火力発電はどうやって電気をつくるの?火力発電所はなぜ海の近くにあることが多いのか【図解 化学の話】

日本の火力発電の割合は

2022年現在、日本の火力発電の割合(図1)は72.5%(石炭27.8%、LNG29.9%、石油3.0%、その他火力11.8%)だそうです。火力発電には、燃料を燃やして熱水をつくり、その蒸気の力で蒸気タービンを回す「汽力発電」、同じくガスタービンを回す「ガスタービン発電」、その2つを組み合わせて電気をつくる「コンバインドサイクル発電」があります。火力発電の基本原理(図2)をイメージすると、まず薬缶でお湯を沸かす。薬缶の口は小さいほど蒸気が勢いよく飛び出す。蒸気の力は圧力。その圧力で風車(蒸気タービン)を回す、となります。実際の火力発電(図3)では、ボイラーでつくられた蒸気は、タービンを回すと復水器で冷却されて水に戻り、ボイラーに送られます。 これがまた蒸気となる。つまり、循環ですね。復水器の水を冷やすには大量の水が必要となるため、火力発電所の立地条件は、海などの水源に近い場所。それに火力発電は、石炭やLNG(液化天然ガス)、石油などを使って火力にするので、運搬に便利な臨海部が適している、というわけです。

火力発電の中でも効率がいいのは、コンバインドサイクル発電です。この発電方式は他の火力発電と同じ量の燃料で、電力を多くつくれるうえに二酸化炭素(CO2)排出量が少ないのです。地球温暖化防止は喫緊の課題なので、小型の発電機を組み合わせて大きな電力を得ることができ、かつCO2削減にも有効なこの方式は大きなメリットがあるようです。実際、日本でいま導入されている最新型のコンバインドサイクル発電は、約62%(低位発熱量基準)の発電効率を実現しているそうで、これは世界最高水準だといいます。「問題は、解決されるためにある」といったのは、日本興業銀行頭取・経済同友会代表幹事を務めた中山素平(1906~2005年)です。けだし名言で、地球温暖化も「解決される」ためにある「問題」と信じたいものです。

日本全体の電源構成と割合(2022年値)

石炭・・・27.8%
LNG・・・29.9%
石油・・・3.0%
その他火力・・・11.8%
原子力・・・4.8%
水力・・・7.1%
太陽光・・・9.9%
風力・・・0.9%
地熱・・・0.2%
バイオマス・・・4.6%

火力発電の基本原理

薬缶でお湯を沸かすと蒸気が薬缶の口から噴き出す。薬缶の口は小さいほど蒸気が勢いよく噴出する。蒸気の力は圧力なのでその圧力で風車を回すというのが基本原理。

火力発電の基本構造

火力発電は、蒸気の圧力で回るタービンが発電機につながっている。発電機には磁石とコイルが装置されており、発電機が回るとコイルの中で磁石が回って電気が発生する。仕事を終えた水は復水器で冷却されてボイラーに戻される。この水がまた蒸気となってタービンを回す循環システムだ。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著

宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!

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