長崎原爆資料館リニューアル 若年層への伝え方議論 10月以降、基本計画素案を提示

若い世代に向けた展示の在り方について提言した中村委員(中央)ら=長崎市、長崎原爆資料館

 2025年度の長崎原爆資料館(長崎市平野町)リニューアルについて、同館運営審議会小委員会は19日、第3回会合を開き、若い世代に向けた展示の在り方を議論した。長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)准教授の中村桂子委員が「自分事」や「双方向発信」などをキーワードに、方向性を提案した。長崎市は10月以降の次回会合で、リニューアルの基本計画素案を示す。
 今回のテーマは「未来志向の展示」。中村氏は必要な四つの要素として(1)自分事として捉える(2)双方向発信の強化(3)次の学びにつなげる(4)人と情報がつながる「ハブ」-を挙げた。
 中村氏は、被爆前の日常の写真を集めて教材にするレクナのプロジェクトを紹介し、(1)について「今を生きる私たちと(被爆前の日常の)共通項を見いだせるような展示にすると、原爆被害が単なる数字ではないと想像することにつながるのでは」と述べた。核兵器問題は現代の課題であり、来館者に「あなたはどうするのか」と問いかける工夫も必要だとした。
 (2)の双方向性について、来館者が展示を見た後に感想などを共有、発信する場をつくったり、資料館スタッフが展示に込めた思いを語る「バックヤードツアー」を開いたりすることを提案。今後、リニューアル内容を具体的に決める過程に、若い世代に参加してもらう必要性も指摘した。
 長崎大多文化社会学部教授の西田充委員は「核問題は抽象的な問題と捉えられやすい」と指摘。若い世代は気候変動やジェンダー、貧困などの問題への関心が高いため、西田氏は「例えば核戦争が起きれば気候変動に直結し、貧困にもつながる。そうしたグローバルな問題と、核問題のつながりを示すことも重要」と語った。

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