レクサスとの提携が有力視されるASP、WEC参戦が実現ならGTWCヨーロッパの活動を一時休止か

 先週末スペインのバレンシア・サーキットで行われた第8戦バレンシアで、2023年シーズン6勝目をマークしたアコーディスASPチームは、来季のWEC世界耐久選手権への参戦が実現した場合、ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)での活動を一時休止する可能性がある。

 チーム代表のジェローム・ポリカンはSportscar365に対し、LMGT3へのコミットという目標が達成された場合、フランスのGTチームはWECプログラムの最初のシーズンのために、少なくとも1年は並行参戦を行わない意向であることを明かした。

 ASPは2011年の初年度からSROシリーズのグリッドで存在感を示し、エンデュランスカップとスプリントカップの両方で多数のタイトルを獲得している強豪チームのひとつだ。同チームは昨季2022年、ジュール・グーノンとラファエル・マルチェッロ、ダニエル・ジュンカデラを擁してスパ24時間レースを制し、勢いそのままに耐久シリーズでチャンピオンシップを獲得。また、GTWCヨーロッパのオーバーオールでもマルチェッロが王者となり、チームチャンピオンも獲得している。

 そんなアコーディスASPは既報のとおり、WECの新クラスとして2024年に登場するLMGT3で世界選手権にデビューすることを目指し、合意に向けてプッシュしている最中だ。ポリカンは以前、複数のGT3メーカーと交渉していることを明かしており、レクサスがその最有力候補であるとみられている。

 先週末のバレンシアで、ポリカンはLMGT3の契約は間近だが最終決定ではないことを示唆し、次のように付け加えた。「来シーズンのWECに参加していなければ、間違いなく失望するだろう」

 彼は、チームが可能性として挙がるWEC参戦と並行して、現在行っているGTWCヨーロッパのプログラムを継続する可能性は極めて低いと述べた。

「GT2は続けることができる。私にとってGT2はアマチュア選手権と言えるし、WECに参戦してもすべてを止めるわけではないからだ」

「我々はプライベートチームだし顧客もいる。『よし、F1に入ったから、あとは全部忘れよう』とはならないんだ。だが、(WEC参戦)初年度はGT3でGTワールドチャレンジを戦うのは難しいだろう。それが私の意見だ」

 理由を尋ねられたポリカンはWECへのコミットにともなう要求の高さを挙げた。

「確実にプログラムを行うためにはメーカーのサポートが必要だ。プライベートチームとして、この種の選手権では(ロジスティクスの負担が)はるかに高くなるためだ」

「クルマを走らせることは多かれ少なかれ同じだ。6時間や24時間レースだからね。しかしロジスティクスの面ではこれまでと大きく異なる。ミニ・フォーミュラ1のようなものだから人員が必要だし、組織的でなければならない」

「また、より高度なチャンピオンシップにステップアップする場合、たとえレースを知っていたとしても初年度はつねに難しいものだ。だから、集中することと(できるだけ)ミスをしないことを優先したいと考えている」

「WECに挑戦しながらGT4とGT2を続けて、またいつか(GT3で)GTワールドチャレンジに戻ってくる。私にとっては、このやり方が理にかなっているんだ」

「でもWECが簡単だとは言えない。そうではないんだ」

2023年シーズンの8ラウンドを追えた時点で、スプリントカップ4勝、エンデュランスカップで2勝、都合6勝を挙げているアコーディスASPの88号車メルセデスAMG GT3エボ

■シルバーのままなら継続起用を検討

 ポリカンは、ASPがGT3プログラムをGTWCヨーロッパからWECに切り替えた場合に、ティムール・ボグスラブスキーの継続起用を検討していることを明らかにした。

 現在アコーディスASPチームで、スプリントカップとエンデュランスカップの両方でランキングリーダーとなっているボグスラフスキー。彼は2019年からフランスのチームに加わり、近年はメルセデスAMGのワークスドライバーであるマルチェッロとともにGT3プログラムの中核を担ってきた。

 ポリカンは、このロシア人ドライバーがFIA国際自動車連盟から現在与えられている“シルバー・グレーディング”を維持するのであれば、WECでの起用を「確実に検討する」と述べた。

「私にとっては、彼がシルバーのままでいてくれればWECで非常に良い戦力になるだろう」

「なぜなら、彼のパフォーマンスとそれをマネジメントする方法を見れば、彼がGTで最高のシルバードライバーのひとりであることが分かるためだ。今や彼はGTワールドチャレンジで大成功を収めている」

「だから、もしWECに行くなら彼をラインアップに加えたいと考えているが、可能性としては五分五分だろう」

「というのも私は、彼がGTワールドチャレンジのシートを探していることも知っているからだ。先ほども言ったように、このふたつを両立させるのが難しいのは明らかだ。とくに最初のシーズンではね」

「もしWECに行くチャンスがあるなら、まず我々がやらねばならないことは1月の初めにコンテナを持って準備し、カタールに行くことだ」

スプリントカップ4勝目をマークしたラファエル・マルチェッロ/ティムール・ボグスラフスキー組(アコーディスASPチーム) 2023年GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ第8戦バレンシア

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