プロ野球の阪神が独走でセ・リーグを制した。18年ぶりの優勝をキーマンのインタビューで振り返る。第1弾は近本光司外野手(28)。死球によるけがで戦列を離れた時期もあったが、1番打者として打線を引っ張った。(共同通信=原嶋優)
―今年の阪神の野球を振り返っていかがですか。
「若い勢いじゃないですかね。大竹、村上、野手でいったら森下。あの子らが活躍してくれたら、勢いにも乗るだろうし。僕とか大山とか中野とかが打っても、当たり前やろって思われるようになってきている。(佐藤)輝とか、森下が打ってくれたらどんどん勢いがついてくるので、それが今年のいい流れだったのかなと思います。だからどんどん調子に乗ってもらいたいですし、どんどん打ってもらいたいですね。あんまり気負わず、勝敗とかの責任を負わずに」
―チームが首位を走っていたことでやりがいは増しましたか。
「あまりやっている時は感じないんですけど、ふと客観的に見た時に、ああ強いなって思うのはよくありますね。1点差のゲームを勝ちきることもそう。『同点まではOK』っていうのが監督の考えですが、じゃあ引き分けが多いかというとそうではなくて、しっかり勝ち切れていた。誰かが絶対やってくれるなというのはすごく感じていたので。その場面、その状況で、その時に立っている人が抑える、打つという仕事をしっかりできているなとすごく感じますね」
―近本さんの理想の1番打者は。
「理想に引っ張られる必要はないと思います。最初は2塁打で出て、バントで進塁して1点っていうのもイメージしましたけど、別に2塁打を打たなくてもいい。シングルでもいいし、2塁打でもいいし、フォアボールでもいいし、ホームランでもいいし。選択肢がいっぱいあった方がいいと思う。そこは理想がなくてもいいのかなって思いますし、理想がないところでいろんな選択肢ができる。理想というのはあんまりないのが理想ですかね」
―出塁にはこだわっていると思いますが、四球を選ぶ意識は強かったですか。
「シーズンに入る前からボール球を振らないことは決めていました。その結果がフォアボールにつながったというだけだと思います。僕はフォアボールの数はそんなに気にしていないです。ヒットだったとしても『うわっ、今のボール球やったな』というのはすごく思ったりします。そこをわざわざ打たなくてもよかったんじゃないかなとか、もうちょっと(打ちにいく)ゾーンを狭めてもよかったなというのは、振り返るときに出てきたりします」
―開幕前にボール球を振らないと決めたというのは、昨年までの自分を分析した上でのことですか。
「4月の1カ月をどうしようかなと。(昨季まで)4年間あまりよくなかったので、一応『4月もできるんやで』というところも見せないといけないなと思っていました(笑)。結果が出ていないとやっぱり力んじゃうので、ボール球に手を出してしまう。少々ボールでも、ヒットにできると思ったらヒットをうちにいっちゃう。そういったところをちょっと我慢してみようかなとやってみたら、結果が良かった。じゃあ、今年はこのまま続けてみようと。来年もボール球を振らないというのは継続すると思うんですけど、それ以外はそんなに頑張らなくても、勝手に結果がついてくるもんだと思っています。ボール球を振ってるか振ってないかという判断だけでいこうかなと思っています」
―夏場には死球で肋骨を骨折し戦列を離れる経験もしました。
「離脱するということが今までなかったので、その葛藤はありましたけど、これはどうしようもないこと。この休みを僕の中でどういうふうに捉えるか。振り返った時に、いい休みだったなと思いたいので。あの死球がなければ、ということにはしたくなかった。あの3週間をいい休養だったと思えるように、より意識的にやっていましたね。今思えば、あの3週間があったから後半もしっかり頑張れたと思っています」
―岡田監督の考えは浸透しましたか。
「こうなったら、こう(指示を)出すやろうなと分かってきているので、それを浸透しているというなら浸透しているでしょうね」