犬のおしっこがオレンジや赤色に…原因は?考えられる4つの病気と予防する対策とは?

犬のおしっこがオレンジや赤色になるのは病気のサイン

犬のおしっこの色は、体調や病気などの影響で変化します。健康な犬のおしっこの色は通常、淡い黄色です。長時間おしっこをしていない場合や水分不足の場合は、おしっこが濃縮されて濃い黄色になることがあります。

おしっこの色がオレンジや赤に見えるときは、血尿である可能性があります。血尿は腎臓、尿管、膀胱、尿道などの泌尿器からの出血を示し、オレンジや赤色だけでなく、ピンクや赤褐色に見えることもあります。そのため、血尿は泌尿器に関連する病気のサインとして捉えるべきです。

ただし、避妊手術をしていないメスの発情期に、外陰部からの血液がおしっこと混ざることがありますが、これは特に心配はいりません。

考えられる病気とその予防策は?

犬のおしっこがオレンジや赤色の場合、泌尿器系の病気のサインである可能性があります。さて、それは具体的にどのような病気なのでしょうか?

以下では、犬のおしっこの色がオレンジや赤色になった場合に考えられる病気と、その予防策についてそれぞれご紹介します。

1.膀胱炎

膀胱炎は膀胱が炎症を起こす病気で、特にメス犬に多く見られます。典型的な症状は、血尿、頻尿、排尿痛です。

主な原因として細菌感染が挙げられますが、尿路結石症や膀胱腫瘍が膀胱炎を引き起こすこともあります。細菌感染による膀胱炎の場合、原因となっている細菌に対して効果の高い抗生物質を投与して治療します。

おしっこが膀胱に長くとどまると細菌が繁殖しやすく、膀胱炎のリスクが高くなるため、適度に水分を摂取させ、排尿を促すことが膀胱炎の予防策になります。

散歩の時に排泄する習慣がついている場合は、散歩に行く時間がずれたり天候の関係で散歩に行かないなどを繰り返すと膀胱炎になってしまうこともあります。また、犬はトイレが汚れているとおしっこを我慢してしまうことがあるため、トイレを清潔に保つことも大切です。

2.尿路結石症

尿路結石症は尿石症とも呼ばれ、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかに結石ができる病気です。

結石は、尿中のリンやカルシウム、マグネシウムなどのミネラル分が結晶化することで形成され、犬で特に多く見られるのは、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石です。

犬の尿路結石症の原因は多岐にわたり、ミネラル分を多く含む食事、体質、代謝異常、ストレス、細菌性膀胱炎、飲水量不足などが挙げられます。

尿路結石症の主な症状は、血尿、頻尿、排尿困難です。排尿困難になると、排尿の姿勢をしてもおしっこがなかなか出なかったり、全く出なかったりします。

結石が尿路を塞いでいるためにそうなっている可能性が高く、放置すると命に関わるため、排尿困難の症状が見られたら早急に動物病院へ行くことが重要です。

治療法は結石の種類や大きさなどによって異なりますが、療法食で結石を溶かしたり、手術によって結石を取り除いたりします。

尿中のミネラル濃度が高いと結石ができやすくなるため、尿路結石症を予防するにはミネラル分の多い食事は避け、飲水量不足に注意し、排尿を我慢させないことが大切です。

3.膀胱腫瘍

膀胱腫瘍は、膀胱に発生する悪性または良性の腫瘍を指します。犬の膀胱腫瘍の多く(70〜80%以上)は、移行上皮癌という悪性の腫瘍です。

スコティッシュテリアやビーグル、シェットランドシープドッグなどが好発犬種で、特にメスの高齢犬に多く見られる傾向があります。

犬が膀胱腫瘍を発症する原因は明確にはなっていませんが、慢性的な膀胱炎などが関連していると考えられています。

膀胱腫瘍の症状は血尿、頻尿、排尿困難などです。治療は腫瘍の大きさや位置、進行状況に応じて、外科手術による腫瘍摘出、放射線治療、化学療法などが選択されます。

膀胱腫瘍にはこれといった予防策はありませんが、早期発見と早期治療が重要です。日頃から尿の色や量、排尿回数、排尿時の様子などを観察して、何か異変を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。また、定期的な健康診断も早期発見に役立ちます。

4.前立腺炎(オス)

前立腺炎は、前立腺が炎症を起こす病気です。オス特有の病気で、特に去勢手術をしてない中高齢犬に多く見られます。

前立腺炎が起こる原因ははっきりわかっていませんが、前立腺周囲の血流障害や前立腺内への尿の逆流や細菌感染などが原因と言われています。前立腺に肥大や疾患があると細菌が繁殖しやすく、前立腺炎を併発しやすい傾向があります。

前立腺炎の主な症状は血尿、頻尿、排尿痛、元気消失、発熱などです。治療法は、適切な抗生物質を投与します。症状が落ち着いたら、再発防止のために去勢手術を行うこともあります。

前立腺炎の予防策は、若く健康なうちに去勢手術を受けることが最も有効です。

ビリルビン尿やヘモグロビン尿の可能性も

犬のおしっこの色がオレンジや赤色になっても、必ずしも血尿を意味するわけではありません。ビリルビン尿やヘモグロビン尿の可能性も考えられます。以下では、ビリルビン尿とヘモグロビン尿について詳しく解説します。

1.ビリルビン尿

尿中にビリルビンという成分が存在している状態を、ビリルビン尿と言います。ビリルビンは、古くなった赤血球が破壊された際にできる成分で、通常は肝臓で処理された後、胆汁の成分として腸に送り出され、ウンチと一緒に排出されます。

しかし、肝臓の働きの低下などによって血液中のビリルビン量が増加すると、尿中にビリルビンが混ざります。これがビリルビン尿です。ビリルビンは黄色い色素のため、ビリルビン尿は濃い黄色や濃い茶色、オレンジ色に見えます。

ビリルビン尿が見られる場合、肝臓や胆道系の疾患、溶血性疾患などが疑われるため、獣医師の診断が必要になります。

2.ヘモグロビン尿

犬のおしっこの色が赤いとすぐに血尿と考えがちですが、そうとは限りません。ヘモグロビン尿であることもあります。ヘモグロビン尿は血色素尿とも呼ばれ、犬の尿中にヘモグロビンが存在する状態を指します。

ヘモグロビンは赤血球中に存在するタンパク質ですが、何らかの原因で赤血球が大量に破壊されると、赤血球中のヘモグロビンの赤い色素が尿に混ざり、ヘモグロビン尿となるのです。ヘモグロビン尿は赤色だけでなく、ピンクや褐色に見えることもあります。

犬のヘモグロビン尿が出たときに考えられる病気は、急性の犬糸状虫症や免疫介在性溶血性貧血などです。また、犬がネギ類を食べるとタマネギ中毒を起こすことがありますが、これもヘモグロビン尿の原因となります。

犬が赤いおしっこをした際に、飼い主が血尿かヘモグロビン尿か判断するのは難しいです。どちらも重篤な状態に陥る可能性があるため、赤いおしっこを確認したら、早急に動物病院を受診しましょう。

まとめ

犬のおしっこがオレンジや赤色の場合、血尿だけでなくビリルビン尿やヘモグロビン尿の可能性も考えられ、これらは全て病気のサインと捉えるべきです。

病気のサインを見逃さないために、日頃から愛犬の尿の色や排尿時の様子などをよく観察するのは大切なことです。もし尿の色などに変化が見られた場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。

(獣医師監修:平松育子)

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