国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)は、園内での宿泊事業の導入を目指す。泊まりながら夜間のネモフィラを観賞できるなど新たな魅力創出が狙い。民間の資金とノウハウを生かすパークPFI制度の活用を視野に、月内にも社会実験に着手する予定。公園事務所は「夜間の安全管理など課題を把握した上で検討を進めたい」としている。
宿泊事業の導入により、誘客を一層進めたい考え。同園が2021年に実施したパークPFIの需要調査で、宿泊事業に関心の高い民間事業者が複数あったことなどを踏まえた。
宿泊できる国営公園は3カ所ある。このうち、海の中道海浜公園(福岡県)は同制度を活用している。
宿泊の用地は海に面した「砂丘エリア」の一部を想定する。同エリアは砂地や林を中心とした約45ヘクタール。未利用地も多く、活用が課題となっていた。
宿泊事業はキャンプ、グランピング、ホテルなど形態を問わない。例えば宿泊客の夜間のネモフィラ散策など、新たな楽しみ方の創出に期待を寄せる。
一方、これまでに夜を通して開園したことはなく、夜間の来園客の安全をはじめ、維持管理にどのような課題があるか把握する必要がある。今回、キャンプ運営の社会実験を行い、課題を抽出する。
公園は1991年に開園した茨城県内有数の人気スポットで、昨年度は約170万人が訪れた。面積は215ヘクタールと広大で、春はネモフィラ、秋はコキアなど、四季を通じて草花が楽しめる。遊園地のプレジャーガーデン、林間アスレチック広場、バーベキュー広場などもある。
実験では民間事業者を募集し、9月下旬から11月まで、1泊2日か2泊3日で計6回を予定している。場所は砂丘エリアに近い約700平方メートルの「グリーン工房前広場」。工房は事務所としても使えるため、イベント開催も可能。テントや寝袋などは同園が用意する。
茨城県はひたちなか市や大洗町の海浜地区をより魅力的な観光地にする「ひたちなか大洗リゾート構想」を掲げており、県地域振興課は「(同地域の)滞在時間の長期化などにつながってほしい」と宿泊事業に期待を寄せる。
同園事務所の米山善夫調査設計課長は「魅力を向上させ、観光拠点がそろう地域内の回遊性を高めたい」と話す。