【独自】医師らに最大月190時間の違法残業させる 兵庫県立4病院 労基署が是正勧告

医師の残業を巡り、西宮労基署から2回の是正勧告を受けた県立西宮病院=西宮市六湛寺町

 救命救急や地域医療の中核を担っている兵庫県立の4病院が、労使協定に基づく上限を超える違法な時間外労働(残業)を医師にさせたとして、労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが24日、神戸新聞社の情報公開請求で分かった。勧告対象となった期間中に、月100時間の「過労死ライン」の2倍近い月190時間の残業をしていた医師もいた。

 先月中旬には甲南医療センター(神戸市東灘区)の専攻医が過労自殺していたことが発覚。医師の「働き方改革」で、来年4月から残業の上限規制が始まるのを控え、公立・民間を問わず病院の労働環境の改善が求められそうだ。

 情報公開請求は県立13病院1診療所(指定管理者が運営する3病院を含む)を対象に、2018年度以降について行った。

 勧告を受けていたのは、尼崎総合医療センターと西宮病院、加古川医療センター、淡路医療センター。19年11月~今年6月に延べ5回の勧告があり、一部の病院では割増賃金の未払いも認定された。

 県病院局によると、労使協定は病院ごとに結ばれ、時間外労働を命じることができる上限も病院によって異なっている。

 西宮病院は19年11月と今年6月の2回にわたって勧告を受けた。同病院はこれとは別に21年7月にも、医師や看護師らに法律で定められた休憩時間を与えず、連続で長時間勤務をさせていたとして是正勧告を受けた。

 県災害医療センター(神戸市)も上限を超える時間外労働があったとして是正勧告を受けた。対象者は医師とみられるが、指定管理者の日本赤十字社県支部は「精査後に回答する」としている。

 また複数の県立病院が、実際に医師が出退勤した時間と、賃金を算出するための記録上の労働時間が大きく食い違っており、労基署から「実際の労働時間を適正に把握できていない」と指摘を受けていた。

 県病院局は「勧告を真摯に受け止めている。医療サービスを低下させることなく、長時間労働の解消に取り組んでいく」とする。一方で、残業時間の食い違いについて「上司の指示なく行う自己研さんは業務に含まないため、職場にいる時間の全てが労働時間とはみなせない」と説明した。 (山岸洋介)

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