観光都市(?)奈良のこれからを考える ④~豊富な観光資源・世界遺産の有効活用~

奈良観光の話題、第4回目は、来県者の観光目的の一つであると思われる「奈良の世界遺産」について触れてみたいと思います。

さて、皆さんは、日本全体でいくつの「世界遺産」が登録されているかご存じでしょうか?

2023年1月現在、世界遺産は1,157件が登録されています。その内訳は文化遺産900件、自然遺産218件、複合遺産39件です。そして、日本には文化遺産20件、自然遺産5件の計25件が世界遺産として登録されています。

奈良県内の世界遺産は、京都よりも多い!

その中で、奈良県が関係しているものが3つあります。いつものことながら、お隣の京都と比べてみると、京都は、たった1つ。奈良は、京都よりも多いということになります。

では、その3つとはどこになるのでしょうか?登録年順に見ていきたいと思います。

斑鳩・法隆寺

1つ目は、1993年に兵庫県「姫路城」、鹿児島県「屋久島」、青森・秋田両県に跨る「白神山地」とともに日本で最初に登録された、奈良県斑鳩町に位置する法隆寺を中心とした「法隆寺地域の仏教建造物群」です。この世界遺産の中心を成す法隆寺は、言わずと知れた聖徳太子が建立されたお寺。そして、世界で一番古い木造建築物とされています。五重塔や夢殿などで知られています。また、五重塔の「心柱」の免震技術は、時代を超えて「東京スカイツリー」の免震技術に応用されていることは有名なお話です。

空から見る「斑鳩・法隆寺」全景## 古都奈良の文化財

2つ目は、1998年に登録された、奈良市内の社寺仏閣を中心に構成された「古都奈良の文化財」です。これは奈良公園周辺の4つの社寺に、春日山原始林、平城宮跡、薬師寺、唐招提寺を加えた8つの構成資産から成ります。特に奈良公園は、街と人と野生の鹿が共生する「世界でここにしかない奇跡の場所」と呼ばれています。ご存じでしょうか?

東大寺大仏殿、鹿が闊歩する鏡池## 紀伊山地の霊場と参詣道

3つ目は、2004年に登録された、和歌山・奈良・三重の三県に跨る「紀伊山地の霊場と参詣道」です。エリアが広範囲に渡りますが、山岳信仰に基づく「吉野・大峰」「熊野三山」「高野山」の3つの霊場を中心と成す世界遺産です。熊野古道や那智大社、高野山金剛峯寺、吉野山金峯山寺などは言わずと知れた有名どころではないでしょうか。

熊野古道「紀伊山地の霊場と参詣道」## 4つ目が登録されると・・・

吉野山・金峯山寺蔵王堂「蔵王大権現」

以上の3つに加え、2026年に藤原宮跡や石舞台古墳、キトラ古墳などを含む、「飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群」が4つ目として登録される予定となっています。これが登録されますと、同じく登録件数が3つの岩手県、鹿児島県を上回り、都道府県別では最多の登録件数となります。

しかし、「世界遺産」という制度は、第1号が登録されたのが1978年という比較的新しい制度です。そもそもこれらの世界遺産と呼ばれるものは、他所と同様、以前から存在していたものであるということを是非ご理解いただきたいと思います。

「真」の観光地になれるチャンス!

そんな中、つい先日、「古都奈良の文化財」が世界遺産登録25周年を迎えるにあたり、来春までの半年間、その魅力を国内外に発信する記念事業を開催する旨のプレス発表が都内でありました。確かに個の情報発信も重要ですが、奈良県ではせっかく3つの世界遺産が登録されているのですから、自治体の枠を超えて、広く民間からも提案を募り、コラボ企画を立ち上げるなどの仕掛けを作る必要があると思います。

また、2026年に「飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群」が世界遺産に登録されれば、奈良県の北から南にかけて、世界遺産ロードがつながることにもなります。それ故、この機会に、自治体・観光施設・交通機関が同じ方向を向き、奈良県全体を活性化することで、観光地(?)から「真」の観光地になれるチャンスになるのではと考えます。

空から見る世界遺産候補「藤原京跡」

(つづく)

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 志茂敦史(しも・あつし) 奈良交通㈱ 東京支社長

© 株式会社ツーリンクス