今こそ知りたい!原子力発電所の電気の作り方の仕組みとは【図解 化学の話】

原子力発電の電気のつくりかた

原子力発電は1951年のアメリカからはじまりました。世界では50年ほど前から稼働が広がり、原子力委員会の統計によると、2018年時点での稼働国が31か国、建設中・計画中を含めると40か国に上るそうです。ところで、日本での原子力発電はよく軽水炉とアナウンスされます。これは沸騰水型と加圧水型の原子炉をまとめていう呼び方。どちらの型も仕組みの原理は火力発電と同じで、ボイラーの代わりが原子炉(図1)です。原子炉内でウランが核分裂を繰り返して生じた熱が水を蒸気に替え、タービンを回して発電するのです。利点は、一度ウラン燃料を入れると1年間連続運転できること、二酸化炭素(CO2)を排出しないことです。燃料は核分裂するウラン235です。天然ウラン中の含有率が0.7%程度なので、これを2~4%ほどに濃縮して直径約1㎝、高さ約1㎝の円柱状の焼結ペレットにし、被覆管というジルコニウム合金製の長筒に密封して燃料棒にします。燃料棒を多く束ねたものが燃料集合体で、この燃料集合体が原子力発電の燃料となるわけです。では、どうしてウランが燃料になるのか……。ウランは原子核が2つ以上に分裂すると大きなエネルギーを放出するからです(図2)。ウラン235の原子核に中性子を当てると核分裂が起き、大きな熱エネルギーが生まれます。このとき原子核から2~3個の中性子が飛び出し、別のウラン235の原子核に衝突して核分裂する。そうすると、さらに中性子が飛び出して連鎖的に核分裂し、膨大な熱エネルギーを発生させます。この連続的に起こる核分裂を制御して利用しているのが原子力発電というわけです。

原子力発電の仕組みと燃料集合体

火力発電のボイラーにあたる部分が原子炉。原子炉内でウランが核分裂を繰り返して発生した熱が水を蒸気に替え、タービンを回す。タービンは発電機を駆動して電気をつくる。また、110万kW級の沸騰水型軽水炉では、燃料棒60~80本束ねた燃料集合体764体が原子炉内に装荷される。

軽水炉での核分裂

ウラン235の原子核に中性子を当てると、原子核が核分裂を起こし、熱エネルギーを放出する。また、原子は1つの原子核と複数の電子によって構成され、原子核は陽子と中性子で構成される。通常、原子はプラス電荷を持つ陽子とマイナス電荷を持つ電子が同数存在している。原子核に含まれる中性子の数が異なる原子の場合は同位体と呼ばれる。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著

宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!

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