【MLB】もうダメダメ救援陣とは言わせない!? Dバックス救援陣が大奮起

写真:今季Dバックスの救援陣を支えるケビン・ギンケル

古今東西、救援投手陣、特に勝ち試合の継投に課題があると多くのファンは必要以上に悪い印象を抱きがちだ。やはり先発が耐えて勝ったままバトンをつないだにもかかわらず試合後半にひっくり返されると、その印象がファンに残ってしまうからだろうか。

さて、その典型と言えるチームなのが近年のダイヤモンドバックスだ。Dバックスはここ数年、救援陣に大きな課題を抱えてきた。2022年、前年の52勝から74勝まで大きく勝ち星を増やしたDバックスだが、救援投手陣の防御率は4.58で30球団中25位。控え選手と比較した貢献を示すWAR(Fangraphs版)に至っては-1.1で30球団中ダントツの最下位だった。

ところで、この「WAR」という数値について少し解説しておこう。WARは算出する会社によって計算式が異なるが、共通のコンセプトは「最小のコストで獲得できる選手(リプレイスメントレベル)と比較して何勝増やしたか」だ。

イメージとしてはマイナーリーグにいるMLB昇格の可能性が低い選手やFAになっていてどこにも引き合いがない選手だと思ってもらえばよい。WAR-1.1というのは、数字上そういった選手を起用した場合よりも1勝分チームの勝ちを減らしていたということを意味する。いかにDバックスの救援陣に課題があったかわかるのではないだろうか。

当然ながらこの状況を重く見たDバックスのフロントは昨オフに熱心な救援陣補強を行った。NPBのヤクルトからはスコット・マクガフ、FAからはミゲル・カストロとアンドリュー・チェイフィン、トレードでは有望株のカルロス・バルガスを……といった具合だ。現オリオールズの藤浪晋太郎についても、当初クローザーとしての獲得報道が出たのはDバックスだった。

そしてこの涙ぐましい努力の成果は如実に現れた。今季のDバックス救援陣の防御率は4.35、WARに至っては1.7。計算上は救援陣だけで昨季に比べて約3勝分貢献を積み増ししたことになる。

ただ、この数値は開幕から現在までのこと。期間を分けて見ると、少し印象が変わる。開幕から6月30日までのDバックス救援陣は防御率が4.00。ほぼリーグ平均レベルのクオリティを維持していた。しかし7月1日〜8月31日で見ると5.80で30球団中28位。WARで見ると-1.0で、30球団中最低だった。結局通算で見れば昨年と同レベルになってしまうのではないかと思わされるほど打ち込まれていたのだ。

しかし、ここで尻すぼみにならなかったのが今季のDバックス救援陣のえらいところ。トレードで加入したポール・シーウォルドや8回の男に就任したケビン・ギンケル、レイズからウェーバー経由で加入したライアン・トンプソンらがことごとく好投。7月からの借りを返すように素晴らしい投球を見せ始めた。

この好投は数字にもあらわれている。9月1日以降で見ると救援陣の防御率は脅威の2.22。レイズ、ドジャース、ブリュワーズに次ぐ30球団中4位の素晴らしい成績を残している。WARで見ると0.4(30球団中15位)と少し見劣りするものの、一時期を考えれば大きく持ち直したと言えるだろう。勝負どころの9月、ダメダメだったはずの救援陣が、むしろチームの勝利の原動力となっているのだ。

ダイヤモンドバックスは21日(日本時間)のジャイアンツ戦に勝利し、これで5連勝。ワイルドカードの2枠目を確保しており、2017年以来のプレーオフに向けて視界は良好だ。もしこのまま救援陣が最後まで奮起し続けられれば、久しぶりのプレーオフはより現実的になってくるだろう。

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