「軍艦島」含む日本の対応 世界遺産委が承認 徴用関連の展示充実が評価 元島民に安堵と決意

 長崎県長崎市の端島(軍艦島)を含む世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の保全状況について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会が日本の取り組みを認める決議を14日採択したことを受け、元島民らは安堵(あんど)するとともに「遺産の本来の価値をあらためて世界に広めたい」と決意を語った。
 2021年決議は朝鮮半島出身者の戦時徴用などを巡る対応が「不十分」として韓国などと対話継続を求めた。日本政府が産業遺産情報センター(東京)で犠牲者追悼コーナーを新設するなどし、徴用に関する展示充実が評価された。
 元島民でNPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」理事長の坂本道徳さん(69)は「日韓関係改善など外交で乗り越えた」と一定評価する一方、「本来の価値はまだ十分に伝わっていない。近代化を支え、島民が必死で生き抜いた歴史や価値を講演などで伝えていく」と語った。元炭坑従業員で「真実の歴史を追求する端島島民の会」会長の加地英夫さん(91)も「良かった」と安堵しつつ「韓国との対話は続く。島民の声や当時の資料を基に、事実を韓国や世界に伝える必要がある」と訴えた。
 今回の決議が出た背景について、NPO法人世界遺産アカデミーの宮澤光主任研究員は、日韓関係改善の他に「端島で亡くなった朝鮮半島出身者数など客観的な数字を用いて展示を充実させたことが、イコモス(ユネスコの諮問機関)に誠実な対応と評価されたのでは」と分析。今後も調査や韓国との対話などが求められており「日本政府も譲れない部分があるにせよ、韓国に寄り添いながらの対応が必要だ」と指摘した。

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