世界から20~30年遅れている?日本の性教育について考えた

世界から遅れているといわれる日本の性教育。なぜ日本の性教育は遅れているのか、家庭でもできる「おうち性教育」についてなど、子どもとの性の向き合い方について考えました。

日本の性教育の現状

日本の性教育(広島市)

日本の性教育について、専門家はどう考えているのでしょうか。

立教大学の浅井春夫 名誉教授に話を聞きました。

「まともに子どもたちに性教育を提供する期間がない。世界の中でも20~30年遅れているのではないか」

と、現在の日本の性教育に対して危機感を示します。

では、なぜ日本の性教育は遅れてしまっているのでしょうか。

「文部科学省の“子どもを管理したい”という発想が変わっていない。今の性教育は抑制的。教えすぎたら性的な問題が起こると考え、教えすぎない性教育を行っている」

と、浅井教授は考えます。

性の知識がつくと問題を起こすわけではなく、むしろ正しい知識を身に着ける方が良いと浅井教授は話します

世界で学ばれている「包括的性教育」

日本の性教育が遅れる中、世界では「包括的性教育」が学ばれています。

包括的性教育とは、ジェンダー平等や性の多様性を含む人権尊重を基盤とした性教育のこと。

世界基準となっているのは、ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」です。

ユネスコ「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」キーコンセプト

包括的性教育というと難しく思うかもしれませんが、分かりやすく表現した本があります。

小学館クリエイティブ発行の『パンで分かる包括的性教育』です。

『パンで分かる包括的性教育』

ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に準拠しており、多様性をパンで表現していることが特徴です。

この本の編集者は

「知らず知らず付いている性教育への抵抗感。そういった大人の意識を変えるきっかけにして欲しい。なかなか家庭で性教育ができない実状もある」

という思いがあると話します。

実際に、約8割の家庭で性教育を実施できていないというデータもあります。

家庭で性教育を実施している?(子育てメディア『KIDSNA STYLE』)

家庭で始める「おうち性教育」

では、家庭での性教育「おうち性教育」はどのように始めれば良いのでしょうか。

現役看護師であり性教育アドバイザーとしても活動する「たかはしあや」さんに話を聞きました。

「プライベートゾーンという水着を着たときに隠れる場所と口を、子どもに伝えるところから始める。大事な部分を知ることが自分で自分を守る第一歩かなと思います」

たかはしさんは、イラストを使ってプライベートゾーンを子どもに教えています。

ゲーム感覚でプライベートゾーンについて学ぶことができる

普段のスキンシップでも子どもの同意を得ることが大切なんだそう

子どもが興味を持ちやすい絵本やかるたなど、楽しみながら学べるものを活用することもおすすめ。

「親も最初は恥ずかしかったりするのですが、性教育は恥ずかしいことではないよと。一緒に遊びながら学んでほしい」

一方、おうち性教育の注意点も。

「怒らない、ごまかさない、嘘をつかないの3つ。これをされてしまうと、子どもは『この類いの質問は親にしてはいけない』と思ってしまう」

おうち性教育で大切なこと

「おうち性教育」は、早ければ早いほど、性の知識を純粋に身に着けることができるとたかはしさんは話します。

日本の性教育を変えていくためには、こうした家庭での性教育だけではなく、やはり文科省や国が変わっていかなければならないのではないでしょうか。

子どもたちを守るためにも、まずは大人の意識が変わることが必要です。

広島ホームテレビ『ピタニュー』(2023年9月20日放送)

ライター:神原知里

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