広島県警の警察官で、半年間現場を離れ技術を磨くことに専念する「特別訓練員」と呼ばれる人たちがいます。その1人で、10月の白バイの運転技術を競う全国大会を前に県大会に挑んだ、28歳の隊員に密着しました。
県警交通機動隊の白バイ隊員。その中で「特別訓練員」はわずか4人しかいない警察官です。そのうち2人が10月、運転技術を競う全国大会に出場します。
その1人、吉本和矢巡査長・28歳です。
■吉本和矢 巡査長
「選手に選ばれることは非常に嬉しいが広島県の代表として自覚を持って臨んでいきたい」
吉本巡査長が所属する県警交通機動隊。42人の隊員は日々、交通指導や取り締まりにあたります。「特別訓練員」に選ばれると半年間は訓練のみに専念します。
■特別訓練員
「お願いします」
全国大会は10月。それを前に、県大会が迫っていた吉本巡査長。白バイ隊員を目指したのは大学1年の時でした。
■吉本和矢 巡査長
「天皇皇后両陛下が乗っていた車を先導していた白バイ隊員かっこいいなと思って白バイ隊員を目指して頑張ってきた」
念願の交通機動隊、そして「特別訓練員」に選ばれ、半年間は訓練のみに専念。これは災害現場を想定した「トライアル競技」です。転倒したり、少しでも足が地面に着くと減点です。
■上森史雄 監督
「遅い、上げ始めが遅い。まだ手前」
指導する上森監督です。上森監督もかつては「特別訓練員」として全国大会で4位に輝いた実績をもちます。監督もこのトライアル競技は難易度が高いと言います。
■上森史雄 監督
「トライアルというのはミリ単位でクラッチワーク、ブレーキワークをしないといけないので指を一本しか使えないというのが最初は苦労する。」
食事も訓練の一つです。
■特別訓練員
「いただきます」
同僚の杉田巡査長の昼食は、なんと、ご飯の上にお餅!
■杉田優真 巡査長
「餅茶漬けです」
■上森史雄 監督
「広島のソウルフードです」
■杉田優真 巡査長
「これ美味しいです」
■上森史雄 監督
「ほんまになん」
体力をつけることも求められます。そして、仲間と支え合いながら訓練と向き合う日々です。
■吉本和矢 巡査長
「こんにちは。狭いところなんですけど入ってください」
吉本巡査長は、同じ警察官の妻・佑香さんと2人暮らし。
出会いは22歳のとき、警察学校の同期でした。
結婚したのは、2年前です。
■吉本和矢 巡査長
「妻が全部やってくれてます。甘えています」
■吉本佑香 さん
「育てないといけないですね」
■吉本和矢 巡査長
「育ててもらってます」
県大会は、3日後に迫っていました。
■吉本和矢 巡査長
「緊張した状態で走るのが今必要な練習かなと思う」
■吉本佑香 さん
「見たことないので大会の様子とか楽しみ」
9月15日…。
大会の日を迎えました。
■吉本和矢 巡査長
「中々こんなに(隊員が)集まることがないので自分もあたふたする部分はある。 落ち着いて本番に挑もうと思う」
白バイの種目には、特別訓練員のOBや県内の26の警察署などから集まった30人が出場。4人1チームによる団体戦で、個人の合計点で競います。
競技はさまざま。「一本橋走行」は、細い台の上をゆっくりと走り、台の上に乗っていた時間を競います。
そして「スラローム走行」。現場での人や障害物を想定しパイロンにあたらないようタイムを競います。
いよいよ、吉本巡査長の出番。競技は1度きりの一発勝負です。
■上森史雄 監督
「よーいスタート」
■吉本和矢 巡査長
「いきます」
勢いに乗ってスタート。重さ約350キロの車体を自在に操ります。
急なカーブもスムーズに走り抜け、ゴールしました。しかし…。
■吉本和矢 巡査長
「全力を出し切ることが出来ました。満足のいく走りは出来なかった」
結果を確認します。
■吉本和矢 巡査長
「ミスあったんですか」
■先輩
「どれだけ一発とはいえどう気をつけてもみすはある。そこにいってしまったらしょうがない」
走行中、わずかに障害物に接触していたのです。大きく減点されます。
■瀨良芳紀 交通部長
「団体第一位本隊Bチーム」
優勝は、吉本巡査長の所属する交通機動隊の別のチームでした。
悔しさを隠しきれません。
■吉本和矢 巡査長
「悔しい気持ち、苦しい結果に終わってしまったのできょうの反省点を活かして大会では絶対にミスしない走りをしっかりきょう改善して頑張っていこうかなと思う」
優勝はできなかったものの、気持ちは10月の全国大会へ向かっていました。運転技術を高めることで、交通安全につなげたい。この思いを胸に、28歳の白バイ隊員は、きょうも訓練に励みます。
【2023年9月22日】