようになった。党勢を維持するために科学とは無縁の「反原発」運動に身を置くようになったのである。

それより以前の1950年代から60年代にかけては、ビキニ環礁での核実験をはじめとするアメリカの核兵器開発に反対しながら、ソ連、中国の核兵器保有やそのための核実験については「世界平和のために大きな力 」「きれいな核」などと主張して、賛成し擁護してきた。これもソ連、中国の庇護を日本共産党が求めていたからに他ならない。

中ソが対立するようになると、米ソを中心に合意された海洋や大気圏内での核実験を禁止する条約(部分核停条約)に共産党は反対し、激しく妨害した。核兵器開発が遅れていた中国をおもんぱかったのである。

だが、部分核停は大気や海洋の核汚染を止めるために何としても必要な条約であった。今でも60年代の核実験が由来のストロンチウム90など検出され続けているが、共産党の主張が通り、部分核停が実現していなかったら、「汚染魚」は現実となっていたかもしれないのだ。

1965年1月24日、毎日新聞は「〝死の灰〟の声がする」との大見出しで大型の特集記事を掲載した。当時、日本海沿岸の地域を中心に日本全国で、米ソ中の核実験による放射性物質を含むチリ「死の灰」が降下する問題が常態化していたが、記事はその観測の最前線の現場をルポしたものだ。記事中に登場する新潟大学の小山誠太郎教授は「アメリカ核実験の放射能を大量に検出すると左翼の人たちにちやほやされ、逆にソ連に不利なデータを出すと反動呼ばわりもされた」と語っている。科学よりも政治的主張が優先される悪習は今も昔も同じだということだ。

このインタビューをした政治部の志位素之記者は志位和夫委員長の叔父にあたる。志位委員長にいまこそ叔父が核の専門家から聞いた言葉をかみしめてほしいものだ。

松崎いたる

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