住宅地 32年ぶり上昇 TX沿線、波及拡大 茨城県内基準地価

茨城県は19日、7月1日時点の基準地価を発表した。住宅地、商業地、工業地などを合わせた全用途の平均は前年比0.4%増え、2年連続で上昇した。住宅地は1991年以来、32年ぶりに上昇。つくばエクスプレス(TX)沿線で地価の上昇が続いているほか、周辺地域にも波及効果が拡大している。

調査したのは全547地点。昨年と同じ調査地点は531地点で、このうち地価が上がったのは、住宅地91地点、商業地24地点、工業地21地点で、いずれも前年の上昇地点の数を上回った。平均変動率は昨年横ばいだった住宅地が0.3%上昇。商業地はプラス0.6%で2年連続、工業地は同1.2%上昇で8年連続の上昇となった。

住宅地で前年から上昇したのは、つくば市が15地点で最も多く、土浦市と神栖市がともに10地点と続いた。92年以来、30年間にわたって上昇地点がなかった水戸市でも、常磐町1丁目、千波町、笠原町の3地点で上昇に転じた。

県地価調査代表幹事の羽場睦夫不動産鑑定士は「TX沿線の上昇が続き、駅前の限られた住宅地でさらなる高値取引が見られるほか、駅からやや離れた地域にも波及している」と指摘。水戸市についても、長期金利の上昇に触れ、「利便性がよく、人気の高い地域で動きが出始めている。県庁所在地でも明るい兆しが見えてきた」と述べた。

商業地ではつくば市6地点、水戸市、古河市、つくばみらい市で各3地点が上昇。工業地は調査した36地点の全てで上昇か横ばいとなり、92年以来、31年ぶりに下落地点はなかった。羽場氏は堅調な工業地について「円安の影響で、企業拠点の国内回帰が進んだ」とみている。

前年から大きく上昇した「変動率1位」は、住宅地がつくば市みどりの東で、TXみどりの駅から2.9キロ地点。商業地は同みらい平駅付近のつくばみらい市紫峰ケ丘1丁目。工業地は首都圏中央連絡自動車道(圏央道)つくば中央インターチェンジ(IC)から4キロのつくば市東光台5丁目だった。

地価(1平方メートル当たり)の上位5位は、前年から大きな変動がなかった。住宅地はつくば市吾妻1丁目が9年連続、工業地はつくばみらい市絹の台4丁目が6年連続で、それぞれ1位を維持。商業地はつくば市研究学園5丁目が初めて単独でトップとなった。

上位5地点は、住宅地の全5地点と、商業地の4地点をTX沿線が占めた。唯一、商業地の4位にJR常磐線水戸駅南口の水戸市宮町1丁目が入った。工業地は上位2位が常磐自動車道谷和原IC周辺、3~5位が圏央道沿線だった。

一方、最も下落率が大きかったのは、住宅地が利根町布川。商業地はJR成田線佐原駅周辺の稲敷市西代で、いずれも人口減少や高齢化が著しく進んだことで、土地需要や集客力が低下したことが要因とみられている。

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