日本でも活躍したデ・ラ・ロサが語る鈴鹿の難しさと魅力。アストンマーティンが都内でイベントを開催

 9月20日、東京都港区のアストンマーティン青山ハウスにて『Aston Martin Design Seminar』と題されたメディア向けイベントが開催され、F1世界選手権に参戦するアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワン・チームで現在チームアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサが参加。週末に行われる2023年F1第17戦日本GPについて語った。

 1999年にF1デビューを飾ったデ・ラ・ロサは、2012年までアロウズ、ジャガー、マクラーレン、ザウバー、HRTで104戦に出場し、マクラーレン時代の2006年ハンガリーGPで2位表彰台を獲得している元F1ドライバーだ。さらにデ・ラ・ロサは、かつて全日本F3選手権と全日本GT選手権(JGTC)ではトムスで活躍しており、1997年にはフォーミュラ・ニッポンとJGTCでダブルチャンピオンを獲得したことで、日本のレースファンにも馴染みが深いドライバーだろう。

 そんなデ・ラ・ロサは2022年10月からアストンマーティンF1のチームアンバサダーを努めており、コミュニケーションやメディア、PR、マーケティング、プロモーション、コマーシャルといった全般的なアドバイザリー業務を担当しているほか、アストンマーティンF1のドライバー育成プログラムコンサルタントとして、若手ドライバーの選抜やトレーニング、育成サポートも行っている。

 メディアの前に登場したデ・ラ・ロサは「1995年から1997年までの3年間は日本に住んでいたんだ。だから日本は僕の第二の故郷のようなものだから、本当に戻ってこられて嬉しいよ!」と、まずは日本について語った。

「当時はF3、JGTC、フォーミュラ・ニッポンに参戦していた。だから、今言えることは、僕がF1にステップアップすることができたのは日本での3年間のおかげだということだ。日本は僕にとってとても良い国だった。日本での素晴らしい3シーズンはとても幸運だったし、とても感謝している」

F1日本GPを前にしたメディアイベント『Aston Martin Design Seminar』に参加したペドロ・デ・ラ・ロサ

 かつて日本のシリーズで活躍していたデ・ラ・ロサにとって、F1日本GPが開催される鈴鹿サーキットは勝手知ったるコース。デ・ラ・ロサは自身のF1初走行時の思い出を含めて“鈴鹿サーキットの難しさ”を続ける。

「まず最初に言っておかなければいけないことは、鈴鹿に行くと歴史、文化、現代性に直面するということだ。僕はF1で初めて鈴鹿を走ったときのアウトラップを一生忘れることはないだろうね。ピットを出たときにヘルメットのなかで『やった!』と呟いたんだ。というのも、僕が子どものころはF1だけではなくロードレース世界選手権(WGP)も鈴鹿サーキットで開催されていたからだ」

「日本でレースが行われているとき、僕の地元スペインでは朝の4時くらいなんだけど、目を覚ましてレースを見ていた。だから、鈴鹿でF1マシンで鈴鹿の最初の1周を走ったときには『僕は今F1で鈴鹿サーキットを走っているんだ!』と思ったんだ。そして、そこで改めて鈴鹿の難しさやミスのしやすさ、さらにチャレンジングサーキットだということを改めて気付いたね」

ペドロ・デ・ラ・ロサがF1デビューを飾った1999年にドライブしたアロウズA20

 デ・ラ・ロサによると、鈴鹿の難しさはハイスピード区間でクルマの空力を最適化する必要があり、S字区間ではその空力の最適化がもっとも重要な部分だという。さらにデ・ラ・ロサは元F1ドライバーならでの視点で鈴鹿サーキットの難しいながらも魅力な部分を続ける。

「鈴鹿は低速コーナーがあまりなく、高速コーナーが多いから首への負担が多いから体力が必要だ。さらにアンダーステアのクルマでS字を通過するときは、マシンのバランスが良くないとアクシデントに巻き込まれるだろうね。それなぜかと言うと、鈴鹿は非常に狭いサーキットだから正確なライン取りが求められる。そして少しでもオフラインに行くとグリップがなくなりグラベルに出てしまう」

「鈴鹿はそういったコースで、セカンドチャンスをドライバーに提供しない。でも、それこそが鈴鹿の魅力であり、チャレンジングサーキットと言われる所以なんだ。僕たちレーシングドライバー全員にとって、鈴鹿は本当に美しいサーキットだと思っている」

「S字区間では空力の最適化がもっとも重要」とデ・ラ・ロサ

■無得点に終わった前戦の「失敗から学び」F1日本GPへ。最後には日本語で挨拶

 そして、話題はいよいよ今週末に迫ったF1日本GPについて。前戦シンガポールGPではランス・ストロールが予選大クラッシュにより決勝レースを欠場し、フェルナンド・アロンソは予選で7番手につけたものの決勝は15位に終わり、今季初のノーポイントとなった。

 デ・ラ・ロサは、シンガポールGPはアストンマーティンF1にとって「非常に難しいグランプリ」だったと振り返るも、チームはすでに2連戦の日本GPへ照準を向けていると意気込む。

「どんな組織であっても『失敗から学ぶこと』は重要だ。シンガポールでは僕たちが十分にできなかったことが多く存在していたし、レースの序盤からマシンに技術的な問題もあったなかでベストを尽くした。だが、我々は悲観的には見ていない」

F1日本GPを前にしたメディアイベント『Aston Martin Design Seminar』に参加したペドロ・デ・ラ・ロサ

「シンガポールと鈴鹿のコースはまったく違っていて、鈴鹿はシンガポールよりもかなりスピードが速く、高速域のバランスが非常に重要なサーキットだ。特に第1セクターのS字区間は非常にスピードが速いなかでコーナリングする必要があるからマシンを最適化しなければならない」

「さらにシンガポールと日本GPは連戦のためスケジュールはかなりタイトだ。そのために我々はシミュレーターやファクトリーで鈴鹿をシミュレートするために懸命に働いてきた。だから、僕たちはレースに向けて十分な準備ができているはずだから、日本GPでは多くのポイントを獲得したいと思っている」

 最後には集まったメディアに対して『ガンバリマス』と日本語で挨拶を行ったデ・ラ・ロサ。ちなみに、今季からアストンマーティンF1に加入した同じスペイン出身のアロンソについては「僕の年齢でもフェルナンドから新しく学ぶこともある」と語り、チーム躍進の原動力になっているようだ。

 アストンマーティンF1は、昨年のF1日本GPでセバスチャン・ベッテルがスタート直後のコースアウトによる最後尾から6位入賞を果たしているだけに、相性も決して悪くないはず。シンガポールGPで大クラッシュを喫してしまったストロールの状態が気になるところだが、“アストンマーティンF1初鈴鹿”を迎えるアロンソとともに上位争いを繰り広げてほしいところだ。

アストンマーティン青山ハウスに展示されたF1マシン
アストンマーティン青山ハウスに展示されたフェルナンド・アロンソ用のレーシングスーツとグローブ、ヘルメット
アストンマーティン青山ハウスに展示されたフェルナンド・アロンソ用のヘルメット
『Aston Martin Design Seminar』ではアストンマーティンのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、マレク・ライヒマンによるデザインセミナーも行われた
アストンマーティンの市販車におけるデザインポイントを説明するマレク・ライヒマン

© 株式会社三栄