【台風13号】思い出の写真 修復進む 8000枚、専門家支援 茨城・高萩 松岡小

写真の修復を行うボランティアたち=高萩市下手綱の市立松岡小

台風13号に伴う大雨の影響で浸水被害に遭った茨城県高萩市下手綱の市立松岡小(飯沼幸則校長)で、水に漬かった写真の修復作業が進んでいる。被害を受けたのは、廃校になった旧市立君田小・中から引き継いだ約40年分の写真で推定8千枚超。浸水で「思い出」の廃棄が危ぶまれたものの、歴史専門家らが協力。史料修復時のノウハウを提供して支援している。

同小は、8日夜から近くの関根川などが氾濫したことで、校舎1階に水が流れ込み、写真を保管した倉庫が床上約30センチの浸水被害に遭った。飯沼校長が9日午前に倉庫内部を確認したところ、大半の写真が水に漬かっていたという。

倉庫に保管されていたのは、2017年に閉校した君田小と君田中の写真やアルバム、ネガフィルム。両校の廃校後は松岡小に移管されていた。同小によると、1970年代から2010年代に撮影され、各年代の入学式や卒業式、修学旅行など、子どもたちの姿を収めた写真は推定8000~1万枚に上る。

ぬれた写真の扱いについて、同小は市教委と協議。「思い出を残そう」(同小)と修復・保存を決定し、同日から地元の歴史研究家と修復を開始した。だが、消毒作業などで人手が足りない上、修復に関する知識も乏しかったため、県立歴史館(同県水戸市)から史料修復に関するマニュアルを取り寄せた。

こうした取り組みに、同館職員や茨城大教授2人、大学院生らが13日、「知見を生かして大切な写真を守りたい」と同校を訪れ、修復作業が本格化。「カビを生やさずに乾かすのが重要」などの助言とともに、キッチンペーパーや新聞で水分を除去したり、ピンセットでぬれた写真を剥がしたりした。乾燥作業では、扇風機や天井につったひもに写真をかけて乾かした。

修復作業について、同大の添田仁教授は「地元の写真を残したいという熱意が伝わってきた」と参加の理由を語った。作業では、現在はなくなった校舎なども確認できたとして「地域の歴史をひもとく貴重な史料もあった」と修復の意義を強調した。

飯沼校長は「もう駄目だと思ったが、写真はかけがえのない財産。協力してもらえてうれしい」と笑顔を見せた。

同小によると、現在は写真の乾燥を待っている状態。今後は同館の助言を受けながら修復方針を決めるという。

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