「きのくに禅僧ものがたり」 法燈国師の企画展、10月1日まで和歌山県立博物館

「法燈国師像」(大通寺蔵)

 和歌山市吹上1丁目の県立博物館は、企画展「法燈国師(ほっとうこくし)―きのくに禅僧ものがたり―」を開いている。興国寺(由良町)の開山でもある法燈国師(無本覚心)の事績や伝説・逸話を中心に、弟子たちの活動、関連寺院の文化財を紹介している。同館で法燈国師に関わる展示をするのは1973年以来、50年ぶり。展示資料数は重要文化財1件1点を含む54件65点。10月1日まで。

 法燈国師は、鎌倉時代後半ごろに活動した臨済宗の禅僧で、現在の由良町に西方寺(後の興国寺)を開き、紀伊半島に大きな足跡を残した。その弟子たちは臨済宗法燈派として、鎌倉時代末から室町時代にかけて紀伊半島を中心に地方展開し、当時の社会に大きな影響を与えた。県内には、法燈国師ゆかりの寺院や文化財が今なお多く残る。

 企画展では、中世に大きな勢力を維持した臨済宗法燈派について、その祖であった法燈国師の事績や足跡、伝説、逸話をたどるとともに、法燈派関連の寺社、弟子たちの活動を取り上げている。

 見どころの一つ、円満寺(有田市)に伝えられた「法燈国師坐像」(県指定文化財)は、生前に作られた法燈国師の寿像。額に浮き出る血管や口元のしわなど、まるで生きているかのような迫真性がある。今回の企画展の準備過程で新たに見つかった、大通寺(三重県紀宝町)に伝わる法燈国師像なども紹介している。

 法燈国師とその弟子たち(法燈派)の活動は、さまざまな伝説や逸話に彩られている。文字で残したものもあれば、伝承をまとったさまざまな遺物(文化財)も残っている。企画展では、法燈国師とその弟子たちが残した数々の「ものがたり」を記した縁起などを紹介している。

 法燈国師の事績をまとめた「紀州鷲峰山法燈圓明国師之縁起(きしゅうじゅぶさんほっとうえんみょうこくしのえんぎ)」(興国寺蔵)、興国寺の僧侶の求めに応じて耕雲明魏(法燈派の禅僧)が詞書きをまとめた上で、清書までした「衣奈八幡宮縁起絵巻(えなはちまんぐうえんぎえまき)」(由良町・衣奈八幡神社蔵)などを展示している。

 関連行事として、ミュージアム・トーク(展示解説)を10、16、24日の午後1時半~2時半、同館企画展示室で開く。事前申し込み不要。

 開館時間は午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館(ただし、18日は開館し、翌19日は休館)。入館料は一般280円、大学生170円、高校生以下と65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料。毎月第1日曜(期間中は10月1日)は無料。

「衣奈八幡宮縁起絵巻」(下巻、部分、衣奈八幡神社蔵)
「紀州鷲峰山法燈圓明国師之縁起」(興国寺蔵)

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