Vol.70 ドローンとChatGPT[春原久徳のドローントレンドウォッチング]

ChatGPTは生成AIの一種であり、人工知能チャットポットである。対話型で、いわゆるプロンプトといわれる言語で使える手軽さもあり、急速に各業務分野でも活用され始めている。

ドローン関連の技術においても、今までもAIは様々なところで使われてきた。代表的な例は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)といった技術でのデータ構成に関してはAIの技術が使われてきている。

ChatGPTはドローン産業にどんな影響を与えるか

よくある手法だが、ChatGPT3.5に「ChatGPTはドローン産業にどんな影響を与えるか」を聞いてみた。

以下が回答。

ChatGPTは2021年9月までの情報に基づいてお答えしますが、ドローン産業におけるChatGPTの影響についていくつかの点を考えることができます。
自律飛行の改善:ChatGPTのようなAI技術は、ドローンの自律飛行能力を向上させるのに役立つ可能性があります。ドローンは環境データや制御システムに関する情報を収集し、リアルタイムで判断を下す必要があります。ChatGPTの自然言語処理能力を活用して、ドローンが状況に応じた判断をより正確に行えるようにすることができます。
ドローンのユーザーインタラクション:ChatGPTは人間とコミュニケーションを行う能力を持っています。これを利用して、ドローンの操作やユーザーとの対話が簡素化される可能性があります。ユーザーは自然な言語でドローンに指示を出すことができ、より直感的な操作が可能になります。
ドローンの任務計画と監視:ChatGPTは大量のデータを処理し、複雑な情報を分析する能力があります。この能力を活用して、ドローンの任務計画やデータ収集の最適化、環境監視などが向上する可能性があります。例えば、自然災害の監視や農業の効率向上に役立つでしょう。
カスタマーサポートとトラブルシューティング:ChatGPTは顧客とのコミュニケーションを補完するツールとして利用できます。ドローンのユーザーが問題に直面した場合、ChatGPTを介してサポートを受けることができます。トラブルシューティングや操作の説明などが含まれます。
法的・倫理的側面:ドローンの運用には法的および倫理的な課題が多く関連しています。ChatGPTの活用により、これらの課題に対処するためのアドバイスや規制の策定に役立つ情報が提供される可能性があります。
ただし、AI技術の導入にはセキュリティ、プライバシー、倫理的な懸念事項が伴うことがあるため、慎重なアプローチが必要です。また、最新の情報に基づいてドローン産業の発展を追跡し、新たな技術や規制がどのように影響を与えるかを常に考慮することも重要です。

さすがの回答であり、「ChatGPTのドローン産業の影響」に関して、考える基準をそこに与えている。

しかし、「ChatGPTのドローン産業の影響」を考える際に一番の考慮点は、ChatGPTがオンラインのツールであるということである。

現在、ドローンに搭載可能なLTEモジュールは提供され始めているものの、その通信の接続信頼性は環境にもよるが、まだ高くない。(Starlinkなどの衛星通信の導入が今後それを改善するかもしれないが、現状ではアンテナの大きさなどが課題となっている。)

ChatGPTの活用範囲

ドローンでの活用範囲ということを考えた場合、その内容は「機体制御」「機体管理」「情報処理」の3つに分類される。

「機体制御」に関しては、現状では先ほど記したインターネットへの接続信頼性の課題もあり、飛行中のアクションに対して、ChatGPTを組み込むのは、まだ難しいだろう。

「機体管理」での活用

「機体管理」に関しては、活用可能性は多く考えられる。例えば、「運用計画の策定」や「飛行ルートの最適化」「機体ログの解析」などである。

「飛行ルートの最適化」で検証してみたい。

「飛行ルートの最適化」での検証

ChatGPTへの質問

ドローンの安全で効率的な飛行経路を作成してください。また、その時の飛行時間と飛行距離を算出してください。
飛行高度 60m
上昇、下降スピード 3m/s 飛行スピード 8m/s
離陸地点 緯度, 経度(35.568434228707396, 139.24106621234398) 着陸地点 緯度, 経度(35.56899275886209, 139.19986748391884)

ChatGPTの回答

ドローンの安全で効率的な飛行経路を作成し、その際の飛行時間と飛行距離を算出するためには、次の手順に従います。
離陸地点と着陸地点の緯度と経度を使用して、直線距離(ユークリッド距離)を計算します。これにより、最短距離を飛行する場合の基本的な情報を得ることができます。
離陸地点(A):(35.568434228707396, 139.24106621234398) 着陸地点(B):(35.56899275886209, 139.19986748391884) 直線距離(ABの距離) = sqrt((35.56899275886209 - 35.568434228707396)^2 + (139.19986748391884 - 139.24106621234398)^2)
上昇と下降にかかる時間を計算します。飛行高度が60メートルで上昇/下降スピードが3メートル/秒の場合、上昇と下降にそれぞれ30秒かかります。
飛行にかかる時間を計算します。直線距離を飛行速度で割り、上昇と下降にかかる時間を加えます。 飛行時間(秒)=直線距離/飛行速度+上昇時間+下降時間 飛行時間(秒)=(直線距離/8)+30秒+30秒
飛行距離を計算します。直線距離をメートル単位で取得します。
これらの計算を行うと、ドローンの安全で効率的な飛行経路にかかる飛行時間と飛行距離が求められます。計算結果は以下の通りです。 直線距離(ABの距離):約4510.62メートル 飛行時間:約582.58秒(約9分42.58秒) 飛行距離:約4510.62メートル これは、ドローンが離陸地点から着陸地点まで安全かつ効率的に飛行するための基本的な計算結果です。ただし、実際の飛行経路は地形や障害物、制約によって変化する可能性があるため、適切な飛行計画を策定し、ドローンの飛行を管理することが重要です。

非常にシンプルな内容であるが、大枠の飛行計画の内容を把握することが可能だ。

ChatGPT4以降であれば、地図情報や気象情報を使用するライブラリや航行ルート作成ソフトウェアと連動する形で、プログラミングも可能になっているため、強風などの気象情報との連動や山やビルなどの建物との連動も可能になり、より現実に即した「飛行ルートの最適化」が可能になってくる。

「機体ログの解析」での検証

ChatGPTへの質問

ArdupilotのDataFlashLog内のDes PitchとPitchの数値の差がある場合にどんなことが考えられますか?また、どのぐらいの差があると異常という判断になりますか

ChatGPTの回答

ArdupilotのDataFlashLog内で"Des Pitch"と"Pitch"の数値に差がある場合、これはドローンの飛行パフォーマンスに関する情報を提供しています。以下は、この差異に関する一般的な考えられる理由と異常の判断についての情報です:
Des PitchとPitchの説明: "Des Pitch"(目標ピッチ):この値は、ArduPilotがドローンに適用する目標のピッチ角度を表します。つまり、ArduPilotがドローンをどのようなピッチ角度に制御しようとしているかを示します。 "Pitch"(ピッチ):この値は、実際のドローンのピッチ角度を示します。つまり、ドローンが実際にどのようなピッチ角度で飛行しているかを示します。
差異の理由: 通常、"Des Pitch"と"Pitch"には差異があることが予想されます。これは、コントローラーがドローンを制御し、風や外部要因によってドローンが目標のピッチ角度に完全に到達できない場合があるためです。 また、センサーのノイズ、コントローラーのチューニング、風の影響、ドローンの質量など、さまざまな要因が差異の原因となります。
異常の判断: "Des Pitch"と"Pitch"の差異の評価は、具体的な状況や任務に依存します。一般的なルールはありませんが、異常と見なすかどうかを判断するためには、次の点を考慮できます: 大きな差異が短期間で頻繁に発生する場合、制御系の調整が必要かもしれません。 一時的な差異や小さな揺れは通常許容されますが、大きな差異が持続的に存在する場合、問題の兆候と見なすことができます。
異常として判断する具体的な差異の閾値は、飛行ミッションやドローンの仕様によって異なります。したがって、データを詳細に分析し、問題の特定には専門知識と実地経験が必要です。ドローンの制御パラメータの調整やセンサーキャリブレーションの確認など、トラブルシューティングの手順を追うことが重要です。

今後、具体的なログデータをChatGPTに読み込ませる(学習させる)ことによって、より有効な解析が実現できることが予想される。また、その解析アルゴリズムをプログラミング化することにより、ログ解析の自動化も実施することが可能になるだろう。

また、通信の課題が解決してくることにより、実際の飛行中での環境変化による飛行ルートの変更やまた機体異常に対しての自律的な対応が可能になってくるだろう。

「情報処理」での活用

これまでも、ドローンで取得した「情報処理」の分野でAIは活用されてきた。

特に画像や映像の比較において、データの前処理や補完、また、データの可視化といった用途で、AIが使われてきており、多くのアプリケーションがAIを組み込んできている。

それは「リモートセンシング」や「点検」データにおける解析の分野など、多岐にわたっている。

ChatGPTのような生成AIにおいては、そういった既存のAI用途に加えて、「解析結果の集計作業の効率化」「解析結果のレポートのカスタマイズ化」といった個々の要望において、より細かい対応の処理が可能になるとともに、大きいのはそれを詳しいプログラミング技術がなくてもプログラム化可能になっていくということにある。

また、そこでプログラミング化したアプリケーションをその使い方に詳しくない人であっても、「作業手順の作成」「解析結果の解釈の仕方」など、より使いやすくすることにおいて、ChatGPTが寄与する部分が多くなっていくことだろう。

そして、そのデータが積み重なっていくことで、解析内容に関しての対策に対しての具体的な提案も提示されるようになっていくだろうし、それがより進んでいけば、自動的に対策が施されるようなソリューションも構築されていくだろう。

ロボティクスの一部でもあるドローンとChatGPTなどの生成AIとの連携は非常に相性もよく、効果的なソリューションになっていくこととなっていくだろう。

© 株式会社プロニュース