TX沿線、高値続く 住宅地、駅前以外も 茨城県内基準地価

子育て世帯に人気が高いTX沿線。住宅が立ち並ぶ=つくば市みどりの中央

茨城県が19日発表した県内基準地価は、31年連続で下落していた住宅地が上昇に転じた。上昇率が高い上位10地点は全てつくばエクスプレス(TX)沿線で、駅周辺の高値取引が続くほか、駅から離れた地点への波及効果も出始めた。水戸市でも31年ぶりに上昇地点が見られるなど、県都にも明るい兆しが見えた。

■みどりの駅周辺人気

つくば市は前年から地価が上昇した住宅地が15地点に上り、県内市町村で最多となった。中でもTXみどりの駅周辺の新興住宅地が大きく上昇した。

上昇率の県内1位は、同駅から2.9キロ離れた同市みどりの東39番、2位が同駅から350メートルの同市みどりの1丁目。3位は前年1位だったつくばみらい市陽光台4丁目だった。

みどりの地区の上昇率が高い背景には、TXによる東京都内への交通利便性、義務教育学校の開校、スーパーや飲食店が近いなど、子育て世帯から見て住環境の優位性がある。地価がつくば駅周辺に比べ、低いことも魅力となっているようだ。

開校した市立みどりの学園義務教育学校は、児童生徒が計2千人を超える市内でも有数のマンモス校。小学6学年は約1920人、中学3学年は約350人で、今後も増加が見込まれる。

同校は情報通信技術(ICT)の教育に力を入れており、先進事例として、県内外から教育関係者の視察が相次ぐ。子ども2人を育てる40代主婦は「安心して子育てができる。教育のために引っ越してきた人もいる」と話す。

みどりの地区はTX沿線開発で発展。市によると、面積は292ヘクタール。地区内の人口は約1万5600人。計画人口は2万1千人で、今後も増加傾向が続くとみられている。

地区の児童・生徒数は2026年度に3000人を超す見通し。市は24年4月にみどりの南小・中学校の開設を予定する。

TX沿線地区は子育て世帯が集中して人口が増加する半面、沿線から離れた北部地域の高齢化など課題も残る。市都市計画課の担当者は「市内全域で魅力的な街づくりに取り組みたい」と話し、均衡ある発展を目指す。

■水戸、31年ぶり上昇 県庁周辺で顕著に

水戸市は、常磐町1丁目、千波町、笠原町の住宅地3地点で上昇した。同市で上昇が見られたのは1992年以来、31年ぶり。

特に笠原町は人口増加が顕著で、15年間で約3割増えている。市担当者は「県庁舎があり、周辺はスーパーなどが入る大型商業施設もある便利な場所。近年は宅地造成が進む」(都市計画課)と上昇の背景を説明する。

市公表の町丁別人口・世帯数(推計)によると、笠原町は4月時点で約5530世帯1万2400人と、15年前の2008年から世帯数は35%増、人口は29%増で、都市化が進む。

同町の県庁南側は市街化調整区域ながら、一定要件で住宅などが建てられるエリア指定区域に含まれる。市は昨年10月、宅地化が急速に進んでいるとして、無秩序な開発を防いで良好な居住環境をつくるため、地区計画を定めた。

地価が上昇した常磐町1丁目は、日本三名園の一つの偕楽園が大部分を占め、千波町は千波湖という観光資源がある。県は「緑豊かな住環境で希少性が高い」と分析している。

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