手話劇と演奏で優しい心届けたい 明誠学院高吹奏楽部 全国大会へ

本番に向けて練習に励む吹奏楽部のメンバー

 明誠学院高(岡山市北区津島西坂)の吹奏楽部が、手話を用いて音楽や演劇、ダンスといった表現を披露する「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」(24日、鳥取市)に出場する。いじめを苦に自殺した女子高生の詩から生まれた曲の演奏に手話劇を交えた構成。部員たちは「優しい心が大切だと伝えたい」と3度目の大舞台で初の頂点を目指す。

 大会は2013年に全国初の手話言語条例を制定した鳥取県を会場に、若い世代に手話を普及させようと実行委が14年から開催。3~8分間のパフォーマンスで表現力や手話の正確さを競う。今年は過去最多の69校が7月の予選に参加し、15校が本大会に出場する。

 県内から唯一出場する明誠学院の吹奏楽部が披露するのは、1998年に自ら命を絶った横浜市の小森香澄さん=当時高校1年=が残した詩を歌う「窓の外には」。希望を見つけて生きよう、優しい心や愛を育てて幸せになろう、といったフレーズが当時の部員の目に留まり、02年から演奏を続けている。

 2、3年生の計20人で臨む今回は、演奏と合唱に手話を組み合わせた20、21年の作品をリニューアル。ピアノや管楽器の演奏の合間に詩のイメージを視覚的に訴える寸劇を演じる。年齢や国籍が異なる人々が助け合ってつながるストーリーで、せりふは手話で表す。

 長く「窓の…」を奏でる吹奏楽部には18年、香澄さんが愛用したトロンボーンが両親から託されている。大会では3年岩村伊都岐さん(18)が吹くといい「真っすぐで優しかったという彼女のような音色。精いっぱい吹きたい」とする。

 13日は、聴衆を巻き込もうと取り入れた奏者のリズミカルな動きや、せりふを伝える表情を確認した。リーダーの3年金島史奈さん(18)は「多くの人に香澄さんの思いが届き、優しい世界が広がるよう心を込めて演じたい」と意気込んでいる。

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