キャンプ場の川辺「洗剤」使い“食器洗い”はマナー違反超えて違法? 河川に「流してはいけない」モノとは

X(旧Twitter)上で話題になった写真。「めずらしい光景」だと良いのだが…(写真提供:向井貴彦氏)

9月後半に入っても厳しい残暑が続いているが、多少の秋の気配も感じられ、近々にも絶好のアウトドアシーズンを迎えることが期待できそうだが、SNS上などではキャンプ等のアウトドアを楽しむ人たちの「マナー問題」がたびたび物議を醸す。

2021年にX(旧Twitter)上で話題となったのは、「河川で直接台所用洗剤を使う人」を捉えた写真付きの投稿だ。

調理道具や食材のあまり、花火などの「ごみ放置」は頻繁に話題になるが、河川で堂々と洗い物をする人の姿には「ありえん」「こういう人が本当にいるとは…」と“絶句”コメントが多く集まった。

さすがにめずらしい光景であってほしいが、実際はどうなのか。

河川敷の“野営地”でキャンプをすることが多い都内在住の30代男性(キャンパー歴20年)は、「キャンプ場に隣接する川で洗い物をする人はいますし、少数ではありますが、いまだに(キャンプ用ではない)泡の立つ洗剤を使用してる人もいるんですよ」と証言する。

河川への合成洗剤“放流”が横行しているとすれば由々しき事態。マナー違反どころか、何らかの法令には違反しないのだろうか。

「流しても良いもの」はない?

まず、台所用合成洗剤を河川に流す行為について、環境省の水・大気環境局の担当者は次のように警告する。

「洗剤に含まれる界面活性剤の一部については、水生生物に対して悪影響を及ぼす可能性がありますので、、直接河川に流さないようにしてください」。

合成洗剤の他、キャンプ中には「野菜くず」「飲み残した飲み物」「子どもやペットのふん尿」なども周囲の視線を気にしながらも流す人がいるかもしれない。しかしこれらもマナー違反どころか禁止されている行為だ。

「食べ残し、油、ジュース、牛乳などを河川に流すと『生物化学的酸素要求量(BOD)』という水中の汚れ(有機物)を示す指標が高くなります。有機物を微生物が分解するのに酸素を多く消費し、悪臭の発生や魚の大量窒息死が起こるなど環境への負荷が大きくなってしまいます。

水域にふん便を流すことは『BOD』が高くなるだけでなく、病原性の細菌やウイルス等が広がってしまう可能性があるため、公衆衛生の観点からもふさわしくありません」(同前)

このように直接河川を汚す行為はもちろん、河川敷に放置した炭や花火などのごみも、増水時や雨天時には河川に流れ水質や堰などの河川管理施設に影響を及ぼすことはいうまでもないだろう。前出の環境省担当者は、たとえ自然に返る野菜くずなどであっても「持ってきた物はすべて持ち帰る」ことを徹底してほしいと呼びかける。

「河川区域」へのごみ捨て行為は違法

なお河川敷などを含む「河川区域」に廃棄物を捨てる行為は、「河川法施行令」(第16条の4)で禁止され罰則(3か月以下の懲役、または20万円以下の罰金)も規定されている。

また、河川敷や公園、キャンプ場は「廃棄物処理法」においても“公共の場所”であるとされ、「汚さないようにしなければならない」(同法第5条)と定められており、廃棄物を不法に投棄すれば5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金あるいはその両方が科せられる(同法第16条)。

環境省は廃棄物について、以下のように定義している。

・ごみ、粗大ごみ、汚でい、廃油、ふん尿その他の汚物またはその排出実態等からみて客観的に不要物として把握することができるもの
・固形状から液状に至るすべてのもの
(廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について 環整43号)

さらに河川敷によっては自治体・管理者らが、ごみの持ち帰りに関してなど別途ルールを定めているところもある。キャンプの際は、訪れる前に自分が行く場所のルールを確認しておくこともマナーのひとつというべきだろう。

アウトドアは「情報収集」から

自身もキャンプを趣味にしているという前出の環境省担当者は、アウトドアにおける事前の「情報収集」の大切さについても話してくれた。

「天気予報や道の下調べと同様に、遊びに行く場所の情報も事前に調べます。もしトイレがなさそうな場合には簡易トイレを持っていきますし、水道等がない場所でバーベキューは難しいので、バーベキューをしたい場合は場所や計画を変更します。

出先でのごみや洗い物を少なくすることも考えています。たとえば食材の下ごしらえは家で済ませ、タッパーに入れて持ち運ぶ。これだけで野菜の切りくずやプラスチックトレー等のごみは出なくなり、包丁やまな板などの洗い物も無くなります。調味料類も必要な量だけ持参すれば、不意の風雨や野生動物による“意図的ではない”ごみ等の廃棄や河川への流出も防げます。

キャンプ場にトイレや水道、ごみ捨て場があるのは当たり前ではない、ということを前提に遊びの計画を立ててほしいです」

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