大宮駅西口、36年連続トップに…埼玉県内の基準地価、全用途で上昇 住宅地の変動率上位3地点は全て川口

埼玉県内用途別上位3地点

 埼玉県は19日、2023年度の基準地価(7月1日現在)を発表した。県平均変動率は住宅地が前年度比プラス1.5%、商業地が同プラス2.0%でいずれも2年連続で上昇。工業地は同プラス2.8%と10年連続で上昇した。住宅地、商業地、工業地の全用途でプラスとなるのは2年連続、上昇幅も拡大した。

 住宅地の1平方メートル当たりの平均価格は前年度比3200円増の11万9400円。最高価格は「さいたま市浦和区岸町3丁目」の54万2千円で、19年度から5年連続で1位だった。変動率は「川口市芝2丁目」が県内トップのプラス7.7%。前年度の変動率上位3地点はさいたま市内だったが、23年度は全て川口市内に入れ替わった。

 浦和駅、川口駅の徒歩圏にある生活利便性の高い地域を中心に価格が上昇。比較的安価な周辺地域にも余波が広がっている。都内に隣接していないものの、春日部市や狭山市などが横ばいから上昇に転じ、上昇地点は昨年度の県内331地点から418地点に増加した。

 商業地の平均価格は前年度比1万2900円増の32万5600円。上位10地点の順位にほぼ変動はなかった。トップの大宮駅西口「さいたま市大宮区桜木町2丁目」は1988年度から36年連続1位の281万円。変動率1位は北戸田駅西口の「戸田市新曽芦原」と戸田駅西口の「同市新曽柳原」がともにプラス7.8%で同率1位となった。

 上昇地点は大宮駅、戸田駅など繁華性の高い地域を中心に昨年度の73地点から91地点に増加。コロナ禍後の期待感で住宅地、商業地ともに7割近くが上昇した。

 工業地の平均価格は前年度比2200円増の7万100円。最高価格は「さいたま市桜区町谷4丁目」で17年度から7年連続。変動率1位は「戸田市笹目南町」のプラス6.7%だった。東京都境の「川口市本蓮4丁目」(同6.1%)、首都高速道路美女木ジャンクション近くの「戸田市美女木北2丁目」(同5.9%)が続いた。

 県内の地価動向に詳しいみつば総合鑑定所(春日部市)の不動産鑑定士、三田和巳氏によると、住宅地はJR京浜東北線沿線の東京都に隣接する地域の駅から少し離れた約1キロ圏でマンションなどの投資需要が拡大。商業地では経済の回復に向けた動きが加速しつつあり、再開発事業の進展が期待される地域やマンション用地と競合する地域で上昇傾向が見られる。工業地は交通の利便性のある地域でインターネット通販の需要を支える大型倉庫など物流拠点の需要が増えているという。

 今後の動向について三田氏は「米国の金利上昇や原油高、ウクライナ情勢の余波などを受けて上昇傾向にあるが、不安定要素も多く見通ししづらい」と判断。その上で、内閣府が発表する景気動向指数との乖離(かいり)があるとして「想定外の株価変動などに注視が必要」と指摘した。

 基準地価は県が調査した土地の基準価格で、県内832地点を不動産鑑定士が評価してまとめた。

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