健康管理システムのソフトウェアはどう選ぶ?品質の見極め方とは?ポイントは8つの品質特性

健康経営の取り組みが広がり、健康管理システムを導入する企業も増えています。なかにはこれから導入するという企業もまだ多いのではないでしょうか?

ソフトウェアを導入しようとインターネットで検索してみると、類似の機能が搭載された商品がたくさん出てきます。一体どれが本当に良いものかわからないことも多いですよね。選択の基準として、製品の品質を重視することも考えられるでしょう。

そこで今回は、健康管理システムのようなソフトウェアの品質評価方法をわかりやすく解説します。

ソフトウェアの品質モデル

私たちが日常的に使用する家電や自動車と同様、ソフトウェアにも品質を評価するための基準「ソフトウェアの品質モデル」がISO/IEC 25010:2011(JIS X 25010:2013)で定められています。

「ソフトウェアの品質モデル」は、ソフトウェアの品質構造をモデル化し、その構成要素となる品質を「製品品質モデル」と「利用時の品質モデル」として定義したものです。「製品品質モデル」はソフトウェアを含むシステムに焦点を当てており、「利用時の品質モデル」は利用者の体験に焦点を当てています。

利用者の体験も製品導入時の判断には重要ですが、事業で使用するソフトウェア選定時には、製品開発体制に関する点やセキュリティなども重要な点となるため、今回はソフトウェア選定の際に注目するポイントとして、製品品質モデルで定義される品質特性を見ていきます。

なお日本では、ソフトウェアの品質評価を第三者的に検証する認証制度「PSQ認証」が存在しますが、PSQ認証は2022年で100件発行された段階であり、PSQ認証を保有していない製品を選ぶ機会も多いと考えられます。
また、ソフトウェアを導入するに当たっては、製品品質について理解し、自社の状況に合うか判断できることが重要です。

製品品質モデルの8つの品質特性

製品品質モデルでは、ソフトウェア品質特性は機能適合性、性能効率性、互換性、使用性、信頼性、セキュリティ、保守性、移植性の8つの特性として分類され、特性ごとに詳細を示した品質副特性が存在します。以下では、8つの特性についてそれぞれ見ていきます。

機能適合性

機能適合性はソフトウェアが提供する機能が、ニーズを満たす度合いに関する品質特性です。自社の業務で使用するにあたり、ソフトウェアが自社の要件に合うか、期待通りの仕事を適切に正しくこなせるかどうか判断する必要があります。

機能適合性には、機能完全性、機能正確性、機能適切性の副特性があり、必要な機能が揃っているかという点だけでなく、機能が正確に動作しているか、提供された機能が自身の目的に対して適切であるかということも含めて考えることが重要です。確認するには、デモやトライアルで実際に操作してみる、カスタマーレビューから他のユーザーが満足しているか確認するといった方法が効果的です。

性能効率性

性能効率性はソフトウェアがCPUやメモリなど、コンピューター資源をできる限り必要とせずに動作する能力に関する品質特性です。性能効率性に問題がある場合は、他のユーザーの操作でコンピューター資源を多く使用されてしまい、動作が遅延するといった問題が起こりえます。

性能効率性には時間効率性、資源効率性、容量満足性の副特性があり、時間の効率性は処理速度に関わり、資源効率性は製品のコストに関係しています。これらは製品の使用時の満足度を左右し、ソフトウェア選定の際に重要なポイントとなります。

確認するには、トライアルが可能であれば、想定している動作を実際に行ってパフォーマンスを確認する、トライアルがない場合、レスポンスタイムなどのベンチマークとなるデータが提供されているかを確認することが効果的です。

互換性

互換性はソフトウェアが他のソフトウェアやシステムと効果的に共存または連携できる能力に関する品質特性です。互換性が高いソフトウェアは、容易なデータの移行や他のソフトウェアと連携しての動作など、自社のシステム環境の中で効果を発揮しやすくなります。

互換性には、共存性、相互運用性の副特性があり、ソフトウェア選定の際には、既存のセキュリティソフトやその他のソフトウェアと問題なく共存できるか、既存のシステムで生成されたデータを新しいシステムで効率よく利用できるかといった点も考慮が必要です。

確認するには、デモやトライアルで実際に操作してみる、ドキュメントやFAQから情報を確認、提供会社に直接確認することが効果的です。

使用性

使用性はユーザーがソフトウェアを効果的、効率的、そして満足度を持って使用できる能力に関する品質特性です。これは、ソフトウェアがユーザーフレンドリーであるかを意味します。システムが優れた機能を持っていても、操作が複雑で使用が困難ではその価値は低下してしまいます。

使用性には、適切度認識性、習得性、運用操作性、ユーザーエラー防止性、ユーザーインターフェース快美性、アクセシビリティの副特性があり、システム自体の理解のしやすさ、短い時間で習熟でるかという点に加え、マニュアルの整備やサポートの充実など、ソフトウェアの使用を支援する環境についても、アプリケーション選定の際には、考慮する必要があります。

また、ミスを防止する機能(確認ダイアログ、エラー表示とその分かりやすさなど)の存在を確認することも、快適に使用する上で重要です。確認するには、デモやトライアルで実際に操作してみる、サポート体制やサポート資料を確認することが効果的です。

信頼性

信頼性はソフトウェアが障害などを起こさず、安定して動作する能力に関する品質特性です。必要な時にシステムが使用できなければ困るので、安定した稼働が求められます。

信頼性には、成熟性、可用性、障害許容性、回復性の副特性があり、止まらずに安定して稼動するということだけでなく、いざ障害が起きた時に速やかに復旧できるかといった点も含まれます。必要な時にソフトウェアを安定して使用するために重要です。

確認するには、SLA(Service Level Agreement)で、どれくらいの月間稼働率が保証されているか、過去の障害履歴の確認が効果的です。

セキュリティ

セキュリティはソフトウェアの不正利用から保護する能力に関する品質特性です。自社の情報セキュリティ上、製品が問題ないか導入時には確認する必要があります。

セキュリティには、機密性、インテグリティ、否認防止性、責任追跡性、真正性の副特性があり、システムが外部の不正な利用から守れるかといった点だけでなく、内部でも権限を持っていない人が情報にアクセスできない、操作を否認できないように履歴などの機能が提供されているかといった点の確認も必要です。

確認するには、製品を提供する企業に対してのセキュリティに関する質問リストへの回答の依頼や、仕様書の確認、デモやトライアルで実際に動作を確認する、認証資格(ISMS,CSP)の確認が効果的です。

保守性

保守性はソフトウェアの修正の容易性に関する品質特性です。保守性に問題があるソフトウェアでは、バグの修正がなかなかされず、問題の長期化、機能の改善が遅れたりなどの問題が起こりえます。

保守性には、モジュール性、再利用性、解析性、修正性、試験性の副特性があり、法律の改正やビジネスの要件が変わった際に、迅速に対応されるか、 またアップデート時に不具合が生じないかといった点に関係します。

確認するには、過去のアップデート履歴や、新機能のリリース頻度の確認、サポート部門がシステムの仕様を正しく把握できているかといった点の確認が効果的です。

移植性

移植性はソフトウェアの異なる環境への移植のしやすさに関する品質特性です。移植性が高いソフトウェアは、新しいデバイスやOSに対応しやすく、そのため長期間にわたって利用を継続できる可能性が高くなります。

適応性、設置の容易性、置換性の副特性があり、デバイスが今後進化を続けても、システムが柔軟に対応できるだけでなく、製品の置き換えが簡単にできるため、特定の製品に依存するリスクが軽減されます。確認するには、動作するデバイスやOSの確認、各デバイスやOS上での動作のレビューの確認が効果的です。

品質特性を総合的に評価することが重要

品質特性の中で、ソフトウェアが持っている機能の数や種類、使いやすさ等の機能性や利用性直感的に理解しやすく考慮されやすい特性となります。一方で、それ以外の特性については自身のニーズと直接関連しづらい、または導入前には実感しにくいため、軽視されることが多いです。

しかし、一般的に導入後長期に渡って利用されるソフトウェアで、保守性が低ければ機能の改善が遅れるリスクがあり、信頼性が低いと重要な時にシステムが利用できないリスクが高まるといったように、品質特性が低い部分がある場合、将来的にリスクに直面する可能性があります。

ソフトウェア選定の際には、8つの品質特性全体を総合的に評価することが重要です。

<参考>
一般財団法人日本規格協会「JIS X 25010:2013 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)―システム及びソフトウェア品質モデル
一般社団法人ソフトウェア協会「PSQ認証制度
一般社団法人ソフトウェア協会「ソフトウェアの品質を証明する「PSQ-Lite認証」発行100件を突破

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