1周年

 「いっしょう食べ物に困らないように」と願いを込めて背負わせるのは「一升餅」。筆やそろばんなどの道具を幾つか並べて選ばせ、将来を占うのは「選び取り」。ホールのケーキを思う存分ぐちゃぐちゃに壊しながら食べてもらう米国流のお祝いも最近は人気らしい▲もう1歳だね、早いねえ…。赤ちゃんの成長とよく似た感想をお持ちの方もおられるかもしれない。長崎-武雄温泉を結ぶ西九州新幹線はきょうで開業から1周年▲劇的な変化は感じられないし、期待していなかった-そんな声もあるだろう。しかし、沿線には新たなにぎわいも生まれつつある。新幹線による通勤圏の広がりは、そのまま県民のライフスタイルの選択肢の広がりでもある▲実際に新幹線が走り始めることで、武雄温泉駅から先の整備方式を巡る議論も新局面を迎えるはずだ、と実はひそかに期待していた。例えば「やっぱりこれは厳しいね」という実感とともに▲現実には、乗り換えの列車が向かいのホームで待ち構えている運行の正確性がとってもアメイジングね、と外国人旅行者を感動させているらしい。それはそれで誇らしいが、やはり本筋の議論の進展も待ちたい▲中面の広告で「かもめ」が“同級生”の笑顔に囲まれている。この先に待っているのはどんな未来だろう。(智)

© 株式会社長崎新聞社