連載コラム【MLBマニアへの道】第2回:両リーグサイ・ヤング賞争いの行方 最有力候補はこの2人

写真:ア・リーグサイ・ヤング賞最有力のコール

MLBのレギュラーシーズンも各チーム残すところ9試合程度とラストスパートに突入。すでに地区優勝が決まっている地区も出てきているが、優勝争いが最後までもつれそうな地区や激しいワイルドカード争いもあり、まだまだ目が離せない。

一方で、個人成績も野球の醍醐味の一つ。この時期気になるのはタイトルや賞レースの行方だ。特にサイ・ヤング賞争いは、ほとんどの先発投手があと1試合の登板を残すところとなってきており、本格的に候補が固まりつつある。

今季は例年に比べ、突出した成績を残す先発投手がいなかった。終盤まで多くの投手にチャンスがある展開が続いていたが、ここにきてついに抜け出す投手が出てきた。

ア・リーグの本命はゲリット・コール(ヤンキース)だ。9月21日(日本時間22日)、本拠地でのブルージェイズ戦に登板したコールは、8回1失点の好投で14勝目を手にした。防御率(2.75)、投球回数(200)、WHIP(1.02)、クオリティ・スタート数(23)の4項目でリーグ1位に君臨しており、勝利数(14)でもリーグ2位、奪三振数(217)はリーグ3位につけているため、特に減点ポイントになりそうなところも見当たらない。開幕から一度も登板をスキップすることなく、5回もたずに降板したのも2試合だけとタフネスぶりも高評価だ。

防御率でコールを追うソニー・グレイ(ツインズ)、奪三振のタイトル獲得が有力なケビン・ゴーズマン(ブルージェイズ)、ほとんどの数字でコールに劣るもののバランスよく好成績のルイス・カスティーヨ(マリナーズ)など有力な投手は他にもいる。しかし、最終戦で余程の炎上をしない限りはコールの初受賞は確実視していいだろう。

ナ・リーグの方はブレイク・スネル(パドレス)が本命だ。しかし、スネルはコールと違ってあらゆる項目が高水準というわけではない。防御率(2.33)と被打率(.181)でリーグ1位、奪三振(227)はリーグ2位につけているが、リーグ最多の97四球を出してしまっている。被打率は低いのに四球が多いせいでWHIP(1.20)はリーグ10位だ。

スネルの評価は難しい。19日には7回を無安打に抑える素晴らしい投球をみせた一方で4四球を出している。乱調というわけではなく、四球を恐れないいつも通りの投球なのだ。次回登板では今季100四球に到達する可能性も高い。シーズン100四球となれば2012年のリッキー・ロメロ、エディンソン・ボルケス以来11年ぶりの不名誉な記録となる。球数が多いため投球回数が多くないのも減点ポイントになりそうだ。

しかし、それでも対抗馬がスネルを脅かすのは難しそうだ。最近までスネルと双璧だったジャスティン・スティール(カブス)は防御率のタイトルの可能性があったが直近2試合で9回12失点と大きく失速。それに伴い防御率2位に浮上した千賀滉大(メッツ)も、スネルと似た四球も三振も多いタイプだ。投球回数ならローガン・ウェブ(ジャイアンツ)、奪三振ならスペンサー・ストライダー(ブレーブス)が頭一つ抜けた存在だが、サイ・ヤング賞で重視される傾向にある防御率ではスネルと大きな差がある。

まだシーズンは終わったわけではない。最有力候補のコールとスネルが残りの登板でダメ押しの好投をするのか、はたまた他の投手にもチャンスが出てくるのか、最後まで楽しみにしたい。

文=Felix

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