【ラグビー】陸の王者たるや最終盤に劇的勝利 追い続けた“楕円球”は慶大に味方/関東大学対抗戦 第2節 対 立大

2023年9月17日(日)関東大学対抗戦Aグループ 対立大戦 @アースケア敷島サッカー・ラグビー場

○慶大 28{6―0、22―21}21 立大●

互いに得点が入らない前半の39分、永山のペナルティーゴールで3点を先制し、この試合の均衡を破る。42分には相手ボールのスクラムでプレッシャーをかけ、ノットリリースザボールを勝ち取ると、永山が再びペナルティーゴールを決め、6−0で前半を折り返す。後半は、30分過ぎまでは完全に立大のペースで、3トライ3ゴールを決められ最大15点のビハインドを負った。しかし、39分の冨永のトライを皮切りに、10分間のロスタイムで脅威の粘り強さを発揮。50分には永山のペナルティーゴールで追いつくと、最後はラインアウトからモールで酒井がトライ。慶大は激戦にも程がある激戦を制した。

関東大学対抗戦Aグループ 第2節
慶應義塾大学	2023/9/17(日)12:30 K.O.	立教大学
前半	後半	ロスタイム:10分	前半	後半
0	3	トライ(T)	0	3
0	2	コンバージョン(G)	0	3
2	1	ペナルティゴール(PG)	0	0
0	0	ドロップゴール(DG)	0	0
6	22	計	0	21
28	合計	21
前半39分 永山(PG)	得点者	後半7分   北川(T)
慶應義塾大学
#	氏名	身長(cm)/体重(kg)	学年学部	出身校
1	成田 薫	183/104	経3	慶應
2	中山 大暉	176/102	環3	桐蔭学園
3	岡 広将	173/107	総4	桐蔭学園
4	シュモック オライオン	181/100	環4	Mount Albert Grammar School
5	中矢 健太	184/104	総3	大阪桐蔭
6	樋口 豪	174/98	文4	桐蔭学園
7	富田 颯樹	173/93	経4	慶應志木
8	冨永 万作	187/102	商3	仙台第三
9	橋本 弾介	169/77	法2	慶應
10	永山 淳	188/94	総4	國學院久我山
11	佐々 仁悟	173/80	総4	國學院久我山
12	三木 海芽	167/83	総4	徳島県立城東
13	山本 大悟	174/87	環2	常翔学園
14	大野 嵩明	177/80	法4	慶應
15	今野 椋平	183/86	環2	桐蔭学園
16	酒井 貴弘	169/98	商4	慶應
17	木村 亮介	173/103	環4	慶應
18	小松 秀輔	177/105	環4	名古屋
19	藤井 大地	181/98	経3	慶應
20	本郷 海志	171/93	経4	慶應志木
21	森 航希	170/74	環1	桐蔭学園
22	磯上 凌	172/81	商3	青山学院
23	石垣 慎之介	176/81	政2	慶應志木
立教大学
#	氏名	身長(cm)/体重(kg)	学年学部	出身校
1	八代 デビット太郎	180/110	観3	京都成章
2	三村 真嶺	178/98	コ3	東海大大阪仰星
3	佐久間 翔梧	181/112	法2	桐蔭学園
4	島﨑 太志	188/103	法2	桐蔭学園
5	手塚 一乃進	187/108	コ4	足立学園
6	日野 幹太	181/95	経2	立教新座
7	羽間 圭司	175/95	経4	東海大大阪仰星
8	仙臺 蔵三郎	176/90	観2	立教新座
9	北川 時来	170/87	現4	國學院久我山
10	中 優人	181/87	観3	桐蔭学園
11	大畑 咲太	178/81	観1	東海大大阪仰星
12	佐藤 侃太朗	176/85	文2	國學院久我山
13	福壽 佳生	176/85	経4	立教新座
14	太田 匠海	176/80	文4	京都成章
15	天羽 秀太	170/75	コ4	桐蔭学園
16	二木 翔太郎	175/100	観4	立教新座
17	大上 翔	175/100	観2	京都成章
18	坂本 裕樹	177/114	営1	立教新座
19	白石 和輝	178/92	営2	國學院栃木
20	角田 龍勇	170/89	営2	Hamilton Boys’ High School
21	伊藤 光希	164/70	社3	桐蔭学園
22	江田 優太	178/87	理3	川越東
23	相田 快晴	172/80	経4	立教新座
慶應義塾大学	立教大学
101.3kg	FW平均体重	101.4kg
810kg	FW合計体重	811kg
178.9cm	FW平均身長	180.8cm

◎交替/入替

慶應義塾大学
種別	時間	IN	OUT
交替	前半21分	23・石垣	15・今野
交替	後半12分	22・磯上	23・石垣
一時交替	後半23分→	18・小松	3・岡
入替	後半30分	17・木村	1・成田
入替	後半40分	16・酒井	2・中山
入替	後半40分	19・藤井	5・中矢
入替	後半43分	20・本郷	6・樋口
立教大学
種別	時間	IN	OUT
入替	後半30分	21・伊藤	9・北川
入替	後半30分	20・角田	5・手塚
入替	後半34分	17・大上	1・八代
入替	後半40分	16・二木	7・羽間
入替	後半57分	18・坂本	3・佐久間
入替	後半57分	22・江田	12・佐藤

初戦で悔しい負け方を喫した慶大。その悔しさを晴らすべく迎えた相手は立大。春季大会では慶大が零封して勝利を収めているものの、慶大と筑波大の春秋の戦いを見れば、過去の結果などまるで関係ないことが分かる。それに、立大は初戦の早大戦、前半25分まで早大の攻撃を抑え込み、むしろ中のキックを中心にボールを動かし攻撃を優位に進めていた手強いチーム。前半に特に、自分たちのプランを高い精度で実行できていた両者の先週の戦いぶりから、前半では点の取り合いということにはならず、後半戦で体力が落ちてきた際に、一踏ん張りできたほうが勝利を掴むという試合展開が予想された。スタメンを見ると、左WTBに佐々が入り、前試合で負傷し規定により出場できない山田に代わり、途中出場ながら2トライをあげた永山が先発出場した。

立大のキックオフで試合は始まった。序盤のスクラムで優位に立たれ、オフサイドも重なりピンチを招く。威勢の良いアタックに押されるも、インゴール直前でノットリリースザボールをとりピンチを脱する。対する慶大の攻撃は、相手のノットローラーアウェイとオフサイドで敵陣深く攻め込む。トライまであと5mまでとなりFWが連続攻撃をするも、立大が粘りノックオン。序盤は互いに攻め込むも得点には至らないという展開だった。

自慢のディフェンスが光った

17分には、立大が慶大ボールのスクラムでコラプシングを誘い、慶大陣内に攻め込むもオーバーザトップ。一方の慶大は25分、トライまで5mほどというエリアまで再び攻め、ラインアウトからモールに移行しようとするも痛恨のノックオン。両者無得点のまま前半を折り返す雰囲気すら漂った。

均衡を破ったのは36分。三木に対する立大のタックルがハイタックルとなり、ペナルティキックを獲得する。確実にスコアしたいところ、ショットを選択した。ゴールポストに対してあまり角度がない位置からのショットを確実に決め、3点を先制する。先制され反撃に出る立大だが、慶大のサポートに入るスピードが立大を上回り、オフフィート。これには岡も両手を上げてガッツポーズをした。得点直後のピンチを脱した慶大は、陣地を挽回した後、相手ボールスクラムで富田が立大SH・北川に猛プレッシャーをかける。これが相手のノットリリースザボールとなり、永山がショットを決め6−0で前半を折り返す。

キックを安定して成功させる永山

リードしているとはいえ、トライはあげられていない慶大。次の得点をどちらがあげるかという中、立大が両チーム通じて初のトライをあげる。5分、慶大はスクラムでペナルティーを取られると、ラインアウトで立大が仕掛けた。NO.8・仙臺がボールをキャッチし、モールに持ち込むと思われたが、FWの列が真っ二つに空いたスペースに走り込んだ北川に上からパス。勢いに乗ったまま捕球した北川がインゴールに飛び込んだ。コンバージョンも決まり、逆転を許してしまう。

それ以降立大の流れを断ち切れず、慶大は自陣の22mラインより内で守る時間が続く、我慢の時間帯に。その間、慶大はスクラムに苦しむ場面が目立ち、注意がレフェリーから下ることもあったが、改善が上手くいかず反則が繰り返され、22分には岡がシンビンとなってしまう。フロントローのシンビンは一時交替が認められるため数的不利とはならないが、主将を欠いた慶大ディフェンス陣に対し、立大は立て続けにスクラムで攻め切った。27分に仙臺が8単でトライ。32分には慶大が反撃の狼煙をあげたかと思いきやインターセプトをされ、そのまま走りきられトライ。この時点で6−21と15点のビハインドであった。

慶大のジャージは「タイガージャージ」の愛称で親しまれているが、その名の通り、彼らは「タイガー」である。タイガーがそう簡単に負けるはずがない。39分、スクラムからの展開で三木が体の強さを見せつけ、タックルを受けている状態で5m前進。ゴールポストの死角も利用し冨永がグラウディング。背水の陣ながらも、徐々に本領を発揮し始める。

この試合初のトライを奪うと、これが目覚まし時計となったか。そして「ロスタイムは、10分です。」のアナウンス。タイガー軍団が牙を剥いた。まずは46分、ハーフウェイラインあたりでのスクラム。しっかりと前三列が耐えマイボールをキープすると、橋本は狭いサイドへ。磯上、佐々、そして橋本が狭いサイドを一気に走り切り、あっさりトライを奪い返す。コンバージョンは不成功ながらも、永山のルーティン中に響き渡った慶大の円陣からの雄叫び。18−21と立大リードでありながらも、立大は慶大の猛攻に焦りを顕にしていた。

スクラムハーフとしてフル出場した橋本のトライ

慶大に流れが完全に来たことを象徴するプレーが直後に見られた。立大のリスタートキックを確実にレシーブし、橋本がボックスキック。このシーンは何度か見られたが、いずれもクリーンキャッチはおろか、相手にボールが渡るシーンが多かった。しかし、今回は大野が落下地点まで走りながらジャンピングキャッチに成功。永山が空いてるスペースに蹴り込み、その対処に立大がもたついたところを、佐々が好タックル。サポートに回れていない立大はノットリリースザボール。3点差の場面でここはショットを選択し、まずは同点を狙った永山のキックは、綺麗にゴールポスト内に吸い込まれた。鈴木賢レフェリーの「Yes」という一言は、慶大が同点に追いついたことを知らせるとともに、「勝利」の2文字への戦闘開始の合図であった。

必死に相手のインゴールへアタックする慶大

これが「流れ」なのか、リスタート後の立大のラインアウトを慶大がスチール。キックで一時ボールを失うものの、慌てふためいている立大にサポートの綻びが見られた。前半にはスクラムでプレッシャーかけた富田が、今度はジャッカルを成功させた。永山のタッチキックで22mラインを越すと、あとは必死のアタック。ショットでも勝ち越し、という中でのアタックだ。そして、59分、トライまであと10mと迫り、マイボールラインアウト。立大が競らずにモールの構えを優先させるが、そんなことをもろともせず、むしろ慶大のモールは加速。今季最高のモールではなかろうか。チームの想いとグラウンドからの歓声が乗ったそのモールは、とどまるところを知らず、一気にインゴールへ。最後は酒井がボールを押さえた。レフェリーの長い笛と同時に、響き渡るタイガーらの雄叫びと泣き崩れる立教健児たち。そして、その瞬間を見た観客の興奮。前半こそ静まり返っていたものの、後半だけで1時間を超え、気づけば炎の渦巻いたグラウンドになっていた敷島での決戦は、一つの「鎖」となったタイガーらの劇的トライで、幕を閉じた。

逆転の歓喜の瞬間

初戦から、2試合連続の激闘となった。筑波大戦では、春季大会のリベンジを狙ったもののロスタイムで逆転され敗れた。リードはしていたが、追いかけるチームの勢いに飲まれた形だった。その悔しさを持って臨んだ本試合。近年、一部でも実力を発揮している立大は、試合開始から「打倒慶應」を果たすべく、全力プレーで対峙してきた。チャンスを作っても粘られるという攻防が両チームとも続き、無失点に抑えながらもリードはわずか6点という展開であった。後半は序盤から立大の圧力に押され、80分を迎える段階で15点の差があった。焦りも多少見られたが、それを上回るほどの意地を持っていた。1トライを返し、ロスタイムが10分あると発表されてからは、筑波大戦での教訓を胸に部員全員が輪になって戦えていた。「応援してくれた全員が力になった」と、たくさんの応援を背に受けた一つのラン、パス、タックルが、全く疲れを感じさせず、むしろパワーアップしたものになった。そしてこの2試合で一番のモールを組み、ついに迎えた逆転の瞬間、スタジアム全体を湧き上げた。ここ2戦だけでも逆境は多くあり、それは次戦以降も変わらずだろう。しかし、どのような試練が訪れようと、支えているたくさんの方々の想いを胸に、チーム全員で一丸となって乗り越えていってほしい。

(記事:野上 賢太郎 写真:愛宕 百華)

——本試合の総括

青貫浩之 監督

本日はありがとうございました。今日は本当に80分間、立教大学さんの気迫にずっと押され続けてましたが、終盤で慶應の方がわずかに立教大学さんの執念を上回ったというのが、今日の結果につながったかなと思います。ちょうど先週、筑波大学さんに同じ形で負けました。今日は絶対それはないように、先週の悔しい思いをもう一回しないようにということで、一丸となって戦いました。試合については、厳しい試合になるというのは昨日から伝えていました。例えば、10点ビハインド、20点ビハインドの状況もあると選手に伝えていました。ただ、最後に勝つのは我々だ、やってきたことは間違っていないし、それを信じて部員一丸となって戦おうということで、最後信じてプレーできたことが最後の得点につながったと思っています。

岡広将 主将

前日の夜にミーティングを重ねて、どのようなシチュエーションにも対応できるように想定していましたが、それ以上に立教大学さんの圧に飲み込まれてしまった部分があると思います。もちろん、立教大学さんを舐めていたり、侮っていたりした部分は一切ないのですが、この状況になることを1週間想定していたこと、筑波戦であのシチュエーションで負けたということが、今日の勝利につながったと思います。

橋本弾介 選手

今日の立教大学戦は相当タフな試合になると、1週間全員で認識しながらやってきたのですが、相当立教大学さんの圧や執念に押されました。かなりきつい時間が長かったんですけど、応援してくれているノンメンバーの声だったり、観客の皆さんの声援というのを信じて、そしてグラウンドに出ている15人だけではなくて、部員全員、仲間を信じてやろうというところに立ち返り、自分たちの強みであるディフェンスを信じてやり直した結果が、最後の逆転につながったかなと思います。

——試合終了後、選手たちに声をかけ握手していましたが、どのような声をかけたのですか

青貫浩之 監督

「ありがとう」という話をしました。立教大学さんに比べて、スターティングメンバーもリザーブメンバーも4年生が多くて、半分以上は4年生でした。立教大学さんのこの試合にかける思いも強いのですが、4年生のかける思いも強いという話をして、4年生にこの試合を託しました。結果として最後4年生の力を中心に、勝ち切ってくれたので、心の底から「ありがとう」という言葉をかけました。

——ロスタイムの10分間で大逆転劇を見せましたが、その原動力はどこから生まれましたか

岡広将 主将

まず一つが準備の部分で、同じようなシチュエーションを徹底して確認しました。例えば、最後のトライを取り切ったモールだったり、ディフェンスの準備などプレーの面でもそうですし、メンタル面での準備も徹底してきた部分が一点目にあります。あともう一点は、弾介も言っていたことですが、ノンメンバーの声、応援がすごく力になって、コーチの方々やスタッフやOB、応援してくれた全員が力になったからこそ、慶應らしいプレーができたと思っています。

——SHとして、ボールを配球する上で意識していたことを教えてください

橋本弾介 選手

立教大学さんは結構ディフェンスに圧力のあるチームだったので、あまり急がず、自分達のペースで、試合を進められるように焦らず、でも自分達の練習してきたテンポで出せるように、塩梅をとりながらやっていました。

——プレーヤーオブザマッチに選出されて

橋本弾介 選手

応援ありがとうございました。かなり苦しい時間が長かった試合でしたが、ノンメンバー含めて全員が仲間を信じて一人一人できた結果が、こういう結果につながったと思います。これからまだまだ続いていくので応援よろしくお願いします。

プレーヤーオブザマッチには橋本が選出された

永山に「よくやった」と声をかける青貫監督

帝京大	明大	早大	慶大	筑波大	立大	青学大	成蹊大	勝	分	負	勝点
帝京大	———	11/19	11/5	12/2	10/15	10/1	○	○	2	0	0	10
明大	11/19	———	12/3	11/5	10/1	10/15	○	9/24	1	0	0	5
早大	11/5	12/3	———	11/23	9/24	○	10/14	10/1	1	0	0	5
慶大	12/2	11/5	11/23	———	●	○	9/30	10/22	1	0	1	5
筑波大	10/15	10/1	9/24	○	———	12/2	11/19	11/5	1	0	0	4
立大	10/1	10/15	●	●	12/2	———	11/5	11/19	0	0	2	1
青学大	●	●	10/14	9/30	11/19	11/5	———	12/2	0	0	2	0
成蹊大	●	9/24	10/1	10/22	11/5	11/19	12/2	———	0	0	1	0
◎勝ち点の多い順に順位決定を行う。(並んだ場合は勝利数で決定)

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