茨城県陶芸美術館 江戸小紋 浅野さんの技 着物や着尺、型紙も

江戸小紋の着尺などが並ぶ展示会場=笠間市笠間

江戸時代、武士の正装「裃(かみしも)」に使われた小紋染に光を当てた「浅野栄一の江戸小紋」が、茨城県笠間市笠間の県陶芸美術館で開かれている。同県美浦村で祖父の代から染めの技を受け継ぐ浅野さんが仕上げた着物や着尺約30点を紹介し、江戸の粋と極上の技を堪能する。

小紋は、型紙を使い細かな文様を染めた柄のこと。規則的な線の並びで波や雨筋、かんざし、畳目などさまざまな種類がある。生地に型紙を当て、均一にのりを置いて染めていく工程に加え、染め上げた後の微細なずれを手作業で修正するなど、高い技術と集中力が求められる。

浅野さんは1946年、同村生まれ。江戸小紋型染師の父の下で更紗(さらさ)染を学び、東京都内で修業を積んだ。小紋の中でも緻密な工程を繰り返し、難易度が高い「縞(しま)染」の名手として知られ、2007年に「卓越した技能者(現代の名工)」に認定された。

会場では、浅野さんが染めた着物や、大人1人分を仕立てる幅と長さの反物「着尺(きじゃく)」を合わせて紹介。縞染の後、色やぼかしを入れる複雑な工程を経た着物「雲海」や、縞文様を組み合わせてデザインした着尺「十二縞」など、美しさと繊細さが際立つ作品が並ぶ。浅野さんが実際に使用する重要無形文化財「伊勢型紙 縞彫」保持者、児玉博さんの型紙も展示した。

同館学芸員の名村実和子さんは「国内第一人者ならではの技を間近で鑑賞し、江戸小紋の魅力に触れてほしい」と話している。

会期は12月3日まで。26日から10月29日まで、アーティストの椎名林檎さん、宮本浩次さんが舞台で身に着けた浅野さんの作品を特別展示する。月曜休館。

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