民間救急車、山形で始動 県内初・救命士同乗、医療処置も

今月から運用を始めた民間救急車について説明する木村祐人代表理事=山形市

 県内で今月、患者搬送の民間サービス「民間救急車」の運用が始まった。元救急隊員らが一般社団法人「救急JAPAN」(山形市、木村祐人代表理事)を設立し、救急車と同等の設備を持つ車両に救急救命士が乗り、必要に応じて医師らによる医療処置ができる点が特長。本県初の取り組みで、緊急性が低い患者を医療機関などに運び、利用実績も出ている。

 宮城県などでも運用されている。大阪府内では新型コロナウイルス患者を対象に、消防機関や保健所と連携して119番通報で救急車が到着し、緊急性がないと判断した場合、民間救急車に引き継ぐ取り組みが進められてきた。本県では、消防機関との連携はまだだが、救急JAPANは、必要な人に救急医療が届くよう消防機関との連携構築を目指している。

 救急JAPANの民間救急車は1台で、ストレッチャーや自動体外式除細動器(AED)などの機器を備える。救急救命士が同乗して病院の転院や入退院、通院、一時帰宅の要請に応えるほか、搬送中に医師らによる酸素吸入や吸引、人工呼吸器使用などの医療処置にも対応できる。サイレンや赤色灯の使用は認められず、緊急走行はできない。

 木村代表理事(36)は今年3月まで17年間、村山市消防本部に勤務し、救急救命士を務めた。救急JAPANを昨年12月に立ち上げ、自己資金約1千万円で、愛知県で救急車として使われていた車両や装備を用意。運用前に半年ほど、大阪府で現場を経験した。

 コロナ禍や猛暑などを背景に県内では近年、消防の救急搬送件数が増加傾向にある。山形市消防本部の2022年出動件数は過去最多の約1万2千件で、今年は8月の1カ月間だけで1400件を超えている。県消防救急課によると、21年の県内搬送者の約4割は軽症だった。

 木村代表理事は経験を踏まえ、「1分の遅れで救命率は下がる」と話す。民間救急車の運用を通じ「民間だからこそできる役割を担いたい」としている。

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