テレビへの露出件数日本一に「マテリアル」の青﨑曹社長に聞いた

青﨑曹マテリアル社長

PRコンサルティング事業をメインとするマテリアルグループ(東京都港区)は、2020年から2022年までの3年ほどの間に4社を傘下に収めた。

どのような戦略のもとに次々とM&Aを実施しているのか。同社の青﨑曹社長に積極策の狙いや出口戦略などについてお聞きした。

PR会社としてテレビへの露出件数が日本一に

-2020年1月にP-NEWS事業を、2021年2月にルームズとフリップデスクを、さらに2022年11月にPRAS(プラス)を買収されました。これらM&Aにはどのような狙いがあったのでしょうか。

この4件は、いずれもマテリアルに足りなかった部分や、まだ持ってなかった機能などを拡充するため、チームとして一緒になって取り組んでいこうとの狙いで実施しました。

特徴的な会社の一つとしてルームズがあります。もともとマテリアルはテレビの情報番組や報道番組へのPRでは強い会社でした。一方、ルームズはドラマのプロダクト・プレイスメント(ドラマなどで出演者に衣装や小物を貸し出す事業)に強い会社でした。

両社が手を組むことによって、PR会社としてテレビへの露出件数は、我々が日本で一番だと言えるような状況を作り出すことができました。これはM&Aの大きな成果だったと思っています。

-P-NEWS事業取得にはどのような狙いがあったのでしょうか。

マテリアルには人を増やしていくことで事業を拡大していくという基本的な考え方がありますが、一方で、そうではない新しい形の収益を作る目的で、PRのプラットフォーム事業をスタートさせようと考えていました。

そうした時に先行して事業としてP-NEWSが立ち上がっていましたので取得させていただきました。この事業は、今はCLOUD PRESS ROOM(クラウドプレスルーム)というサービスとして、いわゆるSaaS(ネット経由で必要な機能を利用する仕組み)のモデルとして運営しています。

-他の2件はいかがですか。

フリップデスク(現マテリアルデジタル)はEC(電子商取引)で物を買う時に、WEBサイトで接客を行うサービスを手がけている会社です。PRによって認知を取るところから最後の購買のところまでをワンストップでクライアントに提供できるようになり、事業の領域が一気に広がりました。

PRASはスタートアップの支援に特化したPR会社です。マテリアルは大手のクライアントが多く、中堅中小はプラットフォーム事業でカバーしていますが、スタートアップの領域は具体的な支援施策を持っていませんでした。

一方、PRASはフリーランスのプロの広報人材をたくさん抱えていますが、社員は少ない会社です。このため大型のプロモーションのイベントなどが発生し、自社のリソースだけでは足りないような時に、マテリアルがカバーできるという補完関係にあります。両社の発展を考えると一緒になるメリットは大きいと思っています。


戦略を変更 同業者のM&Aも

―今後も不足する部分や機能を拡充するためのM&Aを続けられるのですか。

今、ちょうど変革期に来ているのではないかと思っています。PR業界は60年くらいの歴史がありますが、オーナー社長で10人から50人ぐらいの規模でやっている会社がたくさんあります。200社ぐらいあるとされています。この中には事業承継のフェーズに入っている会社も多くあると思っています。こうした会社で我々のビジョンに共感してくれるところがあれば、一緒になってやっていきたいと考えています。

-戦略が変わったのですね。

そうですね。全くの類似の会社と一緒にやっていくっていうのは、これまでは無かったですね。補い合っていける相手とのM&Aでしたが、今後は同業の会社も考えていきます。

―中期経営計画を策定されています。具体的な内容をお教え下さい。

実はIPO(新規株式公開)を控えていることもあって、具体的な数字は出せませんが、過去4年で売上高が2倍になっています。今後はこれを超える勢いで成長したいと考えています。IPOについてもそう遠くない時期に実現できると思っています。

-ところで「LOSS IS MORE」というプロジェクトに参画されています。どのような取り組みなのですか。

LOSS IS MOREは廃棄される素材に課題を感じている人たちと、優れた技術を持つ人たちをつなぎ合わせることによって、新しいプロダクトとして世の中に送り出していくという取り組みです。

今、手がけているのはLOSS IS MORE GINというプロジェクトです。母の日にはカーネーションが店前に並びますが、母の日が終わると大量に廃棄されてしまいます。この廃材と東京の蒸留所をつなぎ合わせることで、廃棄される予定だったカーネーションがお酒という形に変わり世の中に出ていっています。

我々はPRのパートナーとして参画をしていて、この素晴らしい取り組みを広げていくことに協力しています。これによって収益を上げるというわけではありませんが、今後も新しいプロダクトを作っていく時にはPRのパートナーとして支援をさせていただこうと考えています。

青﨑曹マテリアル社長

【青﨑曹氏】
2010年、コーチジャパン(現タペストリージャパン)入社
2011年、マテリアル入社
2019年、マテリアルグループ/マテリアルの代表取締役社長に就任
1987年生まれ、東京都出身

文:M&A Online

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