相模屋食料 鳥越淳司社長 従業員の心に火を付ける 櫂寄せと自然脱水の堅豆腐

豆腐トップの相模屋食料は豆腐文化を守るために事業継続支援に取り組んでいる。今年2月1日に日の出(千葉県)を、また同月24日にギトー食品(岐阜県)の豆腐・大豆加工食品製造事業を譲り受け、日の出は早くも黒字化を達成した。鳥越淳司社長に昨今の取り組みを聞いた。

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今期3~8月のグループ売上は前年比11%増となった。7月のグループ売上は34億円を超えた。売上増は価格改定の影響というより、木綿や絹の3個パックの販売好調によるもの。木綿3個パックは増産体制を整える。

一丁物の400gの木綿や絹も増えた。夏が暑かったので「よせ豆富」も絶好調だった。「焼いておいしい絹厚揚げ」や京都タンパクの「京のはんなり湯葉おぼろ」も好調だった。

日の出は7月に黒字化を達成した。5か月を要した。同社には昔ながらの櫂寄せで作る堅豆腐という商品がある。これをフラッグシップにして黒字化を達成できた。どの会社の再建もそうだが、力を入れる商品を決めて、それを徹底的においしくする。

日の出の堅豆腐は、櫂で20分寄せて、自然脱水に30分もかける。効率など全然関係ない製法だが、同社はいつしか効率を求めてしまった。安く売るために色々なことを省き、もともとの良さが失われた。私が行って、それを元に戻した。

自社品のおいしさを製造している従業員自身が理解していないケースもある。そのメーカーがもともと取り組んでいたことなので、それを思い出せばおいしく作れる。営業の提案力も1社では厳しい部分もある。

日の出では手で寄せる豆腐もおいしい物が作れる。同社では堅豆腐とおぼろ豆腐2品の3品に絞って製造し、首都圏のスーパーで販売中だ。店頭売価200円の堅豆腐が1日で20個売れた売場もある。今秋から東北にも広がる。

秋冬商戦のイチオシは日の出の堅豆腐だ。すごく堅いが、甘みとうま味が詰まっている。春夏は、「わさび醤油で刺身のように」と提案した。秋冬はおでんを提案する。200円できちんと売れるベーシック豆腐を定着させる大きなチャンスと考えている。

企業再建は手順や確認が確立された。1週目の段階でその企業の強みを確認し、共通認識とする。すべてはおいしい豆腐を作るためで、自分たちがやってきたことが認められて、燃えない人はいない。従業員の心に火を付けることが大事だ。

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