茨城県内 農作物盗難が増加 9~10月は要警戒 生産者「悔しい」

盗難被害に遭ったブドウ園。枝の先には出荷間近のブドウが付いていた=水戸市内

茨城県内で農作物の盗難被害が増加している。8月末現在の被害は58件に上り、被害額は約660万円と前年同期比で約2倍に増加。9月以降も各地で被害が相次いでいる。農家からは「悔しい。気持ちがくじかれる」と落胆の声が上がるが、現行犯以外の逮捕は難しいのが実情だ。

県警によると、2018~22年の5年間にあった農作物の盗難被害は年間80~100件で推移している。昨年は8月末時点で47件(被害額330万円)だった。1年間で最も被害が多いのが、実りの秋を迎える9~10月。ここ数年は被害が両月に集中しており、22年は9月だけで28件に上った。

県内では9月以降、つくば市のビニールハウスからブドウ450房(約30万円相当)や肥料など約70点(約10万円相当)が盗難被害に遭った。また、行方市では、収穫した玄米約420キロ(約10万円相当)も盗まれた。

巨峰の盗難被害に遭ったという水戸市の地域おこし協力隊員、吉倉利英さん(49)は「1年かけて育て、ようやく収穫できるところだった」と肩を落とした。昨年も3回ブドウが盗まれたといい、「盗難が横行すると、果樹農家として将来やっていけるのかと不安を抱いてしまう」と表情を曇らせた。

各農家とも防犯カメラや警報器、有刺鉄線で対策するものの、被害が絶えない状況は続く。捜査関係者によると、盗まれた農作物は飲食店に直接持ち込まれたり、インターネットのフリマサイトなどで転売されたりするという。

ただ、盗難被害に遭った農作物をDNA鑑定するのは難しく、現行犯逮捕以外での摘発は難しいとみられる。県警はパトロールなどで警戒しているものの、今年に入って農作物大量盗難の摘発はない。

収穫に追われて被害届が提出できない農家も多いとみられ、ブドウなど果樹栽培を約70年続ける同市の石島一男さん(84)は「被害に遭っても通報しなかったり、被害自体に気付かなかったりするケースは各地で数え切れないくらいあるだろう」と指摘する。

9、10月はブドウや梨、コメの収穫が本格化し、リンゴや柿なども食べ頃を迎える。

県警は防犯カメラやセンサーライト設置のほか、警戒を示す看板を立て、不審者を見かけたら110番通報するように呼びかけている。

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