ラピダス進出で北海道・千歳への効果は!?

今回のテーマは、次世代半導体の製造を目指す「ラピダス」。10年で5兆円の投資を見込む、国を挙げての一大プロジェクト。地元の北海道・千歳にどのような影響・効果があるのか取材した。

【千歳に進出 ラピダスの現在地は】

トヨタ自動車やNTTなど、国内大手の8社が出資して生まれたラピダス。2ナノメートル以下の次世代半導体の製造を目指している。工場を建設する千歳で、今月1日、起工式が行われた。

その後の会見では、社員数が200人を超えたことも明らかになった。ラピダスの小池社長は「60人を超えるエンジニアが米・オールバニ(の研究拠点)で働いている」と話した。

さらに、アメリカの半導体製造装置メーカー「ラムリサーチ」とベルギーの半導体研究機関「imec(アイメック)」が北海道に拠点を置くことも明らかに。小池社長が掲げる「国際協力」の産業集積が動き始めているようだ。

現場では、2025年4月の試作ライン稼働に向け急ピッチで作業が進む。作業員はピーク時には6000人に及ぶという。

【建設現場は 対応迫られる北海道企業】

建設機械レンタル大手のカナモト。

国を挙げてのプロジェクトに期待は大きいようだ。渡部取締役は「ラピダスができることによって周りに半導体関連のサプライヤーの進出があるはずなので、そちらにも大いに期待したい」と話す。

今後、大量の建設機械が必要になってくるが、そうした需要には全国に550ある拠点から機械を取り寄せたり、購入計画を前倒したりすることで対応する考えだ。

カナモトは東日本大震災の復旧工事や他の大型プロジェクトの実績もあり、ラピダスの工事のニーズにも応えられると自信を見せる。

一方で札幌の建設会社からは「ラピダスの工事に人手や資材が取られ、他の現場で不足する可能性はある」という声も聞かれる。北海道の建設各社も対応を迫られることになりそうだ。

【不動産は「バブル期のよう」!?】

また、土地の価格にも影響が出ている。今月公表された基準地価では、住宅地の上昇率で全国の1~3位、商業地の上昇率で全国の2~4位に千歳が入った。

千歳の不動産業「平和恒産」に話を聞いた。まず案内してもらったのは、駅周辺の末広地区にあるマンション。

このエリアの場合、家賃の相場は1LDKで5万円台後半から6万円台程度だったが、ラピダスの進出が決まってからは1万円ほど値上がりしたという。建設中のこちらのマンションもラピダスの進出決定を受け、当初の予定よりも家賃を上げることになったという。鈴木社長は「駅周辺は元々人気が高く、もう空きがない」と話す。

こうした不足感から、需要があるエリアは中心部以外にも広がっている。駅から1キロほど離れた北栄地区。マンション建設予定の土地に案内してもらった。

この周辺の土地の価格はラピダスの進出決定で2倍近くまで跳ね上がった。既存の住宅や施設を取り壊してマンションにする動きも出てきているという。

また、住宅だけでなく企業からの需要も高まっている。新千歳空港から車で7分ほどの千歳流通業務団地。地図を見ると半分くらい空いているように見えるが、ラピダスが進出を決めてから商談が相次ぎ、現在は空きがない状況だという。市によると、現在進出を検討している企業は半導体関連とかかわりの深い物流関係が多く、工業団地の拡張・新設を計画しているという。

市内にオフィスを構えたいという問い合わせも増えているが、駅周辺はやはり土地が足りておらず、その需要に応えきれていないのが現状のようだ。

平和恒産の鈴木社長は「土地の価格の上がり方はバブル期のようだ」と話す。ただ、インターナショナルスクールなどの教育環境を充実させるなど、まちづくりの面で課題も残る。周辺市町村に住みたいと考える人も出てくる可能性がある。

【直接の取り引き狙う地元企業も】

続いて訪れたのは、千歳にある「FJコンポジット」。千歳には半導体関連の企業が6つほどあり、その一つだ。

コンポジットは「複合」という意味で、複数の材料を合わせた新素材で価値の高い製品を造ることに特化している。半導体分野では、半導体と直接接合し熱を逃がす、放熱材を製造し、世界で特許も取得している。

工場を見せてもらうと、ほとんどの工程が自動化されている。指先に乗るほどの小さな完成品を、ロボットたちが次々と生み出していく。現在は海外の電気自動車などで使われていて、1億個の注文を受けているのだという。

改めてラピダス進出への期待を聞くと、津島社長は「ベンチャー企業として、世界で唯一の技術を目指している。世界最先端のものづくりを目指すラピダスの力になれると思う」と話す。

MCの杉村太蔵さんが「実現すればどれくらいの金額感になるのか」と問うと、「現時点では何とも言えないが、仮にラピダスの売り上げが1兆円とすると、1%未満でも億以上の単位になる。そうなればいい」と話す。

ラピダスへの期待感はさまざまな業界へ広がっている。今後の動きにも注目していきたい。
(2023年9月23日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

© テレビ北海道