片岡愛之助さん座頭、永楽館歌舞伎4年ぶり開幕 満員の芝居小屋に響く「待ってました!」 兵庫・豊岡

4年ぶりの公演で満席となった客席=永楽館歌舞伎

 4年ぶりとなる「第13回永楽館歌舞伎」が22日、兵庫県豊岡市出石町柳の出石永楽館で開幕した。歌舞伎役者の片岡愛之助さんが座頭を務め、小規模な芝居小屋ならではの舞台と客席の近さとともに、迫力ある演技で満員の観客を魅了した。(丸山桃奈)

 新型コロナウイルス禍で2019年を最後に中止が続いていた。1公演3演目で、愛之助さんのほか、市川男寅(おとら)さん、中村莟玉(かんぎょく)さん、市川九團次(くだんじ)さん、市川男女蔵(おめぞう)さんらが出演する。

 三つ子の兄弟の争いを描く物語「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ) 車引」は、永楽館歌舞伎で14年ぶりの上演。赤系統の衣装で登場した三つ子のうち梅王丸を演じる愛之助さんがかぶり物を外し、顔を披露すると、俳優の屋号などを呼びかける「大向こう」が「待ってました!」と盛り上げた。

 続く「お目見得 口上」では5人があいさつ。愛之助さんは、雨が降る中で初日を迎えたことについて、「雨が降ると、歌舞伎の世界ではお客さんが降り込むと言われ、縁起がいい。幸先のいいスタートが切れた」と話した。

 一方、中村莟玉さんは「初の芝居小屋での出演。この近い距離感を一度は体験したかったので、出石永楽館でかない、うれしい」と述べた。

 「釣女」ではユーモアあふれた場面や、アドリブを交えたやりとりで、観客の笑いを誘った。終演後には再び愛之助さんが登場するなど最後まで会場を盛り上げていた。

 丹波市から夫婦で訪れた男性(74)は「前回の公演を思い出しながら見ていた。4年ぶりでワクワクした」と目を細めた。

 チケットは既に完売している。

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